中里一日記

[先月の日記] [去年の日記]

2001年2月

2月28日

 iモードの通信料が安くなるのはいつかと思って調べてみたところ、今年の5月からとわかった。IMT-2000では、従来の十分の一に値下げするとの観測が有力だという。安くなるのはIMT-2000対応の新機種だけだが、従来の通信料はとにかく法外に高いので、iモードのヘビーユーザは半年もしないうちにほぼ全員がIMT-2000に転換するだろう。
 料金が十分の一とすると、128KBで30.7円。携帯電話の液晶画面は最新のモデルで120×160ドットの256色、3年後にはこの倍の解像度になるだろう(ドット数は4倍)。
 …アニキ、こいつぁボヤボヤしてる場合じゃねえぜ! いますぐJavaってKVMだ!

2月27日

 20世紀作戦。
 石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」の歌詞を全文検索で調べたところ、面白いことがわかった。
 「おいらはドラマー やくざなドラマー」の次の歌詞をご存じだろうか。全文検索の結果をみると、圧倒的に「おいらが叩けば」が多く、「おいらが歌えば」が一件だけあった。正解は、「おいらが怒れば」である。ちなみに2番は「おいらが惚れたら」、「おいらが叩けば」は3番である。

2月26日

 L作戦。
 なあ、俺たちは… 自由に向かって… ……そう、自由さ、ジョニー。…自由に向かって、歩いているんだ。…そうだろう?

2月25日

 「ペンシラー☆カナ」をエンディングまでやった。
 賛否両論あるだろうが、前半だけにしておいたほうがよかったようなゲームである。ゲーム的な思想は優れている(クリックするのが楽しい)し、話のほうも戦略レベルでは面白いが、戦術レベルでまったく腰砕けになっている。ゲーム的なよさや、戦略レベルの話の面白さは、前半でほぼ出尽くしているので、後にゆくほど戦術レベルの弱さが目立つ。

2月24日

 やってみたい実験がある。

 第1段階:
 中国奥地の村(人口1千人程度)に、一世帯に一台、ファミコンとTVを無料で貸す(200台程度)。ただしソフトは、「スパイ&スパイ」だけ。
 おそらく村の子供たちの半数は、「スパイ&スパイ」に熱中するだろう。学校の話題は「スパイ&スパイ」に集中し、一ヶ月後には「スパイ&スパイ」名人が100人単位で誕生するはずだ。

 第2段階:
 第1段階から3ヶ月後、希望者に、ファミコンの開発環境を無料で貸す。コンピュータサイエンスの入門書や、初歩的な技術書もつける。
 コンピュータの技術があれば、都会で働けるかもしれない。村の子供たちの何割かは、猛烈な熱意で6502のアセンブラを学び、スプライトとPSG音源を学び、ゲームを作り始めるだろう。ただし、「スパイ&スパイ」だけを参考にして。

 第3段階:
 第1段階から半年後、自作ゲームソフトのコンテストを行う。最優秀賞を獲得したチームのメンバーは、賞金100万円のほかに、上海でコンピュータの専門教育を受けることができる。
 村中がひっくりかえる騒ぎになる。我こそはと思う子供(大人も)は、コンテストの締切まで、ただひたすらゲームを作りつづける。ただし、「スパイ&スパイ」だけを参考にして。

 このコンテストの審査を、ぜひ、ぜひやってみたい。インベーダーゲームも、テトリスも、ドラクエも、パラッパラッパーも知らない人々が作ったゲームである。完全な異文化がそこにはあるはずだ。
 ファミコンとTVとソフトが合わせて1万円、開発環境が2万円とすると、この実験は、たった一千万円(および中国共産党の協力)でできる。中共と話のできる人間がいれば、「シェンムー」の開発費の切れ端で足りるのだ。
 最優秀賞を受賞したゲームが何万本も売れるとは考えにくいが、企業のイメージ広告(傾奇者御免状)として考えれば、十分に割に合うだろう。

2月23日

 L作戦。
 トラック5万本のHDDのフォーマットに7時間半。このうち3時間くらいは、コマンドレイテンシが長い(IBMに比べて約2倍)せいだ。Maxtorめ、どこまで私の邪魔をするのか。
 シークタイム測定のコードを書き直したところ、当社比400%以上も性能が改善された。半年前の私など、いまなら鼻息ひとつで吹き飛ばしてやる、といったところか。
 とにかくこれで、今度こそきっと、フォーマッタのコードが固まったに違いないと祈るような気持ちで断言したい今日このごろである。

