この世には怠惰な人々がいる。たとえば、作品を読まず、評価せず、ただ《処理》しようとする人々だ。
「性描写」だの「過激」というのは、ポルノ産業のポルノ産業によるポルノ産業のための指標だが――大量生産される規格品にふさわしい工業的な指標だ――、これを業界の外に持ち出して、作品を《処理》しようとする、恥知らずな人々がいる。
売上や利益という指標は、「性描写」よりはマシだ。市場について教えてくれる。誰の声が大きくて、誰の声が小さいか、教えてくれる。だが作品の指標にはならない。もし作品の指標にしたら、それは作品を《処理》しているだけだ。
読むこと。
個々の作品を読むこと。一対一で読むこと。それがなくては感想さえ言えない。もし言えば、それは嘘どころか、譫言だ。
私は一年以上にわたって、少コミを読んだ。四コマ以外の全作品を読んだ。「この作家がよい作品を描くことは金輪際ない」と断言できるような作家でも読んだ。そんな作家でも、比較的マシなものを描けば、それなりの評価をしてきたつもりだ。
そのうえで、現在の結論を申し上げる。
少コミはつまらない。
つまらない理由は次回以降。
・しがの夷織『なにさま!? オレ様』読み切り
あらすじ:彼氏役と主人公は幼馴染で相思相愛だが、告白はまだ。気持ちのすれちがいで揉めたあとに告白。
彼氏役の人物造形が、この前の連載と同じタイプだ。魅力はそれなりにあるが、飽きた感じがする。読者の私ではなく、作者が飽きた感じだ。
採点:★★☆☆☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第19回
あらすじ:彼氏役(司)を敵視する新キャラの玲二。主人公(翠)と玲二が出くわし、喧嘩になる。
前半の日常シーンは楽しく読めるが、喧嘩の絵は目もあてられない。画力もひどいが、そもそも「身体を使う」ということをイメージしている節がない。身体を使うことに関心がないなら、どうしてスポーツを題材にするのだろう。謎だ。
採点:★☆☆☆☆
・千葉コズエ『夜の学校へおいでよ!』新連載第1回
あらすじ:主人公(夜)は、強面の彼氏役(山根)がアヒルとたわむれるところを目撃する。それをきっかけに接近する二人。
設定が魅力的だ。学校の敷地内に民家があり、そこに主人公が住んでいる。ただ、この設定からどんな手を繰り出すのかと考えてみると、難しい気もする。
採点:★★★☆☆
・麻見雅『燃え萌えダーリン』連載第2回
あらすじ:強い魔力を得たい彼氏役(使い魔)は主人公との性交を求めるが、主人公は拒んでいる。主人公は、妖怪に襲われて彼氏役に助けられた直後、性交を許すが、今度は彼氏役が拒む。
画面構成の演出が弱い。
採点:★☆☆☆☆
・咲坂芽亜『姫系・ドール』 連載第3回
あらすじ:主人公(歩)と彼氏役(蓮二)を威嚇する敵役(鉄汰)。
普通に盛り上げている。
採点:★★★☆☆
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第15回
あらすじ:乃亜が主人公(水結)を、水泳選手として留学に送り出そうとする。水結は彼氏役(蒼似)と離れることをためらうが、「それなら別れる」と蒼似。
波乱万丈を再開した。
乃亜と蒼似の因縁をほったらかしたままで、こんな最終回ネタを持ってきたということは、もうすぐ終わりだろうか。
採点:★★☆☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第21回
あらすじ:涼が主人公(彩華)を奪うことを決意、宣言する。
どうやら大作戦が始まった。滑り出しはやや平凡か。
あと、編集部はいったいいつになったら、「21th」が誤植だということを覚えるのだろう。今回の僕キミはちゃんと「42nd」になっていたが。
採点:★★★☆☆
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』連載第9回
あらすじ:みんなで主人公をかつぐ。
「実はみんなで主人公をかついでいた」と後から読者に説明する話や、「実は主人公のために辛く当たっていたんだよ」と後から読者に説明する話には、なにかしら邪悪なものがある。「強姦されてハッピーエンド」と同じ種類の邪悪さだ。
みんなで主人公をかついでいることが、最初から読者に明かされている話は、なにも問題ない。たとえば『ドン・キホーテ』は随所でそれをやっている。が、後から読者に説明するのは、なにが悪いのかうまく説明できないが、なにかしら邪悪だ。
採点:☆☆☆☆☆
・悠妃りゅう『バタフライ・キス』連載第4回、次回最終回
あらすじ:写真集用の撮影で失敗して落ち込む主人公。しかし彼氏役の努力や覚悟を知って立ち直る。
話の中心がモデル仕事になっている。主人公の容貌コンプレックスはどこへ?
採点:★★☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第42回
あらすじ:逞が倒れて入院、主治医が心臓移植を話題にする。病院のベッドで、逞が繭を押し倒す。
昂の心臓を逞に移植、というコースで進んでいる。昂の死に際→移植手術→術後の葛藤→ハッピーエンド、で完結だろう。どこでどうやって照のことを投げ込むか、そこだけが見どころだ。
採点:★★☆☆☆
・紫海早希『ぎゅっ・と大キライ』読み切り
あらすじ:幼馴染の彼氏役と主人公が4年ぶりに再会。彼氏役に告白されるが、幼い日の行状を思うと、本気とはなかなか信じられない。
まんが的な無茶やデフォルメをうまく使っている。
採点:★★★★☆
・真村ミオ『先輩と毎日と無限大』読み切り
あらすじ:よくわからない。
因果関係はわかるが話になっていない、という少コミによくあるパターンだ(少コミ以外では見たこともないが)。
採点:☆☆☆☆☆
第25回につづく