これは寄宿舎の物語。
直球のコピーは難しい。「丈夫で長持ち」といった類の、訴えたい内容をそのまま表現するパターンのことだ。最近のヒット作では、「目のつけどころがシャープです」がこれにあたる。
「芸してます」と主張しながら芸をするのは、それが芸になってさえいえば、易しい。コピーそれ自体としては少々失敗したときでも、「これはいったいどんな芸なのか」というレベルの興味が働く。
片岡敏郎の名コピーの数々、たとえば「不景気か?/不景気だ!/赤玉ポートワインを飲んでるか?/飲んでない!/そうだろう!」は、こうした芸のいい見本である。このコピーの素晴らしさは「そうだろう!」というオチに集約される。しかし、たとえここで「悲しいな!」とか「じゃあ飲もう!」のように決めそこなったとしても、意図するところはそれなりに伝わる。が、「丈夫で長持ち」は、まるで手紙文の決り文句のように見逃され、なにひとつ伝わらない。
今日のキャッチフレーズも、多くの人々には、「丈夫で長持ち」のように見逃されるかもしれない。だが、この作品自体もまた、そのようなものだ。
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