2005年09月12日

H. A. キッシンジャー『外交』

 まだ上巻しか読んでいないが、途中で忘れそうなのでメモしておく。
 たまには親切に説明してみる。キッシンジャーとは誰か。
 ニクソン政権のもとで大統領補佐官などを務め、外交を担当。政権入りするまでは19世紀ヨーロッパ外交史の研究者。国務省の官僚機構の頭越しに外交を行った。ナチスの迫害を逃れてアメリカに移住したユダヤ系ドイツ人。おしゃべり好きで著書多数。
 いかにもヨーロッパ人らしく、ウィルソン大統領への愛憎に満ち満ちている。キッシンジャーの愛憎の観点から、上巻の内容を私なりに要約すると、こうなる――
 「『国家間の問題は、たとえ国家的生存にかかわる問題であろうと、力ではなく法によって解決することができるし、すべきである』。この途方もない夢は、夢物語ではなく、20世紀の現実を形作った」
 キッシンジャーの伝記()によると、ナチズムの台頭をまのあたりにしたキッシンジャーは、イデオロギーの力を重視するようになったという。本書でも、「アメリカ世論が馬鹿だったから」という書き方よりも、「指導者がそう信じたから」という書き方のほうが目立つ。ウィーン体制についても、そのイデオロギー的な結束を何度も強調している。

Posted by hajime at 2005年09月12日 00:36
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