2012年11月29日

ライフハック:原稿を完成させる方法

 本の原稿を完成させる方法について。
 
1. 締切を作る
 プログラマの世界では古来、「締切のないプログラムは完成しない」と言い伝えられている。
 近い将来、同人誌が基本的に電子書籍になっても、即売会はなくならないだろう。原稿を完成させるには、締切が必要だ。
 
2. 先に金を動かす
 「事件は現場で起きてるんじゃない、銀行口座で起きてるんだよ!」。

 財・サービスが動いたことの対価として金が動く――というのは会計学の世界の話であって、現実の人間行動を捉えていない。現実の人間行動はこうだ――金が動いたことに対する反応として、財・サービスが動く。なぜか? 財・サービスよりも金のほうが、圧倒的に簡単に動かせるからだ。
 だからまず、金を動かさなければならない。金を動かせないのに、財・サービスを動かせるわけがない。
 たとえば、印刷所に印刷代を先払いする。あるいは、出版社に原稿料を前借りする(もしあなたが西村京太郎クラスの大家なら)。あるいは、読者に直接前払いを求める(これなら私クラスでもできる)。もしどれもできない、したくないのだとしたら、おそらく、その原稿はどうやっても完成しない。
 金額の多寡は問題ではない。もし1万円で足りなければ、おそらく1億円でも足りないだろう。人間はそういう風にできている。
 
3. 毎日マイルストーンを設ける
 「作業を1日単位に分割する」と言い換えてもいい。1日で終わらない作業に対しては、人間の脳は麻痺する。原稿を書くという作業は、「とにかく手を動かせばいい」というものではないから、脳が麻痺すると致命的だ。
 つまり毎日、一定量の原稿を書く。文字だけでない原稿については話が難しくなるが、「作業を1日単位に分割する」という原則は変わらない。
 
4. ゴールを設ける
 週刊少年ジャンプのようなまんが連載では、「完結=打ち切り」であり、「終わりが見えない=成功」となっている。これは、当たった場合の利益を最大化するためだろうか。それとも、継続性のあるビジネスがビジネスマンの精神衛生や成果査定にとって魅力的だからだろうか。もし後者だとすると、こういう「ベストプラクティス」は、「巨大で間抜けな競合」の証かもしれない。近い将来、電子書籍によって市場のルールが変わったとき、答えが出るだろう。
 原因はさておき、こういうまんが連載型の、ゴールのないコンテンツが世にありふれている。しかし、原稿を完成させるのが難しいと感じる人にとっては、これはよい選択ではない。
 (原稿を完成させるためのお膳立てを出版社が整えてくれるので自分では悩まないとか、「『完成させる』…そんな言葉は使う必要がねーんだ。なぜならオレやオレたちの仲間は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には! 実際に原稿を完成させちまって、もうすでに終わってるからだッ! だから使った事がねェーッ! 『完成させた』なら、使ってもいいッ!」という人種なら、やってもいいッ!)
 たとえば、ゴールのないコンテンツとして最近、有料メルマガが台頭しているが、「週刊(だったはずの)有料メルマガが一ヶ月間配信されなかった件」という事件が起きている。これがまんが連載なら、「あの作家は週刊連載に耐えられなかった」で済む話だが、有料メルマガでは払い戻しに発展する。それほどの重大事にもかかわらず、これほどの頻度で、こうなってしまっているわけだ。
 ビジネス風に言うならば、PDCAサイクルの区切りとして、ゴールは必要だ。ゴールがなければ、方向感覚を失う。方向感覚を失えば、モチベーションも失う。
 
 以上のライフハックにもとづき、私はすでに2つの電子書籍を完成させている。
・日刊連載なので毎日が締切&マイルストーン
・有料アプリに配信なので読者が先払い
・作品単位で完結
 完成はいいが質はどうなのか、というかた、紅茶ボタン完全人型をお確かめください。

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Posted by hajime at 2012年11月29日 17:29
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