2008年05月07日

映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)

 映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)を見た。
 2005年8月15日の靖国神社と、刀匠へのインタビューが中心の、ドキュメンタリー映画である。この刀匠は、戦時中に靖国神社境内で軍刀を作っていたという人物で、字幕では90歳とあった。

 靖国神社の映像は、奇人変人の大集合という趣で面白い。我流の面白礼拝を行う人あり、旧軍人の集団行動あり、星条旗を掲げるアメリカ人(白人男)あり、単身で抗議行動に突撃する人ありで、野次馬しに行きたくなる。かの悪名高い就遊館の映像も見どころだ。
 刀匠へのインタビューは、狙いがよくわからない。精神論でも聞けると思っていたのだろうか。靖国神社の映像だけでは尺が足りないから撮ってみた、というように見える。インタビュアーも刀匠も言葉が聞き取りにくいので、字幕をつけてほしかった。
 終盤に、戦時中のニュース映像が流れるが、政治的理由でとってつけたようで感心しない。
 
 政治的問題について。
 いわゆる「百人斬り」の真偽という鼻クソのような問題をあげつらって喜ぶ歴史修正主義者――主張が真偽どちらでも同じことだ――の期待に応えるような映画ではない。意識している節はあるが(おそらくは営業上の理由)、どちらの修正主義者が見ても、がっかりするだろう。
 元国家神道の神社の鵺的な性格(戦前には政府が国民に強制していたが、戦後民営化された)を、見て取ることはできるが、はっきりと打ち出しているわけではない。
 会場(渋谷シネ・アミューズ)の警備は物々しく、胡錦濤でも来るのかと一瞬思った。席は満席だったが、あの警備費用はどこから出ているのだろうと心配になる。こういう警備のための基金のようなものがあるとは聞いたことがない。

Posted by hajime at 2008年05月07日 23:22
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