2009年05月22日

Sho-Comi(少コミ)を読む(最終回・2009年第12号)

 最終回ということで、作家ランキングを3つ作った。
・将来性ランキング
・応援したい作家ベスト5
・好感度ベスト5
 「応援したい」と「好感度」の微妙な差が味わいどころ。

 
将来性ランキング
 古本屋に単行本が並んでいるのを見つけたとき、立ち読みしたくなるかどうかのランキングである。「少コミを読む」で3回以上評価した作家全員に順位をつけた。
 
1位 水波風南
2位 天野まろん
3位 天音佑湖
4位 あゆみ凛
5位 藤中千聖
6位 古賀よしき
7位 くまがい杏子
8位 白石ユキ
9位 千葉コズエ
10位 織田綺
11位 新條まゆ
12位 陽華エミ
13位 紫海早希
14位 夜神里奈
15位 ナオダツボコ
16位 杉しっぽ
17位 心あゆみ
18位 蜜樹みこ
19位 伊吹楓
20位 咲坂芽亜
21位 藤原なお
22位 藍川さき
23位 真村ミオ
24位 市川ショウ
25位 水瀬藍
26位 服部美紀
27位 ミヤケ円
28位 さくら芽依
29位 悠妃りゅう
30位 青木琴美
31位 池山田剛
32位 車谷晴子
33位 麻見雅
34位 わたなべ志穂
35位 美桜せりな
36位 大谷華代
37位 華夜
38位 しがの夷織
39位 浅野美奈子
40位 山中リコ
 
応援したい作家ベスト5
 この人が売れる世の中はきっと今よりいい世の中にちがいない、だからこの人に今日を生き延びさせて明日のチャンスをあげたい、と思える人を選んだ。
 
1位 藤中千聖
2位 ナオダツボコ
3位 あゆみ凛
4位 杉しっぽ
5位 織田綺
 
好感度ベスト5
 完全に私の趣味で選んだ。
 
1位 あゆみ凛
2位 天野まろん
3位 藤中千聖
4位 織田綺
5位 天音佑湖
 
 では2009年第12号のレビュー。
 
藍川さき『僕から君が消えない』連載第15回
 あらすじ:彼氏役(康祐)の元カノ(瑞菜)が強引に康祐にキス、それを目撃した主人公(ほたる)。誤解は解けたものの、二人の仲がぎくしゃくする。瑞菜はさらに康祐にトラブルを持ち込み、ほたるとのデートの約束が危うくなる。一方、当て馬()がほたるに気のある様子。
 あと3回で終わるとすると、駆がうまく捌けそうにない。もう1巻延ばすと、ネタ切れがいっそう苦しくなる。難しいところ。
 評価:★★★☆☆
 
・咲坂芽亜『カワイイだけじゃモノ足りない!』連載第8回
 あらすじ:彼氏役(雷斗)のパリ長期滞在が近づく。雷斗は主人公(アリス)をデートに連れ出し、「一緒にパリに行かないか」と誘う。
 雷斗のアピールに魅力が薄い。社会的ステータスや伏線に頼ったものが多いのが原因か。どちらもほとんどアイディアを要さずに作れるものなので、演出的な説得力が弱い。
 評価:★★☆☆☆
 
・白石ユキ『となりの恋がたき』連載第5回
 あらすじ:本心を見せたヒロ一夜が対立し、主人公()の目の前で口論を争いはじめるが、茜はまともに取り合わずに逃げる。ヒロと一夜は学校の朝礼で公然と茜に告白、自分を選ぶようにと迫る。
 23ページ目の構図が笑える。こういうとぼけた味が作者の持ち味なので、前回のような重苦しい展開は避けるべきだ。
 評価:★★★☆☆
 
・蜜樹みこ『恋、ひらり』連載第11回、次回最終回
 あらすじ:彼氏役(佳月)の弟(正妻の息子、)が、佳月への苛立ちを募らせ、嫌がらせに主人公(純恋)に迫る。佳月は悠に挑発され、次回の公演で、跡継ぎの座と純恋を賭けて勝負することになる。
 悠の苛立ちが取ってつけたように登場する。勝負に純恋を絡めるやりかたが必然性に欠けるので、緊張感がない。
 評価:★★☆☆☆
 
水瀬藍『センセイと私。』連載第17回
 あらすじ:彼氏役(篤哉)の友人(良太郎)が新任教師として登場。良太郎は主人公(遥香)が篤哉を好きだと知っても笑っているが、つきあっていると知ると厳しい顔を見せる。その直後、教室の黒板に何者かが、遥香と篤哉の関係を告発する落書きを大書する。それを見た友人や同級生の反応から、遥香はこれが道ならぬ恋であることを再認識する。
 設定上の本筋に戻ってきた。まるで次回最終回のような展開だが、それにしては良太郎の登場が唐突だ。おそらくまだ1巻分は引っ張るだろう。
 評価:★★★☆☆
 
