2008年3月発売の電撃文庫において、渡瀬草一郎が『輪環の魔導師』2巻でブレイクした。
また、2008年5月発売のファミ通文庫において、野村美月が“文学少女”シリーズでブレイクした。
ブレイクは通常、シリーズ1作目か2作目で起こる。渡瀬草一郎のブレイクはこのパターンである。巻が進んでからのブレイクは、TVアニメ化などの「正のアーティファクト」と関連して起こるケースが多い。野村美月のブレイクは、正のアーティファクトでみられるパターンであり、『このライトノベルがすごい! 2008』の影響が疑われる。
もしライトノベルの売れ行きに、商業批評が小さからぬ影響を与えるとすれば、ライトノベルの文壇化が生じる可能性が高い。
正のアーティファクトについて。
TVアニメ化はライトノベルの売れ行きを押し上げる場合がある。作品外で不公平に生じる、プロモーション効果のある出来事などを、仮に「正のアーティファクト」と呼ぶ。逆に、売れ行きを悪くする出来事などを「負のアーティファクト」と呼ぶ。
ライトノベルの良いイラストは、正のアーティファクトではないかと取り沙汰されることが多い。しかし私の観察では、反例の数々を覆すような有力なデータを見つけることができない。逆に、悪いイラストが負のアーティファクトではないかと疑われる例は発見した。
もし悪いイラストが負のアーティファクトとして働くのなら、
・人気シリーズ全体のイラストの水準は、ライトノベル全体の水準より良い
・人気シリーズのイラストは、良いものではない場合は多いが、悪いものである場合はほとんどない
という状態が生じる。「イラスト=正のアーティファクト」説に一定の説得力があるのは、この状態を読み違えるためと思われる。