2006年07月23日

少コミを読む(第5回)

 少コミ第16号を読んだ。
 初めてまともな付録だった。キキララとハローキティのビニール袋である。これまではずっと、いったい誰が使うのかと思うようなものばかりで、付録のぶんの金返せと言いたかった。

 
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』新連載第1回
 最近の少コミでは、わかりにくい設定が流行中なのだろうか。『愛を歌うより俺に溺れろ!』も、途中から読んだら設定がわかりにくくて困ったが、新連載第1回を読んでわかりにくいと感じるのはまずい。
 ドラえもん級の道具をほいほいと作る発明家の少女(しずか)が主人公である。それだけならわかりやすい。だが、この第1回を読んだかぎりでは、彼氏役(はじめ)が総理大臣の息子である必然性が見つからない。第2回以降で生きてくる設定なのだろう。これのせいで設定がわかりにくくなっている。
 思い出そう。少コミはジャック・ハンマーの世界だ。『次回ノ読者ニ尽クス者ガ、今回シカ認メナイ私ニカナウワケガナイ』。今回を次回のための踏み台にしてはいけない。
 設定がわかりにくいと、画面のわかりにくさが倍増して感じられる。情況説明と心理描写を欲張りすぎている。説明や描写は徹底的に切り詰め、キャラの言動で伝えるべきだ。
 採点:★☆☆☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第23回
 まず扉の誤植について。「22th」という英語はない。そのうえ回数が間違っている。前回が第22回だ(こちらの扉はちゃんと「22nd」と書いてある)。ついこのあいだも連載回数の間違いを見かけた。連載回数を数えるのがそんなに難しいことなのだろうか。
 主人公()に別れを切り出されたが発作を起こして倒れる。いったんは助かったかに見えたが、紛れのない形で死亡予告されているので、次回で死ぬのだろう。そのあいだ、主人公の本命()は他の男に言い寄られている。
 次回、どれくらい照の言い分を押し出せるか。そこで作品全体のよしあしが決まるだろう。
 採点:★★☆☆☆
 
池山田剛『萌えカレ!!~番外編~』読み切り、ただし完結した連載の番外編
 主人公とその彼氏役がいちゃいちゃしている後日譚である。
 ネームが実に気持ちよく流れる。実力をしみじみと感じさせる。
 採点:★★★☆☆
 
・藍川さき『恋愛上々↑↑』新連載第1回
 この作者は、このあいだはネームがあまりにもひどくて何事かと思ったが、今度は安心して読める。
 二択のハーレムものである。男二人は兄弟で、奔放な弟が一歩リード(というよりはすでに確定)している。
 男の魅力の出し方が、派手さはないものの、しっかりしている。次回は兄がアピる番だろうが、どうやってくるか楽しみだ。
 採点:★★☆☆☆
 
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第3回
 今回やっていることを列挙すると、「主人公がバスケ部のマネージャーになる」「彼氏役の性格を描く」「彼氏役の対抗馬のポジションを見せる」と、なかなか忙しい。なおバスケ部は彼氏役の部活である。
 忙しいはずなのに、ぴたりぴたりと収まる。これが構成力というものだろう。が、次回以降の展望が見えないのが気になる。
 採点:★★★☆☆
 
・天野まろん『ケモノに→没落お嬢様』読み切り
 これもまた設定がわかりにくい。
 主人公に2つの属性がある。「痴漢・変態・ストーカーを強烈にひきつける体質」と、「家が破産して貧乏になったばかりのお嬢様」だ。その2つに相関関係があるということになっているらしいが、判然としない。つまり、わかりにくい。
 その主人公が、いいと思える男を見つけて、自分の欲望を初めて自覚する、という話である。少コミの伝統を取り入れようとしたのかもしれないが、こなれていない。
 彼氏役が今回もまた吊り目のオレ様だった。徹底的にこのタイプの男だけで押し通すつもりだろうか。
 採点:★★☆☆☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第12回
 前回から引き続き、主人公(水樹)と彼氏役(秋羅)がいちゃいちゃしている。
 採点:★★☆☆☆
 
わたなべ志穂『ご指名! ホスト教師J』連載第2回
 話がダラダラしている。
 採点:★☆☆☆☆
 
・織田綺『Lovey Dovey』連載第2回
 いい男に絡まれる or つきあう→嫉妬した女に意地悪される、という展開は安易なので禁止したい今日このごろ、読者諸氏はいかがお過ごしだろうか。
 構成に難がある。男二人をアピールするのに忙しく、主人公のアピールが弱い。
 新人ではないので、単行本になる程度には続くのだろう。どう主人公を押し出していくかが見所になりそうだ。
 採点:★☆☆☆☆
 
・陽華エミ『独占LOVEスクープ!』読み切り
 「超ナルシストの彼氏役」という面白い設定から、きっちり面白さを引き出している。妙なセリフやポーズがいちいち笑えて、しかも魅力がある。
 ネームの流れもいい。次が楽しみな新人として覚えておきたい。
 採点:★★★★☆
 
・山中リコ『桃色パンチ』最終回
 ちゃんと話も落としているし、ネームの流れもよく、特にまずい点は見当たらない。が、内容が薄い。
 採点:★☆☆☆☆
 
第6回に続く

Posted by hajime at 2006年07月23日 02:12
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