2月22日

 L作戦。
 フォーマッタのコードが固まらない。MaxtorのHDDって一体… きゅう。

2月21日

 今日の嫌な関数:
 StrFormatByteSize( DWORD bytes, LPSTR buf, UINT buf_length )

 WindowsのShell Utility API、String Functionから。ヘッダファイルはshlwapi.h、ライブラリはshlwapi.lib。
 bytesにバイト数を入れて呼ぶと、そのバイト数を「1.37 GB」とか「114 KB」とかいった文字列に変換してbufに入れて戻る、という関数である。一見まことに便利のようだが、引数をよくご覧いただきたい。bytesの型がDWORD、つまりunsignedの32ビット、すなわち、bytesの上限は4GBだ。
 MSもこれはまずいと気がついたのか、ヘッダファイルを調べてみると、Unicodeでビルドすればbytesの型はLONGLONG(signedの64ビット)になるらしい。が、私はUnicodeのライブラリなんかインストールしていないのだよゲイツ君。

 …と思ったら、StrFormatKBSizeなる関数があるらしい。ただしIE5.0必須。……と思ったら、これだとKBにしかならない。
 正解は、shlwapi.dll内の、StrFormatByteSize64Aらしい。いまのところ一応まともに動いているように見えるが、このDLLはIEをアップデートするたびにバージョンが変わる代物なので怖い。ううう。

2月20日

 予想どおり、マスード派がタロカン奪回に動いている。
 バーミヤン攻略を陽動にしてタロカンを狙うようだが、あまりいい手とは思えない。内線の有利がないうえ、たとえタロカンを奪回できても、バーミヤンを犠牲にしたことで、マスード派への信望がなくなる。こんな手しか残っていないとは、いよいよマスード派は絶望的な局面に立ち入りつつあるらしい。

2月19日

 マルコム・ゴドウィンの「天使の世界」を、図版および前半だけチェックした。出典を明記しない本なので、図版以外にはあまり価値がない。
 どのページかは忘れたが、エノクをノアの祖父と書いていたところがあったような気が。曽祖父が正しい(エノク→メトセラ→レメク→ノア)。
 『出エジプト記』に出てくる天使(ちなみに「神の御使い」という語句は一箇所(第14章19節)にしか出てこず、あとはすべて「主」で統一されているような気がする)がメタトロンである、という説の出典はどこか。おそらくはカバラ文献のどれかだと思うが、なにしろ出典を示していないので、もしかするとマイナーなトンデモ本だったりする可能性も捨てきれない。

 20世紀作戦は現在64枚。
 ようやくスーダラ節まで来た。残り36枚。

 L作戦。
 フォーマッタのコードがようやく固まった(固まってくれ)ので、ファイルの構成を整理し、ガワ(GUI)をつける作業を始めた。
 意地悪なHDDとの格闘に比べると、ガワをいじる作業は詐欺のように楽だ。なにしろドキュメントを調べれば答が書いてある。

2月18日

 20世紀作戦。
 旧約聖書をざっとチェックした。噂にたがわずJHWHは気が短い。モーセに説得されると簡単に気を変えるわりに即決処分が大好き、という性格はどうかと思う。
 出エジプトからしばらくを忠実にドラマ化するだけで、モンティパイソン級のブラックコメディになるだろう。もしソ連の反宗教プロパガンダ(と見せかけた体制批判)にそういうものがあれば、ぜひ見てみたい。

2月16日

 「ペンシラー☆カナ」というエロゲーを始めた。
 18歳以上のはずなのになぜかロリショタな主人公(性別:受)が、魔法かなにかで変身させられて、ショタが取れて単なるロリになってしまい元に戻れない、という設定である。性別:受をさらに女にしてしまうところに味わいが…ない。
 毎日9時から22時まで働く、まるで真面目な大学院生(理系)のような労働時間や、食料は常にコンビニで調達という食生活に、さりげなくリアルな恐怖が漂う。
 とはいえ、ゲームとしてはかなり出来がいい。ほのぼのを求めるなら試してみて損はないだろう。

