2004年08月06日

価値観の指導者

 「残念な結果だ。模造品撲滅のため消費者意識を高める必要がある」
 人民の偉大な教師である内閣府は、われわれの価値観を指導してくれるらしい。
 カルチェやavexの商売の片棒をかつぐと、私にいったいどんな利益があるのか、そこのところが知りたい。「風が吹けば桶屋が儲かるので、あなたには桶屋のおこぼれがまわってくる」式の説明で納得できるほど私は賢くない。
 私としては、こう言いたい――現行法が定める知的財産権の内容には、著しい不公正があり、公共の福祉に適合しない面がある(憲法29条2項参照)。
 生物の多様性は、生物自体の存在を支えてきた。文化にとって多様性は、文化自体の存在理由でさえある。しかし現行の知的財産権は、多様性に対してなんの評価も含んでおらず、カルチェやavexは売れたぶんだけ儲かる仕組みになっている。彼らに利益を与えた服飾文化・音楽文化は、数多くの弱小ブランドがもたらす多様性に支えられたものであるにもかかわらず。
 カルチェやavexが好きな人は本物を買うだろう。もし模造品を買うとしても、もともと買えるだけの金がない場合なので、損失は発生しない。が、好きでなくても必要だと感じる人はいる。そのような必要を感じさせる力は、文化の力であり、カルチェやavexの力ではない。
 知的財産権が公共の福祉によく適合し、公正な分配がなされるという確信が抱けるようになれば、模造品への態度も変わるかもしれない。現行法のもとでは、「好きでもないのに必要だと感じる」という現象があるかぎり、模造品への態度はさほど変わらないだろう。

Posted by hajime at 2004年08月06日 06:58
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