2004年10月11日

神曲

W・クレーマー/G・トレンクラー『常識のウソ 277』から引用する。180ページ。

 作者のダンテ自身による題名は単に『喜劇』といった。商売上手な印刷業者によってこれに『神聖』という文字がくっつけられ『神聖喜劇』と呼ばれるようになるのは、作品成立から二百年ほどのちのことである(邦訳名の『神曲』もこれに由来する)。

 クンデラ『存在の耐えられない軽さ』から引用する。245ページ。

 すなわち、ベートーベンは思わず吹き出すようなインスピレーションを、真面目なクヮルテットへ、冗談をメタフィジカルへと変化させた。これは軽いものから重いものへの変化(すなわちパルメニデースによれば、肯定的なものから否定的なものへの変化)についての興味深い話である。妙な話だが、このような変化はわれわれを驚かしはしない。それどころか、ベートーベンがクヮルテットの重々しさを、デンプシャーの財布についての四声のカノンの軽々しい冗談に変えていたら、われわれの気に入らなかったであろう。

Posted by hajime at 2004年10月11日 05:30
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