 今日発売のボーイズラブゲーム、「フレグランス・テイル」のデモを見た。
 クソゲー警戒注意報が発令されていた。南央美の信者諸氏の健闘を祈る。

2月15日

 猫缶が一個あり、猫が二匹いるとしよう。
 猫缶を開けて、猫たちの前に置く。すると猫たちはそれぞれ、我こそ餌を食わんとして、猫缶に口をつっこもうとする。猫缶の大きさからいって、猫の口はひとつしか入らない。当然、オール・オア・ナッシングの闘争が始まる。
 このような場合、ライバルを退けてから悠々と食べることを目論む猫も、どこかにいるかもしれない。しかし私が出会った猫たちは、そうではなかった。彼女たちにとっては、猫缶に口をつっこむことがすべてであり、ほかにはなにも必要でないようだった。
 先行したのは猫Aだった。猫Aは、猫Bよりも先に猫缶の気配をかぎつけ、私に近づいてきたのだ。あとからきた猫Bは、猫Aの口を、横や前から口で押し、猫Aを押しのけようとした。が、猫Aは頑として、猫缶の支配権を譲ろうとしない。
 猫Bは、猫Aの支配体制を覆すべく、猫Aの首の下に、自分の頭を潜り込ませた。猫Aは首を持ち上げられて、口が猫缶から離れる。と、猫Bの頭という障害物から逃れるべく、猫Aは体を左にずらした。
 猫Bが狙っていたのは、この瞬間だった。猫Aが体を左にずらしたため猫Bは、より猫缶に近いポジションを得たのだ。猫Bはすかさず猫缶に口をつっこみ、己の支配体制を確立した。
 私は息をつめて成り行きを見守った。猫Aは猫Bと同じ手段を用いるのか? 己の用いた手段に対して、猫Bはいかなる対応策を用意しているのか?
 が、私の期待は裏切られた。猫Aは、猫Bの口を横から押すばかりで、猫Bの用いた手段には訴えなかった。もちろん猫Bとて、口を横から押されたくらいでは、猫缶の支配権を手放すものではない。猫Bの支配体制が覆る気配は微塵もなかった。
 私はここで、彼女たちの歴史に介入することにした。すなわち、猫Bに手を伸ばし、猫缶から離れさせた。
 猫Aは再び猫缶支配を得た。この新たなチャンスを得て、猫Bの挑戦にどう対応するのか。
 しかし猫Aは、自分の歴史からなにも学んでいないようだった。再び首を持ち上げられ、再び体を左にずらし、再び猫缶を奪われたのである。猫Bの支配体制への無駄な挑戦も、そっくり同じことの繰り返しだった。
 かくして私は結論を得た。猫は、少なくとも数分間のスパンでは、ほとんど学習能力を持たない。

 …という話を人にしたら、性格が黒いと言われた。

2月14日

 L作戦。
 WinBench 99のDisk WinMarksにおけるボトルネックをつらつらと調査中。
 Iometerで調べると、書き込み以外はどこをどうひねっても遅いはずがないのに、Disk WinMarksでは低い値が出る。書き込み、それもランダム書き込み(HalfDiskの鬼門)の比重がかなりあるような気がする。
 ミラー側の書き込みをバッファリングしてタイマでフラッシュ… おそらく効かないだろう。HDDのバッファが512KBもあれば、ランダム書き込みのバッファリングには十分なはずだ。
 書き込み時にはすぐにはミラー側には書き込まず、ディスクへのアクセスが止んだときに、オリジナルからミラーへとコピーする… Disk WinMarksの値がいくらかマシになるだけで、通常パーティションをしのぐ好成績を出させるのは不可能だ。ミラーされていないトラックへのアクセスは、通常パーティションと変わらない。
 使い方をちゃんと選べば速くなる、といくら主張しても、ベンチマーカーが見るのは結局、有名なベンチマークの結果だけだ。ううう。
 が、嘆いてもはじまらないので、対策を考えた。
 ドライバで統計を取って、リードとライトの割合を監視し、ライトの割合が多すぎる場合には警告を出す。HalfDiskに向いたパーティションかどうかを、インストールの前に判断するためにも必要な機能だ。

