兄妹が結婚している戸籍を作るのも楽ではないが、姉妹が結婚している戸籍はさらに難しい。今月11日の設例を、もう一段ひねる必要がある。
CD夫妻はXに会ったことがなく、出生証明書および出生届には性別が誤って記載された。EF夫妻はほどなく、Xの戸籍に性別が誤って記載されていることに気づいたが、海外在住であったため、現地の書類を訂正しただけで、日本の戸籍はそのまま放置した。
成人したときXは、自分がAB夫妻の実子であることと、自分の戸籍に性別が誤って記載されていることを知っていた。
XとYは知り合って、結婚することにした。このときXYは、Xの戸籍の誤記を利用し、Xを夫としYを妻とする婚姻届を作成して提出し、受理された。そのあとでXは、自分の戸籍の訂正を家庭裁判所に申し立てた。
戸籍の訂正だけが行われた場合、XYは姉妹かつ夫婦であるという状態が生じることになる。これは可能か?
結論からいえば、法務省民事局の判断で決まる。
法律には、同性間の結婚を無効とする明文の規定はない。XYの婚姻を無効とするには、XYの意思が「婚姻をする意思」(民法742条1号)ではないと解釈する以外に方法がない。もし法務省民事局がこの立場を取ったら、XYの婚姻は最初からなかったことにされ、戸籍もそのように訂正される。
この判断について、XYは国を相手取って裁判で争うこともできるが、ほとんど勝ち目がない。裁判所は法務省民事局の判断を追認する傾向があるし、憲法や法律からXYに有利な条文を見出すこともできない。
法務省民事局が、政治問題になりそうな判断を回避し、Xの戸籍の訂正だけを行うことを認めれば、XYは姉妹かつ夫婦であるという戸籍ができる。
が、XYの婚姻によって不利益をこうむる者は誰でも、XYの婚姻は無効であると主張して裁判で争うことができる。さらに近親婚でもあるので、親族あるいは検察官が婚姻の取消を請求したら、XYにはどうしようもない。
というわけで、道は険しいうえに、いつまでたっても安全にならない。もし実際にXYのような立場にいる姉妹がいるとしても、こんな真似は到底お勧めできない。