2008年01月21日

少コミを読む(第37回・2008年第1号)

 インターネットは本物のおもちゃ箱だ。本物のおもちゃ箱には、ナイフとピストルが入っている。ナイフで自分の指を切り落とすもよし、ピストルで自分の足を撃つもよし。それでこそ本物の遊びであり、本物の人生だ。
 「子どもの自分の死についての権利」であるが、これは文字通りに理解しようとすると、尊厳死や自殺などにつながる議論と誤解されかねないが、そうした議論とは若干違った視点からの提案である。
 これについて、彼はこう説明する。
 我々は、死が子どもを奪い去るのではないかと恐れるあまり、子どもの生活の中から危害となるかもしれないようなものをことごとく排除してしまった。しかし、生きることにはいつでもいのちの危険は忍びよってくるし、memento mori(死を思い起せよ)、生の裏面は死である。死の可能性、あぶなかしさのない生は、十分に生きられた生ではないと言うのである。

 ヤヌシュ・コルチャックの思想が、あなたのナイフとピストルになることを希望する。
 では2008年第1号のレビューにいこう。

 
・織田綺『箱庭エンジェル』新連載第1回
 あらすじ:なよやか系の男性モデルの鞠亜に憧れて、同じ学校に転校してきた主人公(羽里)。実物の鞠亜はカリスマ性のある変人だった。
 彼氏役の傾向をちゃんと変えてきているのが好ましい。主人公はもう少しひねったほうが面白いか。
 採点:★★★☆☆
 
くまがい杏子『放課後オレンジ』連載第9回
 あらすじ:彼氏役()とのキスや告白のせいで動揺した主人公(夏美)は、自分の競技で失敗して記録なしで終わってしまう。夏美を動揺させたことを恥じる翼。一方、当て馬(滉士)が夏美に言い寄り、翼に向かって「夏美は自分の彼女になった」と宣言する。
 全体に感情の流れがぎこちない。競技直後の興奮の異常さを、画面で表現できていないのが原因か。
 滉士の使い方が、今のところあまりにも露骨に当て馬くさい。これは少コミ全体に共通する欠点で、見るたびにますます鼻につく。
 採点:★★☆☆☆
 
・白石ユキ『アクマでコイビト。』新連載第1回
 あらすじ:主人公(凛子)を使い走りにする彼氏役()。樹は外面のいい男で、凛子以外の人間を使い走りにすることはない。あるとき凛子は、ほかの女の子と同じように外面よくしてほしいと希望し、樹はそのようにするが、凛子は不満を覚える。
 心理上の因果関係がデタラメで、話が話として成立していない。
 少コミは、無礼な男との付き合いに「よかった探し」をする話が多いような気がするが、もしこれが人気のある話なのだとすると、レディコミ的なアノミー(現在の結婚をひたすら正当化)が少コミ読者にも浸透しているのだろうか。その状況を思うと、暗澹たる気持ちになる。
 採点:★☆☆☆☆
 
・蜜樹みこ『ラブナイフ』連載第2回
 あらすじ:主人公(明希姫)は、好きでもないのに付き合っていた男(陽平)と別れる決心をして電話でその旨を話す。その翌日、明希姫と彼氏役(天宮)に中傷と暴力が加えられ、友人たちの定める秩序に服するよう求められる。
 陽平のファッションが不自然で、首をかしげる。明希姫の友人たちとファッションの系統がかけ離れていて、暴力団的な同化と服従を強制する集団であることが伝わらなくなっている。もし陽平の腰が引けているなら、このファッションで辻褄が合うが(前回の時点ではこの線かと予想していた)、先頭に立って暴力を加えるのなら不自然だ。
 中傷と暴力も、暴力団的な陰湿さを欠き、迫力がない。
 採点:★☆☆☆☆
 
・車谷晴子『危険純愛D.N.A.』連載第8回
 あらすじ:彼氏役(千尋)が一人暮らしを始める。主人公(亜美)は、敵役(臣吾)がその姉と深い仲であること、二人のあいだに血のつながりのないこと、さらに千尋と亜美のあいだにも血のつながりがないことを臣吾から聞かされる。
 まとめに入ったか。
 臣吾の秘密がバレる過程が単純すぎて味わいに欠ける。
 採点:★★☆☆☆
 
咲坂芽亜『姫系・ドール』連載第16回
 あらすじ:主人公()が記憶喪失になる。歩は彼氏役(蓮二)に恐怖を覚え、敵役その1(鉄汰)の家についてゆく。
 大ゴマ連発や、蓮二と友人の意味のなさそうな殴り合いに、引き伸ばし感がありありと漂う。
 採点:★★☆☆☆
 
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第7回
 あらすじ:彼氏役(京汰)への片思いに震える主人公(つばき)。
 作者の狙いが炸裂。
 採点:★★★☆☆
 
池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第32回
 あらすじ:主人公()が敵役に強姦されかかるが、彼氏役()が助けてくれる。
 これを読むのも罰ゲームだが、描くのも罰ゲームだろう。
 採点:☆☆☆☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第55回
 あらすじ:の恋人が病院に現れて愁嘆場。苦しむ
 修羅場にあっても、逞やは感情が動揺するだけで価値観が動揺しない。それが薄い感じをもたらしている。昨日あまりにも確かだと思えていたことが、今日は噴飯物に思え、さらに明日は再び真実だと悟る、という価値観の動揺はメロドラマに欠かせない。
 採点:★★☆☆☆
 
・あゆみ凛『太陽をつかまえて!』読み切り
 あらすじ:よくわからない。
 まったく意味がわからない。『ハヤテのごとく!』のナギが描いているまんが(作中作)を100万回読んで出直せと言いたい。
 採点:☆☆☆☆☆
 
・真村ミオ『あの頃の私達は。』読み切り
 あらすじ:よくわからない。
 「形だけで愛のないお付き合いでした」でもなく、「彼には私の言葉が通じませんでした」でもなく、ただただ主人公の思い込みだけで話が進んでいる。
 採点:☆☆☆☆☆
 
・市川ショウ『HOBBY☆HOBBY』最終回
 あらすじ:主人公(美名)の気持ちをよそにラジコン勝負に熱中する彼氏役(和哉)と当て馬()。美名の父親がツッコミを入れて気持ちよく解散。
 うまくまとめて終わった。
 採点:★★★☆☆
 
第38回につづく

Posted by hajime at 2008年01月21日 18:26
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