政治家の妄言にいちいちマジレスするほど暇な人は、世界中のどこにもいない。麻生太郎外相が北方領土の面積分割をつぶやいたときには、世界中の誰もが見事にスルーした。日米安保体制が続くかぎり、北方領土問題の解決は有害無益だ。
ホワイトカラー・エグゼンプションとやらも正気を疑う妄言だが、ずいぶんしつこく続いているのでマジレスしてみる。
なんの予備知識もない新人が現場に放り込まれたその瞬間から、生産性のある仕事ができる業務など、この世にそうそうあるものではない。よほどの単純作業でも、少なくとも1時間は、作業の説明と慣熟が要る。これを仮に教育費用と呼ぶことにしよう。
教育費用は労働者の頭数だけかかる。もし時給が一定なら、多数の労働者を短時間働かせるより、少数の労働者を長時間働かせるほうが、同じ作業量を安あがりにこなせる。
ブルーカラーよりもホワイトカラーのほうが教育費用は大きい。また、コミュニケーションのコストを減らせるという点でも、少数の労働者を長時間働かせるほうが安くあがる。
少数の労働者を長時間働かせるほうが安くあがる――この法則を裏付けるのが、ベンチャー企業の労働状況だ。
人手が余っていて残業ゼロでしかも儲かっているベンチャー企業など、めったにない。ほとんどのベンチャー企業が人手不足で長時間労働なのは、そうでなければ生き残れないからだ。もし残業ゼロで高い生産性をあげられるのが普通なら、残業ゼロを掲げて実践するベンチャー企業が、それこそ掃いて捨てるほどあるはずだ。
というわけで、ホワイトカラー・エグゼンプションとやらがもたらすのは、長時間労働に苦しむ労働者の増加、失業者の増加、そして景気の減速である。妄言というほかない。