眠いので前回の続きはまた後日。さっさと第15号のレビューにいく。
・水波風南『乃亜な理由』読み切り
あらすじ:『狂想ヘヴン』番外編。男遊びが盛んな乃亜が、夏壱の純情パワーを浴びる。
乃亜が主人公の番外編ということで、蒼似との過去を期待したが、「とりあえずカップルを作ってオチをつける」という少女まんがの悪しき伝統そのままに、夏壱との後日談だった。
作者は乃亜がお気に入りだったのかもしれない、と感じた。しかし作者に愛された登場人物は往々にして、スケールが小さい。スケールを大きく見せるには、影の部分――痛ましさや愚かしさや傍迷惑――もそれだけ深くせねばならず、作者の愛はその深さを阻んでしまう。乃亜のような人物造形ではこれは致命的なマイナスになる。
採点:★★☆☆☆
・しがの夷織『はなしてなんてあげないよ』連載第2回
あらすじ:彼氏役(大輔)があの手この手で主人公(京華)にアピール。
いろいろなバランスがよく安心感がある。しかし手が縮んでいるようにも見える。安定した静的なバランスではなく、動くことによって辻褄をあわせる、不安定で動的なバランスが欲しい。
たとえば彼氏役はここからどう成長するのか。最初の時点からできすぎていて、成長の方向性を感じない。かといって人格破綻者を出せばいいわけではなく、動的なバランスをとる必要がある。
採点:★★☆☆☆
・水瀬藍『あなたへのクレッシェンド』新連載第1回
あらすじ:幼い日の王子さまを今も探す主人公。彼氏役を横目に見ながら、当て馬が王子さまではないかと考える。
特にまずいところはないが、やや単調で間延びしている。彼氏役も当て馬もアピール不足だ。
採点:★★☆☆☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第22回
あらすじ:当て馬(カズマ)のアピールタイム。
前回「次号、衝撃の急展開」と煽っていたのに、一回休みのような回だった。
採点:★☆☆☆☆
・咲坂芽亜『姫系・ドール』連載第6回
あらすじ:彼氏役(蓮二)の店が開店。その覚悟と人気で敵役(鉄汰)をとりあえず黙らせる。
相変わらず演出の迫力で押している。ただ今回は絵が雑で、演出が空回りしている感がある。
採点:★★☆☆☆
・あゆみ凛『ほしいのは、あなただけ』新連載第1回
あらすじ:主人公は若手女優。男性恐怖症なのに恋愛ドラマの主役を引き受けてしまい窮地に陥るが、マネージャ(彼氏役)が影で努力しているのに触れて、男性恐怖症を克服する。
主人公が芸能界を目指す少女まんがはよくあるが、話の最初から主人公が女優として活躍中、というのは珍しい。
芸能界ものが辛いのは、登場人物を基本的にプロフェッショナルとして描かなければならないところだ。日本のフィクションは伝統的に、プロフェッショナルを描くことをしないので(日本のTVドラマに『ER緊急救命室』のような作品を探してみるといい)、ごまかしがきかない。この作品も例に漏れず、彼氏役の行動にプロフェッショナルな行動原理を感じない。
採点:★★☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第45回
あらすじ:頼が暴力沙汰で退学になる。去り際に頼は、逞との会話のなかで、自分の結婚願望を口にする。逞は幼い日の約束を思い出す。
潔く生きる男たち、といったところか。美しい。ただし、僕妹の頼のことを忘れて読めば、だが。
採点:★★★☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第24回
あらすじ:恋愛禁止の校則違反の証拠をつかまれた主人公(彩華)と彼氏役(芯)。証拠湮滅のため生徒会室に潜入するが、生徒会長はそれを察知して待ち受けていた。一悶着のあと生徒会長は主人公たちに共感し、恋愛禁止の校則の例外を教える。
大作戦が順調に展開している。
採点:★★★★☆
・麻見雅『燃え萌えダーリン』連載第5回、次回最終回
あらすじ:当て馬は主人公と彼氏役を罠にかけ、主人公から彼氏役の記憶を奪う。当て馬の主張(式神との恋はよい結果をもたらさない)に理があることを認めた彼氏役は、なにもなかったことにして主人公と対面しようとするが耐えられず、自分を式神にしている魔法を解いてくれと頼む。
驚いたことに、これまでのところ、まったく問題なく話が理解できている。
採点:★☆☆☆☆
・真村ミオ『ビターBOYカフェ』読み切り
あらすじ:カフェでバイトを始めた主人公。バイトを始めるきっかけになった男(彼氏役)は、実は昔の同級生だった。
なにをどう楽しめばいいのか、さっぱりわからない。
採点:☆☆☆☆☆
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』最終回
あらすじ:結婚式ごっことイタリア移住取りやめで終わり。
そつなく締めくくった。
採点:★★☆☆☆
・市川ショウ『おうちへ帰ろう。』最終回
あらすじ:彼氏役との距離を縮める努力を続ける主人公。子供たちの起こしたトラブルがきっかけでお互いに告白。
この作品のどこがまずいのか、前回はまだわからなかったが、今回になってわかった。主人公の家庭的なところが、どうにも上っ面で、言い訳じみている。家庭的なものの権力性を見落としている。
たとえば、主人公は男の子の面倒をみているのだから、彼氏役のなかに幼稚園児と共通する「男の子」を見出してもよさそうだ。こういう認識の枠組みには、なにか微妙な暗い問題がある。その暗さが、家庭的なものを上っ面でない深みのあるものにする。この作品にはそれがない。
採点:★☆☆☆☆
第28回につづく