 性能にクリティカルに効くバグを、インストーラに発見した。変だ変だと思っていたら… きゅう。

2月13日

 「百合すと2」用に、学習指定物件と学習参考物件を選定しなければならない、と思い至った。
 学習指定物件は、百合を知ろうとする人なら必ず体験すべき物件である。思想に難がなく、作品として水準以上で、入手性の比較的よい、純正な百合物件を指定する。ウテナを筆頭として、「マリア様がみてる」、「大運動会」、「あやかし忍伝くの一番」、映画の「乙女の祈り」などが入る。
 学習参考物件は主に、純正な百合物件ではないが百合的に見所のある物件である。入手性などの問題で学習指定物件にできなかったものもここに入る。へっぽこくんの「ガールズ・ガーデン」、「マール王国の人形姫」、「いつか、重なり合う未来へ サユリ編」、「KEY THE METAL IDOL」など。
 学習指定物件は10タイトル、学習参考物件は30タイトル程度を予定している。

 「Renaissance」というエロゲーは言語学をネタにしている、との情報を得た。
 もしマール主義がネタだったりしたら、ぜひやってみたい。悪魔がしゃべるのは、ヘブライ語でもギリシャ語でもラテン語でもなく、ヤフェテ語なのだ。とすると、再生(Renaissance)するのは古代ではなくソ連か?
 (マール主義:
 マルクス・レーニン主義を引き合いに出して権勢を振るった、ソ連名物のトンデモ学説。言語学におけるルイセンコ主義。1950年、スターリンに厳しく批判されて瞬時に消滅)

2月12日

 カーニハンとパイクの共著の「プログラミング作法」を読んだ。
 著者のひとりが出したという単純なバグの実例に、驚くというより慄然とした気分になった。生ける伝説の人(カーニハン)や、ベル研のプロジェクトリーダー(パイク)が、たとえどんなに急いでいたとしても、ここまで単純なバグを書くのか、と。
 どこまでいっても、バグとの戦いは恐るべきものであるらしい。

2月11日

 今日のソ連:
 「2001年ソ連の旅」
 パン・アメリカン航空の便でソ連に行き、シベリアの奥地で頭のおかしくなったKGB職員(壊れると「インターナショナル」を歌い出す)と戦い、最後に雪男とE.T.する。

2月10日

 今月のヤングユーで、坂井久仁江が百合を描いていた。
 このまんがを3ページ読んだだけで「百合?」と思った人は、百合のセンスがある。

2月9日

 斎藤美奈子の「紅一点論」を読んだ。
 「葛城ミサトは大人になった「魔法少女」である」――近来稀に見る卓見である。

2月8日

 もしかすると傍目には、私という人物は、「神聖モテモテ王国」のファーザーのごとくに見えているのかもしれない、と思い当たった。ナオンにモテモテになろうとするかわりに、百合を流行らせようとしているわけだ。……ソ連=トンカツ? ギャワー!!
 じゃが、ファーザーとわしには決定的な違い――さよう、ザクと旧ザクが違うように――がある。ファーザーはブタ箱行きじゃが、わしは勝利する。…完璧じゃな?

2月7日

 20世紀作戦は現在50枚。いよいよ必要な物資の集積を終え、主攻を明らかにしたという段階である。
 タイトルを「歴史のくずかご」に仮決定。

 L作戦。
 IRP_MJ_SHUTDOWNとIRP_MJ_FLUSH_BUFFERSを、ひとつのディスパッチルーチンで処理していたことに気づくまでに4時間。パーティションロックのために、IRP_MJ_SHUTDOWNは独立して扱われなければならなかったのだ。きゅう。

2月6日

 「百合すと2」の準備として、百合のイデオロギー問題を本格的に論じた場合の項目を立ててみた。以下に示す。

・はじめに
 ・香織派の目的
 ・「市場」ではなく「党」と呼ぶ理由
  ・新古典派経済学的な前提と「市場」
   ・「道に落ちている1ドル札」のアネクドート
  ・顔のない神のような「市場」、全能ならざる人間集団の「党」

・物語におけるイデオロギーとは何か
 ・党の指導性の下にある言論
 ・党による指導の実態
 ・言論の影響力は限りある資源
 ・影響力を獲得するには、党の仕組みを把握し利用しなければならない

