ビデオゲーム
忍者という職業が存在する現代日本。主人公・葉隠楓は、忍者の名門の娘です。楓はかねての願いがかなって、くの一養成学校に入学します。そこには、楓の想い人、久野月葉が通っているのです――
ゲームとしては、パラメータをいじるタイプの育成ゲームです。この手のゲームが好きでないと、特に繰り返してのプレイは、少々辛いでしょう。
仲良くなれる相手は三人。好感度と能力値を上げて、ベストエンドを目指します。
仲良くなれる相手はもちろん、主要キャラの全員が、女です。
キャラとストーリーはかなり充実しています。シビアな展開も待っているので、ふやけてばかりもいられません。
現在のところ、コンシューマ機のゲームで唯一の、純粋な百合作品です。主人公が女で、男女どちらでも攻略できるという作品はいくつかありますが、攻略対象が女だけなのは『あやかし』のみです。
いわゆる「ギャルゲー」の範疇に属するゲームです。絵こそギャルゲーとしては奇怪ですが、声優は豪華で、丹下桜に井上喜久子に氷上恭子などなど。かなりの量のセリフを、フルボイスでしゃべります。
PS版のほかにも、PC版とSS版があります。問題はSS版です。開発初期のバージョンが間違って発売されたと思しきもので、ゲームとして成立していないようです。SS版に手を出してはいけません。
発売がすでに6年前であり、大ヒットした作品でもないので、これから先、かなり入手しづらくなるでしょう。早めの行動をお勧めします。
総合的な百合力はかなりのものです。飛び抜けたものや個性的なものは見られませんが、必要なものは全部揃っています。基礎から百合を身につけるには、よいお手本です。
とはいえ、安易に真似るべきでない点もあります。
『あやかし』では、恋する二人は、自分たちの恋を世界に存在させるために、葛藤します。「世界は世界で置いといて」という発想は、ここにはありません。
しかし私の見るところ、百合の未来は、「世界は世界で置いといて」の方向にあります。葛藤する二人の魅力は認めますが、よほどの確信がないかぎり、葛藤をお手本にすべきではないでしょう。
翔泳社・素藝屋・ZERO SYSTEM
プレイステーション用 1997年9月25日発売
(2003年6月29日修正)