BL界でもっとも人気のあるシリーズといえば、「炎の蜃気楼」というのが衆目の一致するところだろう。週間ベストセラーリスト入りするBLは掃いて捨てるほどあるが、リスト上位に食いこめるかどうかとなると、「炎の蜃気楼」の強さはきわめて印象的である。リストを調べればわかるのだが、???に勝てるのは、「炎の蜃気楼」だけである。
しかし今回、桑原水菜は、レーティング1220に甘んじた。しかも、一時はレーティング1000を切るところまで行っている。コバルト文庫は強豪ひしめくレーベルなので、頂点をめざすものにはまたとない舞台であるが、わずかな売れ行き不振にも鋭く反応してレーティングを大幅に失う危険も秘めている。
桑原水菜のうえに生じている事態は、比較的わかりやすい。「桑原水菜」の人気と「炎の蜃気楼」の人気が乖離しているのだ。「炎の蜃気楼」の人気が前面に出ているあいだは、レーティングはすさまじい速度で上昇する。しかしいったん「桑原水菜」の人気が問われると、とたんに失速し、並の作家に近いところまで叩き落とされる。
つまるところ、「炎の蜃気楼」は桑原水菜にとって、一大ラッキーヒットだった。レーティング1220という数値は、それを厳しく示している。