2006年07月08日

少コミを読む(第4回)

 少コミ第15号を読んだ。
 レギュラーと新人の力量に格段の差がある。新人の半分くらいは本当にひどい。今まで見たかぎりでは、本誌で読みたいと思える新人は、くまがい杏子・天野まろん・千葉コズエの3人だけだ。
 それにしても、小学館の30万部のまんが誌でありながら、どうしてこんなにレギュラー層が薄いのだろう。構造的な問題があるのかもしれない。

・織田綺『Lovey Dovey』新連載第1回
 津田雅美『彼氏彼女の事情』の主人公(猫をかぶる自分に悩む秀才)を少コミに登場させるとこうなる、のかもしれない。
 かぶれるほどの猫があって(かぶれる猫は女の財産だ)、幼なじみの男(敬士)はスペックをみるかぎり完璧超人で、お前はどこのパーフェクトジオングですかという主人公(彩香)だが、まだ敬士をものにできていない。そこへ現われたるはイケメンの不良男()、彩香にコナをかける――で次回に続く。
 女の面白い秀才を描くのは難しい。これはという成功例は、大島永遠『女子高生』の主人公くらいしか見たことがない。さてどうなるか。
採点:★★★☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第22回
 切れる切れないで修羅場を続けている主人公たち()。前回いよいよ繭が決戦を挑んだ。今回、逞は22ページかけて揺さぶられ、23ページ目で繭へと傾く。が、26ページ目、繭のライバル()がついに切り札を出す。『その日 僕のせいで 照ちゃんが 死んだ』。
 照には繭に対抗しうるほどの言い分がないので、なにか来るだろうとは予想していた。しかしこの手は読んでいなかった。事ここに至っては最善手かもしれないが、それまでの構想に疑問がある。
 ファミコン版『北斗の拳』には、ちょっとした無敵技がある。敵が出てくる前に自機を殺してしまう、という技だ。敵が出てこない=無敵、というギャグだ。ギャグなのだが、考えさせられる。死によって無敵になる人間の、いかに多いことか。キリストは十字架にかけられることで無敵になった。レーニンがもし70歳まで生き長らえていたら、死後にあれほどの神格化を長く続けることはできなかっただろう。
 だが、死によって無敵を得るのは、死ぬまで最強だった者だけだ。でなければ、ファミコン版『北斗の拳』の無敵技と同じことになってしまう。
 照には最強を感じない。もしかしたら次回で最強になるのだろうか。だとしたら作者を尊敬する。
採点:★☆☆☆☆
 
わたなべ志穂『ご指名! ホスト教師J』新連載第1回
 新連載といっても、いったん終了したのを再開させたものらしい。単行本が1巻出ている。
 『ラスト・エスコート』というプレステ2用ゲームがある。高卒プーの女がアルバイト代をホストに貢いでナンバーワンにする、という話だ。この話に、どうコメントしたらいいのか、わからない。あえていえば、「バイト先はどちらのSMクラブですか? ちょっと美人の20歳でもお茶っぴきなんて珍しくありませんよ?」くらいか。
 『ラスト・エスコート』よりはずっとマシだが、この作品にも同じ種類の危うさがある。生徒のメンツには多少の期待が持てるので(特に子持ち女の生徒にはなにか狙いがありそうだ)、見限らずに読んでゆきたい。
採点:★☆☆☆☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第11回
 水樹と秋羅がデートしている。それだけだった。
採点:★★☆☆☆
 
・山中リコ『桃色パンチ』連載第2回
 私はどうやら少コミの連載というものについて誤解していたらしい。
 新人の連載は、「短期集中連載」などと銘打っていなくても、単行本にならないようなページ数しか続かないようなのだ。この連載にあと何ヶ月もつきあうのかと思ってうんざりしていたが、どうやらすぐにお別れできそうだ。
 主人公にも彼氏役にも魅力がない。
採点:☆☆☆☆☆
 
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第2回
 構成がなんとも素晴らしい。1ページ目が、「アダルトビデオを見ているところを保護者に発見される主人公(15歳・女)」だ。その後も、主人公のアクの強さを生かし切りつつ、第二の男(主人公の保護者)を登場させ、彼氏役のいいところも見せている。
 そしてなにより、いい電波が出ている。いま次回が一番楽しみな連載だ。
採点:★★★★☆
 
・天音佑湖『恋敵は子猫ちゃん・』連作読み切り
 細かいことを言っても無駄な馬鹿話だ。好感が持てるのでいいとする。
 画面の整理には難点がある。ただ、見やすい画面になると、この好感もなくなってしまうかもしれない。難しいところにはまっていると思う。
採点:★★☆☆☆
 
・千葉コズエ『恋10!!~恋まであと10センチ~』読み切り
 「主人公の過失を償うために男と同居→からかわれながらも好きになる→行き違いのあと仲直りして結ばれる」。
 彼氏役の魅力の出し方に、確かな実力を感じる。これができる作家のなんと少ないことか。あまり少コミ的ではないかもしれないが、ぜひポジションを確保してほしい人だ。
採点:★★★☆☆
 
・麻見雅『放課後のジュエル』連作読み切り
 宝石専門のイケメン怪盗と宝石好きの主人公。主人公がずっと受身で、怪盗を招き寄せたり追いかけたりしていないのが、そろそろ気になってきた。
 前に見たときには、まるで『のらくろ』かなにかのような不思議なノリで驚いたが、今回はずいぶん現代らしくなっている。私としては『のらくろ』のノリのほうが面白いので、あのままでいってほしいが、平均的な少コミ読者には受けないかもしれない。
採点:★★☆☆☆
 
水波風南『蜜×蜜ドロップス』最終回
 結婚式で締めた。少女まんがのラストに結婚式は王道中の王道だが、もっと味を出してほしいところでもある。この作品も例外ではない。
 ところで21ページ目、「…そうだな…」というセリフの横に「ギシ…」という描き文字は、笑うところなのだろうか。
採点:★★☆☆☆
 
・車谷晴子『美少年のおへや。』最終回
 新人の連載は、「短期集中連載」とも「次回最終回」とも書かれずに最終回になるらしい。さすがに「次回最終回」の予告くらいはあってもいいと思うがどうか。
 『ダメだ 今 パンツ かわいくない!!!』。四コマなどで百回は見たネタだと思うが、見るたびにしみじみとした味わいがある。
採点:★☆☆☆☆
 
・咲坂芽亜『ラブリー・マニュアル』最終回
 これまた「次回最終回」とも書かれずに最終回だ。
 主人公の学校側との衝突はなんの伏線かと思っていたが、最終回でオチをつけるための伏線だった。「校則違反のオシャレで学校に来るのをやめない→停学をくらう→それでも自分の旗をかかげる→友情で学校側をぎゃふんと言わせる」。
 前回までの友情アピールが薄かったのが惜しまれる。このページ数ではやむをえないところか。
採点:★★★☆☆
 
第5回に続く

Posted by hajime at 2006年07月08日 02:31
Comments
Post a comment






Remember personal info?