ベトナム戦争はテト攻勢が転回点になった。
といっても、ベトナムの戦場では、注目すべきことはなにも起こらなかった。例によって北は甚大な被害を出し、南の戦線は小揺るぎもしなかった。決戦は、アメリカのTVと視聴者のうえで起こり、そこでアメリカは最終的に敗北した。
現在では、「メディア上での決戦」という概念はありふれたものになった。もちろん現在でもメディアは重要な戦場である。ボスニア紛争では、クロアチアがメディア工作で先手を取り、そのまま終始優位に戦いを進めた。
そして今、新たな決戦場が発見された。捕虜収容所だ。
日本のメディアではまったく報道されないが、この写真をご覧になれば、アメリカの敗北がはっきり読み取れることと思う。
写真にあるような虐待は重大な罪だが、罪だけならまだ決定的ではない。決定的なのは、この写真に写っているアメリカ人たちが、間抜けで、想像力に乏しく、頼りない人々に見える、ということだ。征服者にとってこれは最悪のイメージである。残虐な征服者からは逃げ出したくなるが、頼りない征服者には逆らいたくなる。