2004年10月19日

NORTHWIND

 わけあって『NORTHWIND』というエロゲーをやっている。
 ある映画監督の、「花は芝居をしません」というセリフが印象に残っている。時代劇のセットの庭に、主人公の心情の隠喩として、庭に白い花を植えた。主人公は見せ場で、その花を見つめながら芝居をした。舞台監督は、その花をフレームに入れるべきだと考えたが、監督は「花は芝居をしません」と言い、フレームに入れなかった。
 花を隠喩に使うのは非常に危険なので、この監督の判断は正しかったと思われる。が、「花は芝居をしません」というのは、あまり理由になっていない。それなりの被写体を、うまく編集でつないでやれば、隠喩として効果的に使える可能性がある。花、それも時代劇のセットのなかで目立てるような花だからこそ、まずいのだ。
 おそらくこの監督は、「花を隠喩に使うなんぞありえない」と思ったところを、「花は芝居をしません」と言い換えたのだろう。だとすると、興味深いのは、「芝居をしません」という理由付けをもってきたことのほうだ。
 この監督にとっては、「芝居」こそスクリーンに映すべきものであり、他の一切は芝居の引き立て役だったはずだ。少々貧しい映画観のように思えるが、そうひどく外してもいない。映画はなによりもまず、エンドマークまでのあいだ観客を飽きさせてはならないが、それには俳優の存在感に頼るのが安全牌だ。
 というわけで、「花は芝居をしません」というセリフそれ自体は、さほどレベルの高いものではない。
 が、『NORTHWIND』をやりながら私は、「風景は芝居をしません」と言いたくなった。風景のアニメ動画が連発されるが、人物はアニメどころではない。
 この点、きわめてF&Cらしい作品だといえる。F&Cの作品は立ち絵のポーズが少ないことで名高いが、この作品も例に漏れない。芝居軽視はシナリオ軽視につながり、冒頭がまったくツカミになっていない。いつものF&CならOPアニメの余韻でいくらかごまかせるが、OPアニメがない『NORTHWIND』はいっそう厳しい。
 しかし、私がこうしてなにを書いても、シナリオ完成前に作画が作業に入るなどという狂気の世界には届かないだろう。そこで、一言でまとめて終わりにしたい。
 『NORTHWIND』はクソ長い。

Posted by hajime at 2004年10月19日 06:22
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