2006年09月26日

ノベルス・文庫作家人気番付

 本の実売部数は通常わからない。しかし、同一レーベル・同一発売日のノベルスや文庫なら、どれがどれより売れているか、わかる場合がある。情報源は、トーハンまたは日販調べの週間ベストセラーリストだ(書店調べは論外なので要注意)。たとえば、このリストをみれば、『灼眼のシャナ(13)』『とらドラ!(3)』『アスラクライン(5)』の順に売れていることがわかる。さらに、ランク外のタイトルも調べることができる。上の例では、『撲殺天使ドクロちゃん(8)』が同一発売日でランク外にある。

 この情報を蓄積・分析すれば、「誰が誰より売れているか」を、単一の数字として表せるだろう。

 以上の仮説にもとづいて、私は数年前、BL作家人気番付というものを作った。このときはBL関係レーベルの情報だけを入力した。また、実験として作ったため、持続的に運用しつづけることができないシステムだった。

 今回は本番である。私は、1万件の書誌情報と、800件のベストセラーリストを入力した。

 BL作家人気番付のときとはレーティングの計算方法が違う。また、情報の精度がまだ荒いので、今後さらに精査する必要がある。しかし暫定値を出すには十分だろう。

 まずワースト20から。

吉村達也 256   ちょっと信じられない値だが、計算間違いはまだ見つかっていない。
田中光二 462  
西澤保彦 531  
司馬遼太郎 560   新装版はたいていランク外なので、昔の作家は悪い値になる。
小池真理子 593  
梓林太郎 600  
菊地秀行 620  
太田蘭三 627  
木谷恭介 628  
東海林さだお 647  
吉村昭 666  
北方謙三 668  
太田忠司 670  
鳥羽亮 681  
逢坂剛 684  
中里融司 693   ラノベ系は通常高い値になるはずなので、この値は相当なもの。
高田崇史 698  
二階堂黎人 708  
篠田真由美 715  
村上龍 718  


  そしてベスト20。

あさぎり夕 1319   BL
上遠野浩平 1311   代表作・ブギーポップシリーズ
賀東招二 1283   代表作『フルメタル・パニック!』
時雨沢恵一 1283   代表作『キノの旅』『リリアとトレイズ』
神坂一 1264   代表作『スレイヤーズ!』
斑鳩サハラ 1239   BL
宮部みゆき 1216   よろず
佐伯泰英 1201   時代小説
高橋弥七郎 1176   代表作『灼眼のシャナ』
築地俊彦 1167   代表作『まぶらほ』
横山秀夫 1151   代表作『半落ち』
ごとうしのぶ 1150   代表作・タクミくんシリーズ
秋月こお 1147   代表作・富士見二丁目交響楽団シリーズ
村山由佳 1147   代表作『おいしいコーヒーのいれ方』
今野緒雪 1144   代表作『マリア様がみてる』
天童荒太 1142   代表作『家族狩り』
栗本薫 1137   代表作・グイン・サーガシリーズ
石田衣良 1101   代表作『池袋ウエストゲートパーク』
鎌池和馬 1100   代表作『とある魔術の禁書目録』
ヤマグチノボル 1096   代表作『ゼロの使い魔』


 完全なデータの公開は年内を目指している。

 以下、想定問答集。

Q: 西村京太郎は? 内田康夫は?

A: 彼らが書くレーベルのレーティング水準は非常に低い。まったく売れない本を1冊でも出すと、レーティングが大きく下がる。両者とも、新装版やエッセイなどの売れない本を数冊出しており、そのためレーティングが下がっている。

Q: レーベルのレーティング水準はどのように決まるのか?

A: 2つの要素で決まる。第一に、ピラミッド全体の大きさ。第二に、複数レーベルにまたがって書いている作家を通じての、レーティング水準の流出・流入。
 週間ベストセラーリストに多くの作家を入れているレーベルは、ピラミッドが大きく、その頂点も高くなる。
 複数レーベルにまたがって書いている作家を通じて、ピラミッド同士の相対的な上下関係が明らかになり、それがレーティング水準へと反映される。
 トラベル・ミステリーを売るレーベルは、ピラミッドが小さい。また、赤川次郎などを通じてレーティング水準の流出が起きている(赤川次郎はコバルト文庫でも書いている)。

Q: 発売日にどかんと売れるレーベルと、キヨスクで売れるレーベルを、同列に並べることはできないのでは?

A: 人気は惰性ではない。

Posted by hajime at 2006年09月26日 23:57
Comments