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「こんな大人にはなりたくない」と思うのは、子供だけではない。もし立派な大人が、飯島琴子を見たら、「こんな大人にはなりたくない」と思うのではないか。
けれど子供には、別の意見があるらしい。 |
今日からしばらくのあいだ、各キャラのセリフからキャッチフレーズを採ってゆく。
私が子供のころ、ひとを見て、「こんな大人にはなりたくない」と思ったことがあったか、どうか。なかったような気がする。もちろん、大人を値踏みしなかったわけではない。自分の役に立つ相手かどうかを、常に検討していた――自分の理想像や反面教師を探すのではなく。理想像も、反面教師も、いつも同年代の人々だった。だから私の場合、「子供だけではない」どころか、「子供ではない」だ。
「理想」というと、遠くにある抽象的なものを示すように思えるかもしれない。しかしそれは実は、ごく身近で、きわめて具体的なものだ。
そのことを知っていたカール・マルクスは賢明にも、理想社会の青写真を描くことを拒んだ。もし彼がそうしていたら、手近にあった玩具をつかんで差し出すことになっただろう。人間には玩具以上のものが作れるはずだと、彼は確信していた。
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