・イデオロギーの歴史
 ・歴史の分析を通じて党のイデオロギー政策を理解する
 ・イデオロギーの反転
  ・金持ちの娘は可憐か意地悪か
  ・(適切な例をもう一件)
 ・新しいイデオロギーの登場
  ・推理
  ・やおい・ボーイズラブ
 ・古いイデオロギーの退場
  ・吉屋信子的な百合
  ・母子物

・党がイデオロギーに求めるもの
 ・変革しがたいものを正当化すること
  ・金持ちの娘の性格
   ・階級間の摩擦が減少したときに階級憎悪的イデオロギーが台頭したという矛盾
   ・貴族の美質を称えることで階級社会を正当化する
   ・自分より先に金持ちになった者への嫉妬を正当化する
 ・精神論によって希望を与えること
  ・吉屋信子的な百合
   ・よりよい強制収容所生活のために団結しよう
   ・戦後の自由化と社会変動に伴い、団結以外の道が魅力的に
  ・母子物
   ・明治維新以来の社会変動が「母性」に過度の負担を要求
   ・社会の安定とともに衰退
 ・現実の痛みのない世界を描き出すこと
  ・推理
   ・現実の問題のかわりに架空の問題をおく
    ・リストラのプロセスを推理してそれをかわす推理小説はない
    ・このような置き換えの手法はしばしば用いられる
     ・現実の痛みを単に取り除いただけでは十分ではない
   ・解決される問題、回復される秩序
    ・合理主義という精神論
  ・ホラー
   ・現実の恐怖のかわりに架空の恐怖をおく
    ・親戚と遺産争いをするホラーはない
  ・やおい・ボーイズラブ
   ・以下の章で詳しく分析

・やおい・ボーイズラブの歴史に学ぶ
 ・やおい前史
  ・「三つの『~ない』」によって現実の痛みを取り除く
   ・女ではない
   ・公的な関係ではない
    ・初期のJUNEには近親相姦が多かった
   ・妊娠の恐れがない
  ・現実の痛みにかえて、同性愛であることの悩みなどをおく
  ・「強姦されてバッドエンド」
 ・「強姦されてハッピーエンド」の誕生
  ・悪しき種子から良い実がなるという逆説
   ・「愛があるからOK」の精神論
    ・「セックスの快楽」による正当化
   ・第二層の自己同一化
  ・「三つの『~ない』」に接木されたイデオロギー
  ・少数者の情熱をかきたてたが、大規模な資源の割り当てを受けるには不十分
   ・同人市場という培地
 ・「甘々」の発生
  ・「三つの『~ない』」を当然と受け止め、別の痛みをおくことを拒否する
   ・パロディ的に回帰する「三つの『~ない』」
    ・男同士で結婚・妊娠出産
  ・「愛があるからOK」から「楽しい恋愛」への転換
   ・「愛」をアプリオリに善とすることを拒否
   ・同性愛の禁忌を拒否
  ・党から大規模に資源を引き出すことに成功
   ・スラッシュ・フィクションとの比較
   ・無から発生することはできなかった「三つの『~ない』」という前提
 ・二段階発展モデル
  ・少数者を強くひきつける第一段階、党から大規模に資源を引き出す第二段階
  ・二つの段階は、日付によってではなく、イデオロギーによって区切られる

・百合のイデオロギーの過去と現在
 ・吉屋信子的な百合
  ・女同士の親密さを、当然かつ必要なものとして描き出した
  ・状況の変化によって過去のものに
 ・疎外された者の百合
  ・例外的な者のあいだの特殊な関係
   ・「真紅の薔薇と砂糖菓子」
   ・同性愛の禁忌
  ・歴史的影響力、現在におけるイデオロギー的な可能性、どちらも乏しい
 ・現代百合
  ・やおい・ボーイズラブからの影響を受ける
  ・党から資源の割り当てを受ける力に欠ける

・現代百合のイデオロギー的空白
 ・「同性愛」と「エス」
  ・政治化された「同性愛」
  ・「エス」を甦らせることは可能か
 ・やおいの場合
  ・アナルセックスの象徴性
  ・男女関係からの類推
 ・男女関係からの類推の可能性
  ・「擬似男性」の無理
   ・やおいにおける受と攻の権力均衡
   ・百合では擬似男性側に圧倒的に負担がかかる

