2010年01月11日

今日の名言

 『名誉な事柄は最も強いものに譲るべきであるが必要な事柄は最も弱いものに譲るべきだ』
 ――ユリウス・カエサル(プルタルコスの伝記による)

 『又或る時は、途上であらしのために供のものと貧乏な人の小屋に追い込まれ、やっと一人入れるだけの部屋しかないのを見たカエサルは友人たちに、名誉な事柄は最も強いものに譲るべきであるが必要な事柄は最も弱いものに譲るべきだと云って、オッピウスをそこで休ませ、自分は他のものと一緒に入口の軒下で眠った』(プルタルコス『プルターク英雄伝(九)』(岩波文庫)124ページ)
 この伝記には、40過ぎのカエサルがアレクサンドロス大王の伝記を読んで涙したという話(自分が40過ぎてもまだなにひとつ華々しいことをしていないのを嘆いて)が出てくる。同じプルタルコスの伝記ではアレクサンドロス大王は、戦争で得た栄光は素晴らしいけれど王としては名君ではなかった、とされている。するとプルタルコスの見方では、カエサルは栄光にとりつかれた人間だった、となるだろう。
 そういう人間が、まさにそういう人間であるからこそ、こういうことを言った。大王や皇帝の栄光のために万骨が枯れる世界の裏側には、こういう言葉もあったわけだ。
 単なる同情だけにもとづいて、『最も弱いものに譲る』世界を作ることができたとしても、長続きはしないだろう。このことはマルクスも見抜いていたが、社会主義革命もやはり長続きしなかった。人類はまだこの問題を解決できていない。

Posted by hajime at 2010年01月11日 23:51