2007年03月22日

少コミを読む(第20回・2007年第8号)

 第8号の付録は別冊である。読み切りが6本(そして4コマが2本)の196ページ。
 別冊で一番面白いのは藤森千聖『ゴシック彼氏』(採点:★★★☆☆)、一番変なのは水瀬藍『無敵のLOVEミッション』(採点:★☆☆☆☆)。どうせ付録なのだから、中途半端に面白いものよりは変なものが読みたい。半端でなく面白ければ本誌に載るのだろうし。
 では第7号のレビューにいこう。

 
池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第15回
 あらすじ:彼氏役()が主人公()に告白。
 画面の勢いがよく読ませる。巻頭カラーなので気合を入れたか。
 話のほうは、司がまたしても翠を傷つける展開か。
 採点:★★★☆☆
 
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』連載第5回
 あらすじ:主人公と彼氏役の絡み。
 私は、自分以外の現役少コミ読者としゃべったことがない。元読者なら、少しはある。みな、少コミ読者だった過去の自分を、ささいな子供っぽい愚行として馬鹿にしていた。
 そういう人はみな、車谷晴子のような作品が好きだったのだろう。
 私はそういう「成長」が嫌いだ。9歳のときに読んだ『ドラえもん』は素晴らしかったし、いま読んでも素晴らしい。すぎ恵美子の作品も素晴らしい。それを「子供の読むものだから」と馬鹿にするのは、およそ物事を楽しむことを知らない馬鹿だ。こういう手合いには、柳田理科雄の『空想科学読本』でもあてがっておこう。
 駄目なものは、「子供の読むものだから」駄目なのではない。子供が見落としやすい種類の駄目さがあるだけだ。
 自分の眼力のなさを、「子供の読むものだから」と言い訳するのはやめよう。あなたがたとえ10歳であろうと、基本的な部分では、60歳の目利きと同じ眼力で読むことができる。60歳に敵わないのは、トリビアな知識の部分だ。「これはあれのパクリだね」という判断では敵わない。だがそれはあくまでトリビアだ。シェイクスピアはパクリだらけだが、現在の評価はあのとおりだ。
 (「パクリだから」とケチをつける手合いの言うことは無視していい。「これはあれのパクリだね」という判断は、年寄りの目利き連中がこっそりと共有する嫌ったらしい秘密だ)
 車谷晴子のような作品が好きなかたに申し上げる。
 まんがを楽しむことを、いまから意識してみてほしい。まんがの楽しさがどのように生じているか、考察してみてほしい。眼力を養うのだ。
 この努力は一生続けることができる、つまり、一生楽しめる。私はいまでも日々、自分の眼力のなさを悔やんでいる。
 採点:★☆☆☆☆
 
くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第15回
 あらすじ:主人公(しずか)と彼氏役(はじめ)が海へ。発明品が暴走してピンチが次々に。
 今回はやや切れ味が悪い。夢オチは難しい。
 採点:★★★☆☆
 
・千葉コズエ『あまい*すっぱい*ほろにがい』連載第2回
 あらすじ:夏映とその男の馴れ初め
 3回連載かと思っていたが、もっと続くらしい。のんびり進んでいる。3回連載のうち1回を割いてこんな話をやるようでは腰が引けすぎだ。
 採点:★★☆☆☆
 
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第11回
 あらすじ:主人公(水結)が風邪をひいて大会を棄権する。
 作者急病だろうか、画面がスカスカだ。
 採点:★☆☆☆☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第26回
 あらすじ:秋羅の昔話。
 グダグダしている。
 採点:★★☆☆☆
 
・天音佑湖『メガネに恋して・』読み切り
 あらすじ:メガネフェチの主人公が、彼氏役のコンタクトレンズを壊してしまう。かわりに眼鏡をかけさせたらアラ素敵。
 画面が華やかで魅力がある。
 採点:★★★☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第38回
 あらすじ:の部屋に夜這い。
 の使い方がぎこちない。
 連載を引き伸ばしにかかっているような展開だが、少コミの相場では残り回数はあと20回かそこらしかない。闘病や離れ離れなどの波乱万丈はあまりやらずに、あっさりとまとめるつもりだろうか。
 採点:★★☆☆☆
 
・古賀よしき『ドキドキを頼むよ』読み切り
 あらすじ:女にモテて片っ端からつきあうが恋をしない彼氏役。その彼氏役に、毎日お弁当を作って食わせる主人公(誰が作っているかは内緒)。
 発想、構成、画力いずれも優れている。ただ、彼氏役の魅力はもう少し出せるはずのところだ。
 採点:★★★★☆
 
織田綺『LOVEY DOVEY』連載第17回
 あらすじ:主人公(彩華)と彼氏役()の仲を、芯の片思いに偽装することにした。
 一回休みのような話だ。狙いがよくわからない。ここは当然、を活用しにいくところだろう。
 採点:★★☆☆☆
 
しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』最終回
 あらすじ:主人公は、彼氏役とともに海外に行くために、パティシエ修行を決意する。海外でともに過ごして三年後、彼氏役がプロポーズして終わり。
 普通にまとめて終わった。
 採点:★★☆☆☆
 
・麻見雅『大神さん家のオオカミくん』最終回
 あらすじ:彼氏役と血縁関係(兄妹)と思い込み家出する主人公。彼氏役が連れ戻しにきて結ばれる。しかし血縁関係は勘違いだった。
 駄目と判断できる作品のほうがマシなのか、それとも、駄目かどうかも判断できない作品のほうがマシなのか。
 採点:なし
 
第21回につづく

Posted by hajime at 2007年03月22日 00:12
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