こんな話をバラされるということは、堤はもう死に体だ。元首相が逮捕されても驚かない世代の私だが、堤義明の沈む日が来るとは夢にも思わなかった。たかが株所有比率の虚偽記載ごときで、と思っていた。が、どうやらこの先、巨大な連鎖反応が待っているらしい。
30年前の株式市場は、現在の基準でみれば、デタラメきわまる代物だった(現在でも欧米の基準でみればデタラメだが)。インサイダー取引と総会屋は当たり前だった。当時の感覚では、株式保有比率をごまかすくらいは十分ありうることだった。その後、徐々に市場への監視の目が厳しくなっていったとき、ゆでガエルのように修正の機会を逃したのだろう。
なぜ堤はゆでガエルになってしまったのか? 誰かが愚かにも古いやりかたに固執したのか? 単にみんな、そんなことを忘れていただけなのか? それとも、ある程度までは、最善手・絶対手を積み重ねていった結果なのか? このテーマに注目しながら、堤の沈没を観察してゆきたい。