・イデオロギー問題の解決に向けて
 ・新しいイデオロギー(第一段階)に必要とされるもの
  ・無象徴空間の開拓
   ・「お姉さま」だけの時代を終わらせる
   ・象徴の欠如から象徴の自由へ
  ・少数者への強い訴求力
 ・新しいイデオロギー(第一段階)が成し遂げるべきこと
  ・豊かな象徴空間の創出
  ・百合に対する肯定的な態度
   ・あくまで結果であり、イデオロギー自身が肯定的である必要はない
 ・新しいイデオロギーを創り出すために
  ・事実と見えるものに対する反逆
   ・やおいにおけるアナルセックス
   ・懐疑では十分ではない
   ・「リアリティ」と称する敗北主義
  ・既存のイデオロギーとの相互支援
   ・ギャル作品
   ・やおい・ボーイズラブ

・おわりに
 ・百合が楽しく、良いものであるというアプリオリな確信

 未整理の部分は多々あるが、大筋はこんなところだと思う。
 まともに全部書いていたら半年潰れるので、「百合すと2」ではこれを6ページに圧縮する。…うーむ。

2月5日

 田辺聖子の「ゆめはるか吉屋信子」を読んでいる。
 誰がなんと言おうと、吉屋信子はブスである。しかもきわめて印象的な、遠慮なくブスと断言できる種類のブスである。それは、原節子の頭が大きいのと同じくらいには客観的な事実だ(嘘だと思ったら、原節子主演の映画を一本でもご覧になるとよい。私はあまりのことに眩暈がする思いだった)。
 原節子の頭は別に大きくないと論じることもできるだろうし、頭が大きいことをあげつらうこと自体を問題にすることもできる。それでも地球は回るし、原節子の頭は大きい。
 原節子の頭が大きいからといって、彼女が当代一の美人女優だったことを否定できるものはいない。両者は矛盾なく両立しうる。同様に、吉屋信子がある種の美しさを備えていたことと、彼女がブスだったことは、両立しうる。実際、吉屋信子はある種の美しさを備えていたと思う。なんの美しさも備えない人間をブスと呼ぶのは、逆に難しい。
 客観的な事実に抗議するより、それと並立する別の事実を主張するほうが、より説得力ある議論でありうるだろう。吉屋信子を美人と評した言葉は、そのように解釈すべきと思う。

2月4日

 今月11日のコミティア55では、香織派はT16aにて読者諸氏のお越しをお待ちしている。

 L作戦。
 性能が出ない。シーク範囲50MBのアクセスタイム10.25msはフロックだったような気がしてきた。

2月3日

 信頼できる情報筋によれば、「鋼鉄天使くるみ 弐式」はTVK系列(つまり「To Heart」と同じ系列)で放映されることが決まったという。

 「鋼鉄天使くるみ」のOAV、「サキちゃんスターになる」を見た。
 百合(片思い)なのはいいとして、百合になにも感じるところのないユーザは、どうやってこの話を面白がるのだろう。馬鹿なものを好む人が観るものなのだろうか(そうかもしれない。そういえば、介錯の描く話はみな馬鹿だ)。

 「百合すと2」のために、イデオロギー問題を本格的に論じる準備をしている。
 まず、マスメディアにおけるイデオロギーの存在を示し、次にそのイデオロギーに要求されるものを論じ、最後に百合の新しいイデオロギーを展望する、という筋立てを考えてみた。
 が、やってみると、「イデオロギーに要求されるもの」についての論拠を揃えるのが不可能だということがわかった。「少女小説・まんがに出てくる金持ちの娘が意地悪である率は、戦後の高度成長期に跳ね上がった」という仮説を検証するだけで論文になる。うーむ。

2月2日

 今野緒雪の「マリア様がみてる いとしき歳月(前編)」を読んだ。
 普通の学園物とほとんど変わらないような気が。それにしても、後編が翌月発売でないのは何故。

 今日のソ連:
 ミハイル・S・ヴォスレンスキーの「ノーメンクラツーラ」、1981年10月発行(底本は1980年)。
 言わずと知れた名著である。質も量も、圧巻、だ。
 西側のソ連シンパを意識してか、マルクス主義の用語と概念が頻出するので、マルクス主義に馴染みのない読者には少々辛いかもしれない。が、いまこの本を読もうとするような人なら問題ないだろう。

2月1日

 眠い。きゅう。

 

今月の標語:

すべてを知ることは、すべてを赦すこと

――フランスの諺

 

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