時空を超えて旅する三姉妹が、ゆく先々で輝かしい友情(もちろん相手は女)を結んだり、姉妹愛を確かめあったりする話である。
こうしてあらすじを書けば、素晴らしい百合に見える。が、事実はそれほどでもない。見どころはあるが不完全燃焼だ。特に後半(2巻)が悪い。眼鏡男が登場するシーンはほぼ全部不要だ。百合的に不要なだけでなく、物語上の害悪でもある。
眼鏡男は、三姉妹の葛藤を先取りして演じている。こういう先取りは、葛藤を途方もなく安っぽくする。問題を、発見されるものではなく、予定されたものにしてしまうからだ。これはちょうど、俳優が、相手役のアクションより先にリアクションをしてしまう光景に似ている。「これは筋書きのある作り物です」ということを、声高に雄弁に表現している。
とはいえ、捨ててしまうにはあまりにも惜しい。寛容な心で、よいところを楽しみ、悪いところに目をつぶって読みたい。esbooks