たしか2008年の冬コミだったと思います。ほとんどのサークル参加者と同じく、私は自分のスペースにいて、自分の本が売れないのを眺めていました。
と同時に、新作の構想を練っていました。なにしろ小売業を実践中だったので、商売の話はどうか、くらいのことを考えました。しかし商売といっても、実務を描いたらサラリーマンBLですし、因果を説いたら松下幸之助です。どちらも関心が持てません。
売上金の入った箱を見て、私は考えました。なぜ商売はみな金を稼ぐのだろう? 金を稼がない商売はないのか?
答えは簡単です。商売とは、金の動きの影のことです。金が動いているのを見て初めて人は、そこに商売があると認識します。金を稼がない商売なんてものがもしあるとしたら、それは商売として認識できません。よって、金を稼がない商売はありません。
……嘘です。
というのは嘘で、やっぱり金を稼がない商売はなさそうです。これを書いている現在、Googleで"金を稼がない商売"はものの見事に0件ヒットです。しかしそれでも嘘ということにしたかったので、『恵まれさん』の設定が生まれました。
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