2012年07月27日

才能がない人のためのロードバイクトレーニング ワークアウト編

 枠組み編の核心が「シンプル」だとすれば、このワークアウト編の核心はこれだ――「才能のある人には効いても、自分には効かないかもしれない」。
 私が試してみて効いたワークアウト・効かなかったワークアウトを列挙し、その理由について考察してみる。読者諸氏がプロトコルを決める際の一助とされたい。

 
・タバタプロトコル:20秒もがいて10秒休むのを8回
 効かなかった。
 追試では「効かなかった」という報告ばかりなのだが、超短時間というところが魅力的なのか、いまだによく名前を聞く。
 そもそも最初の報告の被験者がオリンピックの強化選手なので、それくらいの才能とトレーニングレベルを兼ね備えた人なら効くのかもしれない。ほとんどの読者諸氏には効かない、と自信を持って断言する。
 
・LSD:60% HR maxで1時間以上
 効かなかった。
 LSDという概念は1970年代からあったらしいが、ロード界で脚光を浴びたのはEPO時代の始まりの頃、イタリアのプロチームかららしい。
 EPOはヘモグロビンを増やすので、血液の粘性が高まる。粘性が高まりすぎると血管が詰まって死ぬ。死なない程度にしておく必要があるので、それがEPOの投与量の上限となる。
 粘性はヘモグロビンの濃度によって決まるが、EPOの効果は体内の総ヘモグロビン量によって決まる。つまり血漿量が増えれば、ヘモグロビン濃度が薄まって血液の粘性が下がるので、それだけEPOの投与量を増やせる。
 そして血漿量は、有酸素運動をした時間が長ければ長いほど増える。
 
・ロングライド:漫然と100km以上を走る
 効かなかった。
 プロ選手は年に2万キロ3万キロと乗っているが、それがトレーニングとしてプラスになる体質だからこそプロになれたのだと思う。才能のない人が距離を乗っても、プラスになるとは限らない。
 また、プロ選手は距離を乗っているわけではないのかもしれない。プラスになる要素をひとつひとつ積み上げていったら、結果としてこの距離になったのであって、中身に乏しいロングライドで距離計を回しても無意味なのかもしれない。
 
・SFR:ケイデンス約50rpm、30秒から1分で脚が売り切れる程度の負荷、を3回
 効く。
 「有酸素運動をすると筋肉が落ちやすい」とよく言われる。「脂肪だけを減らすのは難しく、筋肉もある程度犠牲になる」ともよく言われる。では、カベンディッシュやグライペルは一体どうなっているのか。ツール・ド・フランスを完走できるほど脂肪を削り、年2万キロ以上は走っているはずなのに、なお巨大な筋肉を誇る。スプリンターに限らず、一部のクライマー以外は、驚くべき筋量と体脂肪率を両立させている。どういうことなのか。
 私の結論:才能。
 一部の例外を除いて、プロ選手は異常なまでに筋肉のつきやすい体質をしている。常人ならマラソン体型になるはずのトレーニングを彼らがこなすと、エヴァンスやコンタドールの体型になるのだ。
 そして一部の例外であるところのマラソン体型の選手(シュレック兄弟など)は、別の才能を持っている。もしマラソンをやれば世界トップクラスに入れるほどの、有酸素運動の才能だ。おそらく、ほとんどの人にとっては、マラソン体型は目指すべき方向ではない。
 「才能のある人には効いても、自分には効かないかもしれない」。これは筋肉のつきやすさと効能について特に言えると思う。才能のない人ほど、筋量を稼ぐことを重視すべきだ。
 
・VO2maxインターバル:4分軽くもがいて3分休む、を4回
 効く。
 
・SST:PBの90〜100%強度で20〜60分
 疑問。
 夏には室内気温を十分に下げられなくなるので、SSTのような長時間のワークアウトはほとんどしなくなる。なのに秋になって60分走のベンチマークにトライすると、たやすくPBかそれに近い値が出る。
 
 コンディショニング編に続く。

Posted by hajime at 2012年07月27日 18:29
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