2006年07月22日

1492:55

 私は2chのレズ声優スレを研究した。その結果、スレでよく話題になる声優だけは、ぼんやりとイメージできるようになった。
 レズ声優スレの常連声優のなかから選ぶという条件で、主役級4人を妄想キャスティングしてみる。
 
橋本美園:生天目仁美
 次点:田中理恵
 美園は、他の三人とは少しずれた、世俗的な次元にいる。世慣れた感じをふりまくのに長けた役者、ということで、このようになった。
 ひかるとの絡みを重視すると、次点のほうが魅力的だ。ここでは作品全体の演出を重視したので、次点にとどまっている。
 
平石緋沙子:釘宮理恵
 次点:川澄綾子
 ひかるより背が高く聞こえ、緊張感があり、幼さも出せ、美人を演じて説得力がある、という条件で選ぶとこうなった。
 次点には、うまく言えないが、なにか大切なものがある。つまり、カンだ。
 
設楽ひかる:能登麻美子
 次点:田村ゆかり
 次点のほうが面白いので先に。
 この人の演技には独特の距離感覚がある。その距離感覚を生かせる役だと面白い。とはいえこの役は、声質の面で辛いので、現実にはこういうキャスティングは難しそうだ。妄想キャスティングならではの醍醐味といえる。
 面白さをあきらめて順当に選ぶと、ご覧のとおりだ。『ヤミと帽子と本の旅人』の葉月のイメージである。
 
波多野陸子:こやまきみこ
 次点:落合祐里香
 声質の条件(すごいアニメ声)が厳しいので、この二人の一騎打ちになった。
 感情表出の際の衝撃力を重視して、この結果となった。あまりフォトジェニック(声だからサウンドジェニック?)でない声のほうがいいので、もし衝撃力が十分なら、次点のほうをとりたい。
 
 やってみると、なかなか厳しい。釘宮と川澄は最近ではスレ常連から遠ざかっているが、ほかに緋沙子にあてられる声優が見つからなかった。
 それでもまだかなり不満がある。こやま―能登―釘宮という配置は、「いかにも」すぎる。作品解釈としてベタすぎる。「なんだこれは」という予想外の配置で、作品に別の光を当てるようなキャスティングがしたい。
 というわけで次回、スレ常連でない外国人選手を2人投入してみる。

 
                        *
 
 陛下は、ほとんど一瞬で、気持ちのありようを切り替えられた。私の意志をひと潰しにしようするかわりに、獲物を追うときのように、視野を広く、身を軽くなさった。
 気持ちが切り替わると、私の上からどいて、手をさしのべてくださる。私はその手をとった。けれど支えにはせず、自分で身を起こす。陛下が車からお降りになるとき、私の手をとるだけで、支えにはなさらないのと同じように。
 私が座布団の上に座りなおすと、陛下はそのたおやかな御手で、私の腰に触れてくださった。
 「ひかるちゃんのここ、ちょっと細くなったかなー?」
 そこはさっき陛下のおみ足に挟まれていたところだった。くすぐったさに、身体が小さく震える。
 「ではこれからは、細くなるように務めます」
 「ひさちゃんを引き取るっていうことは、実家で預かってもらうの?」
 「いえ、一緒に暮らします」
 耳のすぐそばで、陛下はかすかに笑い声を漏らされた。
 「ひかるちゃんは、私のことはわかってるみたいだけど。自分のことも、もうちょっと、わかんなきゃねー。
 私がひさちゃんのこと性的虐待してるっていうけど、それはひかるちゃんだって五十歩百歩なんだよ?」
 こんな見方があるとは夢にも思わなかった。言われてみると、反論できない。
 「誘ったのは私ですが――疑いを晴らす立場にないということは存じております」
 陛下は私の側を離れて、ご自分の座布団にお戻りになった。
 「でも自分は正しい、って思ってるでしょ? あぶないなー。
 ここって、私がなにしても筒抜けなの。かならずメイドさんの誰かが聞いてるし、そしたら橋本さんに報告がいくし、やばそうなことなら理事会までいくの。ひさちゃんのこと、そりゃちょっとはいじめるけど、もし本当にひどいことしたら、止めてもらえるようになってるの。
 でも、ひかるちゃんとひさちゃんの二人暮らしだったら、どう? 誰も止めてくれないよ」
 陛下が幼い日々を過ごされた、子供の家のことを思い起こす。
 陛下のように完全な捨て子としてやってくる子供は、あまりいない。たいていは、緋沙子のように親との関係に問題があるか、あるいは親の暮らしが破綻しているか、どちらかだ。そういう子供たちとつきあっていれば、止めてくれる人がいないことの恐ろしさを、身にしみて知るようになるのだろう。
 そんな世界に触れたことのない私には、思いもよらないことだった。私はぐらついた。
 そのとき背後から声がした。
 「恐れながら申し上げます。私はひかるさまを信じます」
 緋沙子だった。
 陛下の応対は鋭かった。
 「ひさちゃんは、信じるだけでいいんだもんね。ひかるちゃんには、責任があるんだよ」
 私は振り向いて、緋沙子に告げる、
 「――ありがとう」
 「なにもかも設楽さまの思うようになさってください」
 追い討ちをかけるように陛下は、
 「ひかるちゃんて、エッチなことだと、止まらないよね。服の匂いをかいだりとか。
 ひさちゃんのことも、そうなっちゃうんじゃない? 自分でもわけがわかんないけど、やめられないの、悪いこと」
 けれど私はもうぐらついてはいなかった。
 私の背中はきっと本当に、陛下のお心につながっている。陛下がなにを本当に求め願っておられるのか、まるで耳打ちされているようにわかる。その願いの強さが、私の力になる。
 「平石さんを傷つけないという自信はござません。恐れています。ですが、この恐れから逃れようとは思いません。
 私は護衛官として陸子さまのお命を預かっています。私の務めが至らず、陸子さまの身に万一のことが起こるのではないかと、恐れております。ですが、陸子さまが私を信じて、私に任せてくださるかぎり、この恐れから逃れようとは思いません。
 緋沙子が――」
 間違えて、二人のときのように名前で呼んでしまった。一瞬迷い、押し通すことにする。
 「――緋沙子が私を信じてくれるなら、私は逃げません。
 それに…… 憚りながらお尋ね申し上げます。
 たとえどんなに傷つけられることになっても、一緒にいたかった――そのようにお考えあそばしたことは、ございませんか?」
 陛下はすぐにその意を汲み取ってくださったようだった。たちまちお顔が気色ばみ、御手が脇息を強くつかむ。
 「……一緒にって、誰と?」
 「陸子さまをお産みになったお母様と」
 陛下のお身体がバネ仕掛けのように前に跳ね、風のように平手打ちが飛んできた。
Continue

Posted by hajime at 2006年07月22日 00:10
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