ふろくの定規がレンチキュラーだった。最近のレンチキュラーの線幅の細さに驚く。私の子供の頃には、線幅はこの倍くらいだったような気がする。
では第17号のレビューにいこう。
・くまがい杏子『放課後オレンジ』新連載第1回
あらすじ:中学校男子陸上部、マネージャの主人公(夏美)は、走り高跳びの天才(翼)に、反発しながらも惹かれている。
44ページに問題がある。走り高跳びであんな風にバーの真正面には立つことはありえない。あと、陸上競技の記録をありがたがるのは、よしたほうがいい。用具やフォームの進歩もあるし、80年代にはドーピングが全盛だったし、ルール変更もあるしで、時代の違う記録は比較対象になりにくい。長く破られない記録だからといって必ずしも偉大とはいえない。極端な話、オブリーの2度目のアワーレコード(自転車競技)はたった6日で破られたが、自転車競技の歴史に輝く偉大な記録であり、映画まで作られた(The Flying Scotsman)。陸上競技をやっている読者は、このあたりのことをどう思っただろう。
少コミ作品全般に共通する欠点だが、暴力表現が気持ち悪い。たとえば、全力で殴る・殴られることの扱いが軽すぎる。この世には取り返しのつかないことがあり、全力で殴る程度の暴力もそのひとつだ。なお私は取り返しのつかないことが好きなので、きっちりした暴力表現も好きだ。
彼氏役の傾向をがらりと変えてきた点は評価できる。
採点:★★★☆☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第24回
あらすじ:彼氏役(司)が敵役の脅迫に屈し、無気力プレーで敗れる。
私も人並みに好き嫌いがあり、少コミ作家に対しても当然それはある。少コミ作家の好き嫌いは、男の好みが合う合わないが一番大きい。しがの・織田・くまがいは合うほうで、合わないほうの筆頭はこの池山田だ。
正直なところ私には、司の魅力がまったくわからない(ちなみに当て馬(カズマ)もよくわからない)。少コミ読者の主流はまったく違うのかと思っていたが、今回の人気キャラアンケート(司がカズマの下)をみると、それほど違いはないらしい。
今回も司の行動(脅迫に屈する)にあきれた。ヒーローらしく颯爽とピンチを切り抜けるか、あるいは試合中に負傷交代(そして次の試合で敵役と主人公が対決)かと期待して読み始めたら、ただ泥沼にはまるのを読まされた。
採点:★☆☆☆☆
・しがの夷織『はなしてなんてあげないよ』連載第4回
あらすじ:彼氏役(大輔)と主人公(京華)が海の家でバイト。京華が恋心を自覚。
京華の髪を描くのは大変だろうなと思いながら読んでいる。
とりあえず第6話くらいまでは、特に注目すべき展開はなさそうだ。そこから腰砕けになるか、それとも今度こそ根性を見せるか、注目していきたい。
採点:★★★☆☆
・藍川さき『シークレット・キス』連載第2回
あらすじ:ライバル出現をきっかけに恋心を自覚。
ストーリーを成り立たせるだけで手いっぱいの様子が、見ていて辛い。名人上手は流れるように手を繰り出して、どんな典型的なパターンもまるで初めて描かれたかのように見せるが、この作品はその逆だ。
背景の使い方が、説明的なものばかりで、ぎこちない。
採点:★★☆☆☆
・蜜樹みこ『恋色旋律☆ダブル王子』連載第2回
あらすじ:海里と大地が揃って主人公に惚れ、「どちらかを選べ」と主人公に迫る。
海里と大地はもっと露骨に描き分けを強調すべきところか。髪型を大幅に変える、アクセサリーをつける、象徴的なバックを使う、などなど。
総じて無難に進行している。エンドマークを見るまでは信用できないが。
採点:★★★☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第47回
あらすじ:逞と繭が結ばれる。翌日、逞が繭に結婚を申し込む。
前回に引き続きドリーム展開。
採点:★★★★☆
・咲坂芽亜『姫系・ドール』連載第8回
あらすじ:彼氏役(蓮二)に追いつこうと決めた主人公(歩)は、学内コンクールにエントリーする。ライバルが、「私は蓮二の婚約者」と明かす。
さすがにあのフランス人ではまずいと思ったのだろう、外人が描けるアシスタントを使ってきた。これも北方風でフランス人らしくないが、そこまで必要な話でもない。
展開にスピード感がなく、大ゴマが機能していない。絵は復調したので、これからか。
採点:★★☆☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第26回
あらすじ:理事長の陰謀により、彼氏役(芯)の婚約者が登場、学校で公然と芯とべたべたする。主人公(彩華)はなかなか芯に近寄れず苦しみ、そこにつけこんで純が動き出す。理事長の陰謀に対抗して、芯は策を巡らし、まず純が内通者と暴く。
大作戦がいよいよ佳境に入ってきた。もし30話完結(全5巻)なら残すところあと4話、きれいにまとまりそうだ。
話も画面も、きっちり仕上がっていて、感触がいい。
採点:★★★★☆
・悠妃りゅう『騎士のアカシ』読み切り
あらすじ:色男の彼氏役は女たらしと評判。主人公は別の面から彼氏役を好きになったが、からかわれるたびに反発してしまう。しかし実は彼氏役はちっとも女たらしではなかった。「女慣れするためにとりあえず」という名目でつきあいはじめるが、本気で主人公のことを好きになる。
感情の流れや距離感が自然で、話に無駄がない。
コマ割りにぎこちないところがある。中盤の盛り上げてゆくところはいいが、導入部に芸がない。
採点:★★★☆☆
・水瀬藍『あなたへのクレッシェンド』最終回
あらすじ:彼氏役が主人公に触れたところに当て馬が踏み込んでしまい衝突。その直後、当て馬が主人公を振る。この一件がしこりになって、卒業まで彼氏役に近づけずにいた主人公だが、彼氏役からの手紙を読んでわだかまりを解く。
奇想がない。当て馬の使い方も、わだかまりを解く手口も、許せないほど芸がなく、納得や共感ができない。わだかまりを解く手口をひねり出すのは難しいので(これは解きにくいように定義された悪い問題だ)、当て馬の活用を考えるべきだろう。
採点:★☆☆☆☆
・あゆみ凛『ほしいのは、あなただけ』最終回
あらすじ:彼氏役は主人公の求め(役作りのために抱いてほしい)に応じる。その甲斐あって主人公は恋愛ドラマの役をうまくこなす。彼氏役は天下堂々の恋人になることを求め、主人公と結婚する。
画面に単調な印象がある。手と頭の作業が足りていないように見える。
採点:★★☆☆☆
第30回につづく