2007年03月05日

少コミを読む(第19回・2007年第7号)

 百合物件を求める読者諸氏にお知らせする。
 少コミ最新号(第7号)から短期集中連載の『あまい*すっぱい*ほろにがい』が、百合だ。
 では第7号のレビューにいこう。

 
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』連載第4回
 あらすじ:主人公が彼氏役に惹かれる。
 主人公があれこれと妄想を繰り広げている。それはいい。問題は、その妄想と現実のあいだに、たいしたギャップがないことだ。このギャップで味を出し、彼氏役の魅力を出すべきところなのに、話全体が主人公の妄想で染まっている。
 採点:☆☆☆☆☆
 
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第10回
 あらすじ:主人公(水結)が彼氏役(蒼以)の家に押しかける。
 予想どおり、乃亜の悪行三昧の追及には話は進まず、水結も夏壱も水泳部の活動再開を受け入れた。
 説明が多いせいか、構成がギクシャクしている。
 採点:★☆☆☆☆
 
・千葉コズエ『あまい*すっぱい*ほろにがい』新連載第1回
 あらすじ:大人びた同級生の彼女役(夏映)に惹かれる主人公(紗和子)。夏映にはつきあっている男がいるが、紗和子の恋の障害にはならない。
 百合は、純度が高いほど、技術的に難しくなる。忌まわしいドヘタクソの臆病者は、恥知らずにも性転換や女装をやらかすが、それは技術的に難しいところから逃げるためだ。むやみに純粋さに殉じるのは無謀な英雄主義であり、好ましいことではない。しかし性転換や女装は、敗北主義者の敵前逃亡である。彼らはそもそも、そこにいるべきではない。
 この作品の場合は、夏映に男がいるという形で純度を下げている。少コミという雑誌の性質からいって、悪くない選択だ。
 (高純度の技術的な難しさについて。
 たとえば、夏映のつきあっている相手を女にしてみよう。学校教師あたりが適当か。この場合、ライバル同士が同じ地平でぶつかることになり、高度な戦術論が必要になる。この戦術論は非常に面白いものだが、不慣れな読者が納得できるように展開することが技術的に難しい。
 夏映のつきあっている相手が男なら、主人公と同じ地平には立たない、ということにできる。高度な戦術論は不要でありつつ、ゆるやかな緊張感や味を出すことができる)
 純度を下げたのはいいとして、悲恋オチまで用意したのは逃げ腰すぎる(この逃げ腰感のためマイナス1点)。気まずくなって別離→数年後に再会して再チャレンジしたところで完、というオチを希望する。
 採点:★★★★☆
 
池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第14回
 あらすじ:彼氏役()のアピールタイム。主人公と司が一緒にいるところを、司を崇拝する後輩()が目撃する。
 前半のBLじみた展開が、やけに生き生きしているように思えるのは、私の気のせいだろうか。
 採点:★★☆☆☆
 
・麻見雅『大神さん家のオオカミくん』連載第2回
 あらすじ:主人公が彼氏役と結ばれる。しかし主人公と彼氏役は実は血がつながっていた?
 私には、この作者のまんががまったく理解できない。
 採点:なし
 
しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第17回、次回最終回
 あらすじ:彼氏役は主人公を伴って海外留学に行くつもりだった。しかし彼氏役の父親が介入し、留学を機に主人公と別れさせようとする。
 キリよく終わりそうな雰囲気だ。
 採点:★★☆☆☆
 
織田綺『LOVEY DOVEY』連載第16回
 あらすじ:主人公(彩華)と当て馬()が風紀委員に就任。就任イベントの際、涼は、かぶっている猫を脱いだ彩華を見て、惹かれる。
 構成がなんだか雑だ。
 採点:★★☆☆☆
 
くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第14回
 あらすじ:ウサギ型ロボットのUSAが少年型に変身。
 今回も冴えている。
 ふと思ったが、デスマスでしゃべる彼氏役(はじめ)は珍しい気がする。私の身近にいる某人物を連想してしまい、むずがゆくなる。
 採点:★★★☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第37回
 あらすじ:の母親に「繭が好きなんです」宣言。
 繭が逞の絶望的な容態を知らされる方向へと展開するつもりか。前回の調子だと、「逞は治って長生きしました、めでたしめでたし」というオチになりそうだが(ああいうことをされたら、サル以外はこういう不信感を抱く)。
 採点:★☆☆☆☆
 
・美桜せりな『落窪ものがたり』読み切り
 あらすじ:落窪物語の主人公が道頼に迫られる部分。
 できるだけ現代の言葉を使うのは当然とはいえ、いくらなんでも「皇族」はひどい。「帝」くらいわかれと要求していい。
 こうして抜粋をまんが化されてみると、平安貴族の物語文学は生々しい話ばかりだと気づかされる。抜粋部分から先の展開が生々しすぎて、ここで切るしかないと思わされるのだ。氷室冴子がやったように、嫋々としたところを切って、おおまかな因果関係だけを使ったほうが面白くなるかもしれない。
 例によって大ゴマが無駄に多い。大ゴマを削って、平安貴族の暮らしぶりを紹介するほうがいい。
 採点:★☆☆☆☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第25回
 あらすじ:秋羅が姫コンテストを放棄して水樹のもとへ。
 グダグダだった。
 採点:★☆☆☆☆
 
・白石ユキ『純情ストレンジ☆』読み切り
 あらすじ:よくわからない。
 前提としてまず、この作品世界の女には「フェロモン」という能力がある。彼氏役はそれを感知する能力がある。そして主人公はそのフェロモンに乏しい――などという設定をうだうだと書き連ねても、なにがどうなっているのか一向によくわからないのだが、実際よくわからない話なのだ。
 絵はいいが、まんがになっていない。
 採点:★☆☆☆☆
 
第20回につづく

Posted by hajime at 2007年03月05日 18:27
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