小説 香山暁子
世界大恐慌が始まる前、東北のとある村でのこと。
操は生まれながらの女たらしです。四年前、東京からやってきました。村人にとっては正体不明の人物で、友達は千恵ひとりです。
ある日、操の身辺が動きはじめ、千恵は操の正体を知ります。操を追って東京にやってきた千恵は―――
一九九五年上期のコバルト・ノベル大賞受賞作です。
香山暁子は、百合はこの一作しか発表していません。
一九九六年発行とやや古く、香山暁子はすでにコバルトを去っているので、入手はかなり難しいようです。
作者には申し訳ありませんが、小説のほうは、参考指定物件のレベルに達していません。キャラには見るべきものがありますが、話のほうはガッタンコ、百合的にはクンフーが足りません。吉屋信子の時代と現代を比較する際の対照物としては有益ですが。
ではなぜ参考指定物件なのかというと、挿絵です。この本の、耒世可恋の挿絵は、ある種の百合の頂点を極めています。耒世可恋の百合な絵は、商業誌ではこの本でしか拝めないので、参考指定物件としました。
集英社 1996年9月10日発行