池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第18回
 あらすじ:主人公(爽歌)が風邪を引き、彼氏役()が見舞いに行く。成り行きで一緒のベッドで寝てしまい、爽歌の両親に発見されるが、輝はこのピンチを利用してアピールする。
 アピールまでの段取りはいいが、アピールの中身に切れ味を欠く。
 評価:★★☆☆☆
 
水波風南『今日、恋をはじめます』連載第40回
 あらすじ:転入生(ハル、ハルステッド)は彼氏役(京汰)との過去の確執を語り、主人公(つばき)を強姦しようとするが、罪悪感のため未遂に終わる。つばきは二人の確執の重さにうちひしがれ、京汰と距離を置こうとする。
 かなり凝った構成。絵の描写・ハルの言葉・ハルが考えているであろうこと、この3つのあいだに複雑なズレを作り出しており、緊張感がある。
 ハルの言葉のうえでの主張によれば、当時のハルの彼女(仮にA子とする)を京汰が強姦しようとして、そこに偶然ハルが踏み込んでしまい、強姦は未遂に終わった、となる。しかし絵に描かれた状況は、強姦としては不自然なものだ。しかも前回、A子がのちに京汰に乗り換えたかのような描写があった。さらに、ハルは「京汰との約束」と言い「京汰への復讐」とは言わない。
 ただ、平均的な少コミ読者がこれほど凝った構成を読み取れるのかどうか、少々怪しい。
 評価:★★★★☆
 
・くまがい杏子『苺時間』連載第9回
 あらすじ:蘭になにか緊急事態が起こり、主人公(市子)にホテルから出ないように言って出ていく。それでも市子が学校に行くと、蘭と市子の関係を告発する怪文書がばらまかれており、大問題になっていた。
 蘭の人物造形が少々弱い。
 次回、市子が誘拐される(今度は本番)と予想する。
 評価:★★★☆☆
 
千葉コズエ『ひとりぼっちはさみしくて』連載第14回
 あらすじ:主人公(詞央)はミュージシャンになるために上京したいと願い、資金稼ぎにバイトを始めるが、そこには彼氏役()の元カノ()が働いていた。詞央は最初は恐れをなしていたが、秋の魅力を理解し、さらに秋が音楽の道に未練があることを知る。
 立て直したようでいて、やはり一手足りない。直の脆弱さ、信用の置けなさに手が回っていれば、緊張感がまるで違っていたはずだ。思えばこの作者はこういう手数計算が弱い気がする。
 評価:★★★☆☆
 
・華夜『恋する野獣』読み切り
 あらすじ:相手を間違えて告白、そのまま好きになる。
 本来告白するはずだった相手(当て馬)のアピールがない。そのため主人公の最初の告白に説得力がなく、主人公の心変わりがドラマではなくなっている。
 評価:★★☆☆☆
 
・浅野美奈子『嘘つきな僕ら』読み切り
 あらすじ:有名な色男が罰ゲームで主人公に告白。
 シンプルな話のはずなのに、さっぱり頭に入らない。
 評価:★☆☆☆☆
 
・藤中千聖『王様の裏シゴト・』最終回
 あらすじ:彼氏役(夏樹)の描いたまんがが映画化、夏樹は主人公(ミユウ)をその主演女優にする。ミユウが主演男優の恋人を演じているのを見て夏樹は嫉妬、キスシーンの撮影中に割って入って自分が恋人を演じる。それを見た映画の監督が「これはいい」と認めて、夏樹が主演男優になる。
 切れ味抜群。ただ、こうするなら最初からもっと馬鹿なノリを打ち出すべきところ。
 評価:★★★★☆
 
 なお、自ら創作活動の第一線にある者が少コミ向け作品の制作に携わらず、評価だけで終わることを、心より恥じる。

Posted by hajime at 2009年05月22日 02:51
Comments

初めまして、こんにちわ。


数少ない訪問ではありましたが、中里一先生の少コミレビュー、楽しく拝見してました。

この度、少コミレビューが最終回であること、とても残念です。

これからも体に気をつけて、お仕事頑張って下さい。


Posted by: 寿 at 2009年05月31日 17:06

初めまして。
中里一先生のレビュー、とても楽しく読ませていただきました。

3年間、私はある先生のレビューを追っていたので感慨深いです。
あれから少しずつですが、私も自分の人生を歩み始めています。

応援したい先生方、好感度の高い先生方がコミックを出された時は私も読んでみます。(もうレビューが読めないと思うとさびしいですね・・・)

Posted by: イチ at 2009年06月01日 08:43

 嬉しいメッセージありがとうございます。
 皆様も少コミ全作品レビューに挑戦なさってはいかがでしょう。興味が持てないものを「興味ない」で済ませるのは健全なことですが、そこを無理して負荷をかけることで、トレーニングになります。ただし、やりすぎると壊れるかもしれないので、ほどほどに。

Posted by: 中里一 at 2009年06月02日 02:25
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