2007年04月06日

少コミを読む(第21回・2007年第9号)

 ふろくについて。
 今回は占い機能つき定規だった。ちょうどこういう定規を持っていなかったので、長いこと使いそうな気がする。
 では第9号のレビューにいこう。

 
・悠妃りゅう『バタフライ・キス』新連載第1回
 あらすじ:長身などのコンプレックスを抱える主人公(悠梨)が、カリスマカメラマンと美容師のコンビに出会い、キレイに変身。
 展開がどうにもぎこちない。カリスマ××(美容師、デザイナー等)は最近の流行りらしいが、3回連載では構成上難しい気がする。もしやるなら、第1回の終わりに次回へのヒキとして主人公と出会わせるのがベストと思うが、その第1回を構成するのが技術的に難しい(なにしろそのカリスマ××が彼氏役だ)。かといって第1回の前半に出会わせようとすると、焦点がぼやけてしまう。今回がそのパターンだ。
 焦点がぼやけてしまうとはどういうことか、もう少し詳しく解説しよう。
 カリスマ××の有能さは、話の面白さとは関係がない。カリスマ××がくれるものはタナボタでしかない。「不幸な主人公がタナボタで幸せになりました、めでたしめでたし」などという話が面白いわけがない。どんなにおいしいタナボタであろうと関係ない。面白いのは、タナボタのあとだ。たとえば『ドラえもん』で、のび太が道具をもらうのはタナボタであり、面白いのはそのあとだ。
 面白いのはタナボタのあと、と考えてみると、今回の構成上の問題が見えてくる。「不幸な主人公」と「おいしいタナボタ」で23ページ(扉絵を除く)を消費しており、肝心の「タナボタのあと」は8ページしかない。3回連載全体を通してみれば正しい配分になるのだろうが、1回分で区切って読めばバランスが悪い。このため焦点がぼやけてしまい、話の面白さが見えてこない。
 やはり3回連載は無意味に構成が難しい。2回連載が基本にならないものか。
 採点:★★☆☆☆
 
池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第16回
 あらすじ:主人公()への告白を取り消す彼氏役()。そのわけありげな様子を見た主人公は、司の事情を思って胸を痛める。
 翠をいったん泣かせるような展開を予想していたが、かなり甘く味付けしてきた。
 それにしても前回、司の後輩を登場させたのは、一体なんだったのだろう。泣いている翠を救う使者として使うと予想していたが。
 採点:★★☆☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第39回
 あらすじ:の夜這いが挫折。攻守入れ替わって、が逞を誘う。
 最後のセリフ、「セックスして」と「抱いて」の二択だが、作者がどれくらい考えたか知りたいところだ。考えすぎてトーンを貼る時間が足りなくなったのかもしれないと思うと、後半の白い画面も味わい深い(嘘)。
 流れとしては前者が正解だ。硬い言葉で会話の流れを一気に切り替えることで、インパクトを出している。が、その流れの構成自体に、なにかしら味わいが欠ける。とはいえこれは作者の個性としか言いようがないところなので致し方ないか。
 採点:★★★☆☆
 
・みつき海湖『とろけるようなキスを奏でて』新連載第1回
 あらすじ:有力インディーズバンドのボーカル(ガク)とつきあっていた主人公(音織)。ある日突然、バンドメンバー全員が音織の前から姿を消した。それから三ヵ月後、バンドがメジャーデビューした。
 絵は少々辛いが、構成は確かだ。ただし、第3回(最終回)まで持たせるのが難しそうな構成でもある。
 採点:★★☆☆☆
 
くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第16回、次回最終回
 あらすじ:主人公(しずか)がタイムマシンを発明。彼氏役(はじめ)とともに10年後の世界に行って、自分たちの様子を見ると、二人は別れて久しい状態だった。
 次回最終回にふさわしいアイディアを出してきた。綺麗に終わりそうでなによりだ。
 採点:★★★★☆
 
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第12回
 あらすじ:風邪で棄権した主人公(水結)の替え玉とばかりに勝手に乃亜が出場、失格ながら好記録を出す。その反響で水泳部に活気が戻る。
 みんな仲良しになってしまって、ちまちました話になってしまった。まさかこのまま最終回まで仲良し学園ものをやるのだろうか。
 採点:★☆☆☆☆
 
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』連載第6回
 あらすじ:子供を預かっててんやわんや。
 話は定番で手堅い。しかし画面構成に知恵がなく、魅力がない。
 採点:★☆☆☆☆
 
織田綺『LOVEY DOVEY』連載第18回
 あらすじ:彼氏役()の義兄である理事長がやってきて、「いい男キング決定戦」を開催する。これは芯と主人公(彩華)を引き裂くための罠だった。
 はじけている。なにか変なものでも食べたのだろうか。はじけたノリが悪ノリになることなく、きちんと話を作っている。画面構成の流れもいい。
 採点:★★★★★
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第27回
 あらすじ:水樹がお見合いをさせられる。相手はだった。
 ようやくグダグダが終わった。最終回の準備だろうか。
 採点:★★☆☆☆
 
・伊吹楓『君にささやく恋のワナ』読み切り
 あらすじ:よくわからない。
 「よくわからない」と書いたが、因果関係は把握できる。しかし、ネックレスの件と声の件が、相互に無関係に並存していて、話としてすっきりしない。旋回軸がないのだ。
 全体的に雰囲気が好きになれない。前世の相性が悪いのか。
 採点:★☆☆☆☆
 
・大谷華代『ゲキテキ恋愛勝負』読み切り
 あらすじ:彼氏役を口説くために、さまざまな役を演じてみる主人公。オチは「そのままの君が好き」。
 あらゆる面で絵が荒い。画面構成、描線、背景をほとんど描かない、などなど。人物にも特段の魅力があるわけではなく、平凡かそれ以下だ。
 採点:☆☆☆☆☆
 
・千葉コズエ『あまい*すっぱい*ほろにがい』最終回
 あらすじ:女たらしの主人公(男)が初めての恋をする。
 ……夏映の病気の件はどこへ?
 あと、これは作者にはなんの落ち度もないが、何気にトラウマを刺激されたので0点にしてみた。あしからず。
 採点:☆☆☆☆☆
 
第22回につづく

Posted by hajime at 2007年04月06日 02:35
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