2012年12月10日

平均年齢26歳。激務で薄給

 『Newsweek』といえばアメリカの一流誌で、その論はたとえ逆張り(上品に言えば「ポレミカル」)でも、見るべき点がある――なんとなく、ずっとそう思っていた。
 しかし、である。
 最近、『ニュースの天才』(2003年)という映画を見た。これまたアメリカの一流誌『New Republic』の編集部を舞台とした話で、その冒頭のナレーションによれば、編集部記者の平均年齢はわずか26歳。激務で薄給だという。アメリカの一流誌の編集部記者という職種は、日本のアニメスタジオの動画のようなものらしい。大多数は数年も続かずに足を洗う。少数が生き残って原画などへと昇格してゆく。アメリカの雑誌記者なら、昇格先はフリーランスのジャーナリストか。
 これを知って以来、私は、アメリカの雑誌記事を見る目が変わった。
 そういえば、と真っ先に思い出したのが、先日の受精卵に思い入れる価値観だった。「ジャーナリスト」という肩書がついているので、編集部記者ではなさそうだが、平均年齢26歳の編集部記者が先輩の記事を載せたと思えば、「アメリカの価値観状況ではなく、このジャーナリストがおかしいのでは?」という疑いを抱く。おかしいとまでは言わなくても、あまりにも中身の乏しい逆張りなのではないか。
 そして今度は、逆張りの際物をこんな記事で紹介している。「彼らは過去の司令官たちと違って、ワシントンの政界に立ち向かう度胸がなく~」といった主張を引用しながら、なんの見解も差し挟まない。一流誌の記事なら、「通説はこう」と一言あってもよさそうなところだ。過去の米軍の高級軍人がどれだけワシントンの意向を気にしていたか、という証言はたくさんある。私もすぐにあげられる。「韓半島で戦ったアメリカの将軍たちに共通していたのは、(中略)ワシントンの意向に忠実な軍人であること」「高級軍人であれば議会の圧力に敏感なはず」
 不親切だが、きっとアメリカの一流誌を読むのは何事にも一家言あるような読者ばかりで、別に問題ないのだろう。親切のつもりでアホな見解を差し挟まないことが、一流誌としてのありかたなのかもしれない。だがこのスタイルの裏にいるのが、平均年齢わずか26歳の編集部記者の激務と薄給だと思うと、単なる新刊紹介がとたんに薄っぺらく、かわいそうにさえ思えてくる。

Posted by hajime at 2012年12月10日 19:29
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