2006年10月03日

カジミェシュ・モチャルスキ『死刑執行人との対話』(恒文社)

 ユルゲン・シュトロープはナチスの幹部である。1943年、ワルシャワ・ゲットーに立てこもった7万人(推定)のユダヤ人を狩り出して、5万6千人を捕らえた(差は戦死者)。終戦時には親衛隊中将兼警察中将だった。戦後は戦犯として裁かれ、1952年にポーランドで死刑を執行された。
 本書の著者モチャルスキは、シュトロープと同じ監房で約250日を過ごし、彼の回想に耳を傾けた。モチャルスキが何者かといえば、ポーランドのレジスタンス(国内軍)の元将校だ。そんな英雄がなぜ監獄にいるのかといえば、スターリンにとって自分以外の英雄はすべて邪魔だったからだ。
 ドラマというほかない舞台である。といっても、なにも起こらないドラマだ。誰も悔い改めず、和解も起こらない。だが読み始めたら止まらない。7andy

Posted by hajime at 2006年10月03日 01:19
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