2007年05月16日

安倍首相の憲法観

 「憲法は、国の理想、かたちを物語るものだ」
 「国家と妄想的に一体化したい」「だから国家は人格的なものであってほしい」という願望を、いまどき恥ずかしげもなく垂れ流すような輩が首相だとは驚いた。
 ずっと昔、マダガスカル島の文化を調べた本を読んだことがある。たしかウニベルシタス叢書のどれかだ。内容はほとんど忘れてしまったが、宗教的儀式についての記述だけが印象に残っている。それは、男たちが民族の祖先(家族の祖先ではない)を尊んで、祖先と同一化すると同時に、新しい命を生み出す力を憎み貶める、という意味の儀式だった。新しい命は、祖先に背くかもしれない危険分子であり、祖先(および祖先と同一化した男たち)にとっては敵である。
 「新しい命は、この祖先共同体を受け継いでくれる存在では?」と思うところだが、それは無神論だ。神が人間に依存しないのと同様、祖先は生きている人間に依存しない。そのため問題は、新しい命をメンバーに取り込むこととしてではなく、新しい命が祖先(および祖先と同一化した男たち)に背くのを防ぐこととして認識される。
 このとき私は、全体主義の根の深さを悟った。民族の祖先のような永遠不動のものと一体化したいと望む衝動が、人間には備わっている。その衝動は、栄えることではなく、敵を抹殺することへとつながっている。

Posted by hajime at 2007年05月16日 00:46
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