この「少コミを読む」は3年続ける予定で始めた。第1回は2006年第12号、というわけで今回で最終回――でもいいのだが、全69回はキリが悪いので、次回で最終回にする。
では2009年第11号のレビュー。
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第39回
あらすじ:彼氏役(京汰)のアピール。転入生(ハル、ハルステッド)が再び主人公(つばき)に接近を図る。
どうも作者の人間成長観は、私とは根本的に違うらしい。だとすると、あれこれ解釈が変わってくる。
評価:★★★☆☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第17回
あらすじ:両カップルのいちゃいちゃ。
強制送還から抜け出す展開を前回予想したが、やらなかった。かといって別に意表を突く展開もせず、ひたすら平たい。こんな黄金パターンを見落とすとは、やはり作者は手がろくに見えていない。
評価:★★☆☆☆
・藍川さき『僕から君が消えない』連載第14回
あらすじ:彼氏役(康祐)の元カノ(瑞菜)は男にしつこく付きまとわれており、康祐に助けを求める。そこへ主人公(ほたる)が通りがかり、康祐はほたるに瑞菜を紹介する。瑞菜はほたるの前ではおとなしくしているが、あとで康祐を誘惑する。
アイディアが足りない。当て馬(駆)の配置は面白い。
評価:★★☆☆☆
・くまがい杏子『苺時間』連載第8回
あらすじ:誘拐犯は実は彼氏役(蘭)で、主人公(市子)に教訓を与えるためのものだった。市子の母親がやってきて、蘭との同居がバレるが、母親は二人が恋人同士と思い込んで応援する。
思い出の少年の件といい、蘭の敵対勢力の件といい、ずいぶんロングスパンでネタを引っ張る。打ち切りになった際の進行にかなり余裕があるのか、あるいは作者の度胸か。後者なら見上げた根性だ。
評価:★★★☆☆
・藤中千聖『王様の裏シゴト・』連載第2回
あらすじ:主人公(ミユウ)と彼氏役(夏樹)の気持ちがすれちがう。夏樹のアピール。
14ページ目の逆ギレなど、切れ味が鋭い。
評価:★★★★☆
・千葉コズエ『ひとりぼっちはさみしくて』連載第13回
あらすじ:ゲリラライブと彼氏役(直)のアピール。主人公(詞央)は恐怖を振り払う。
詞央が消極的→直が積極的にさせる、の繰り返しは、できればあと1回(最終回)だけにしてほしい。
評価:★★☆☆☆
・咲坂芽亜『カワイイだけじゃモノ足りない!』連載第7回
あらすじ:彼氏役(雷斗)の前のモデル事務所の元マネージャー(榊)が、どうしても雷斗のマネージャーをやりたいと言って、主人公(アリス)のモデル事務所に入る。榊は海外での長期の仕事を取ってくる。それはかねてから雷斗が希望していた仕事だったが、アリスは複雑な感情を抱く。
主人公の配置の面白みがやっと出てきたか。
評価:★★★☆☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第16回
あらすじ:当て馬(拓海)は実は主人公(遥香)を強姦していないと主張、遥香と和解。
強姦を「なかったことに」の展開が面白い。強姦されたことを身体感覚で知ったことを示す描写があったが、そこは矛盾を見逃してほしいのか。あるいは「本当は強姦されてない」という拓海の発言が嘘で、遥香もそれを嘘と知りつつ「なかったことに」と合意したのか。どちらとも読めるが、その曖昧さを作者は意識しているのか。
(もし遥香が自分にとって都合のいいように自分の記憶を歪曲しているのなら面白いが、少コミ読者には複雑すぎる話になるので、おそらくそれはない)
とはいえ、「なかったことに」の前提(へらへらしながら強姦犯と和解)がどうしようもない代物なので、どうでもいい(もし遥香が記憶歪曲しているなら別)。
評価:★☆☆☆☆
・白石ユキ『となりの恋がたき』連載第4回
あらすじ:最近になってヒロが女関係を整理しはじめたことを知る主人公(茜)。さらに主人公は、思い出の品を隠す等したのがヒロであることも突き止める。それを問い詰めると、ヒロは本心を見せる。
切れ味がなく、重苦しい。
評価:★★☆☆☆
・蜜樹みこ『恋、ひらり』連載第10回
あらすじ:彼氏役(佳月)は公演のあとで婚約を発表するが、それと同時に、自分の心が主人公(純恋)にあることを公言する。婚約者は身を引き、佳月と純恋はもとの鞘に収まる。
佳月の行動が、力づくで横車を押しているようにしか見えない。根性バカならこれでいいが、佳月は鮮やかに問題を解決するタイプに見える。
評価:★☆☆☆☆
・杉しっぽ『ウソつきは、恋のはじまり。』読み切り
あらすじ:主人公は一種の探偵で、依頼人が告白しようとしている男のことを調べる。しかし彼氏役は極度の嘘つきで、調査が難しい。そこで主人公が自ら接近して調べるうちに、彼氏役のことが好きになる。
コメディのノリをしっかりと押し出せていない。
評価:★★☆☆☆
・紫海早希『勘違い娘とブチギレ王子』読み切り
あらすじ:主人公は彼氏役が自分のことを好きだと勘違いして、周囲に言いふらし、さらに彼氏役に告白するよう迫るが、勘違いだと断言される。主人公は言いふらした責任を取るために、校内放送で「勘違いでした」と宣言。そのあと主人公は彼氏役を好きになり告白。
非の打ち所がない。あえていえば、強烈なアイディアに欠けることくらいか。
評価:★★★★☆
最終回につづく