たいまつ、ろうそく、願いさげ
古代の遺物は願いさげ!
ぼくらは作ろう、ぼくらは作ろう
二極!
三極!
四極!
五極!
もっと作ろう、最新型の電波管!
飛行機、ロケット、民家をとわず
どこにもかがやく電波管!
地球も月も電子の時代
電子はぐくめ、ぼくらの夢を!
ソルジェニーツィン「公共のためには」(江川卓・水野忠夫訳)
『新しいソビエトの文学6 ソルジェニツィン集』(1968)より
カブロボコンテスト第1回が終了した。これは、テクニカル分析で株を売買するプログラム同士で、架空の運用を行い、成績を競うコンテストである。
いきなりだが、おそらく第2回は開催されない。
成績トップ10の売買履歴をご覧いただきたい。トップ10のうち、第1位、第3位、第7位、第9位の4つのプログラムが、ほとんど売買を行っていない。初日に玉を建て、あとはなにもしなかったのだ。
大会ルールの説明にはこうある。
「今コンテストでは成行・指値売買、空売り注文すべて手数料は掛かりません。今コンテストはアルゴリズムを競うことを主としていますので、積極的な取引を行っていただければと思います」
証券会社は手数料で稼ぐので、客が儲かろうが損しようが、とにかく売買してもらわなければ困る。だからこの手のキャンペーンは必ず、「手数料なし」というふざけたルールで開催される。そのふざけたルールのもとでさえ、「売買するほど損になる」という結果が出てしまったのだ。
証券会社や、その息のかかった人々は絶対に認めないが、テクニカル分析はマネーゲームというより宗教行為である。このコンテストで、その事実が満天下に晒されたわけだ。
第8位もまずい。「下落率トップの銘柄を買えるだけ買って、翌営業日に全て売り払います」。カブロボコンテストでは、売買が架空のものだから容易に損切りができる。現実には、もし連日ストップ安なら、損切りさえできずに轟沈する。つまり、ダウンサイドリスクに差がある。差があるので鞘取りができる。もし第2回があるとすれば、同様の鞘取りを狙ったプログラムが多数応募され、上位を占めるだろう。
もし第2回をどうしても開催するとしたら、なにがなんでも売買させるような、かなり不自然なルールを設定することになる。また、運用益を賞金として出すのは難しい。どんなルールを設定しても、架空と現実とのあいだでの鞘取りは、原理的に避けられない。
というわけで、おそらく第2回は開催されない。不都合な実験結果を認めるかわりに、宗教的な宣伝で定説を作り出すことで、証券会社は取引手数料を稼いでいる。