第19号は付録に驚いた。忍者ペン&ライトである。
染料ぬきで蛍光剤だけのインクの入ったペンと、紫外LEDライトのセットである。これを喜ぶ少コミ読者はいったい何人いるのだろう。理系の女性を増やすための陰謀だろうか。
だがそれなら笙野頼子の小説をまんが化するほうがいい。少コミ読者のピュアな夢と希望を焼き尽くし、自分の道を究める方向へと向かわせてくれるにちがいない。
ではレビューにいこう。
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第2回
あらすじ:
1. 学園に君臨する権力者(乃亜)は、淫乱で下劣な女
2. 水泳部が潰されたのは、乃亜の痴情のもつれから
3. 乃亜の手下の蒼以はモデル
というわけで最初のボスキャラ・乃亜が登場した。乃亜を倒すまでの手際を見れば、この連載の先行きがわかるだろう。
なぜ乃亜が最初のボスキャラだとわかるのか。まず、乃亜はつまらない奴だとはっきり示してある。そして、蒼以の権力の源泉が、生徒会だけでなくモデルにもあることが示された(少コミでは彼氏役は権力者でなければならない)。
設定や人物を飲み込ませるために小ボスキャラを出すのは、よくある手だが、うまい手だ。第5回くらいまでにさくっと片付けてほしい。
採点:★★★☆☆
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第6回
あらすじ:ちょっと意地悪な彼氏役(大輝)に、好きだの抱いてだのと言わされる。
彼氏役といえば権力者で変人ばかりの少コミにあって、大輝はほぼ唯一、人間くさい。ただそれだけでは褒めるようなことではないが、その人間くささをよく生かしている。保護者役(和也)の人間くささがまだなので、それが楽しみだ。
採点:★★★★☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第3回
10ページ目のセリフで変な書体を使ってみたり、13ページ目のイメージ映像でなぜか一万円札を降らせてみたりと、いろいろ芸が細かい。
が、作者はあまりサッカーに関心がないように見える。サッカーの美しい瞬間を絵で再現しようとする努力をまるで感じない。
仇役(司)は主人公が男子校潜入&サッカーするためのマクガフィンかと思っていたが、これは私の読み違いで、主人公は司に未練がある。私はこういう未練がましい行動パターンは嫌いだ。
採点:★★☆☆☆
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第4回
あらすじ:主人公を孕ませたと勘違いした彼氏役(はじめ)。
はじめの思い込みと行動力が、妄想的で素晴らしい。この妄想性を縦横無尽に活用した話が読みたい。
最後のページに、「最終回まであと2回」との表示があった。3回連載のほかに6回連載というパターンもあるらしい。
採点:★★☆☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第5回
あらすじ:彼氏役(芯)がデレ期に入る。幼馴染(敬士)がさらに巻き返す。
画面も話も薄味で、どうも私の口に合わない。
採点:★☆☆☆☆
・新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第15回
あらすじ:別の男を退けて、秋羅がいいと再確認。
これからなにがどう展開するのか、さっぱりわからない。だがそれがいい。
採点:★★☆☆☆
・麻見雅『花園のジュエル』連作読み切り
あらすじ:書きようがない。
因果関係がスカスカで、話らしいものが存在せず、なんとも反応のしようがない。
採点:☆☆☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第26回(扉表記は25回)
2号続けて連載回数を1つ少なく表示している。もしかすると私が読み始める前に、連載回数を1つ多く数える間違いが起こっていて、それを修正したのかもしれない。
あらすじ:照の死を繭が知った。それでもなお別れるという結論を貫く二人。
次になにか新材料をぶつけて二人を再びくっつけ、さらにそのあと照をぶつけて泣かせ、最後は二人の幸福な日々&死、という展開になれば美しい。だが照をぶつける手が、作者の頭に浮かんでいるかどうか。
照をぶつけるには、「照と逞は幸せだった」という結論が必要だ。世紀の鬼手をひねり出さないと、この結論は出せない。
採点:★★☆☆☆
・あゆみ凛『Kissよりもいじわる』連載第2回
あらすじ:「どうせお前は××の手先だろ!」「本当に好きなのに、ひどい!」
ネームはよく整理できているが、話はもっと練れる気がする。
採点:★☆☆☆☆
・藤原なお『君は辛党いばら姫』読み切り
あらすじ:いい男と出会ってデートしてゲット。
彼氏役は一通りいい男に描けているはずなのだが、どうにも納得感がない。人間くささがないのだ。たとえばこの彼氏役が、自分の悪感情にどう対処しているか、イメージできない。
ではどうすればいいのかというと、私にもわからない。そこを考えるのが作家の仕事だ、と逃げてみる。
採点:★☆☆☆☆
・車谷晴子『放課後は恋愛授業』読み切り
あらすじ:軟派のいい男に口説かれる。
絵がだいぶ上達したか、それとも丁寧になったか。ネームもそれなりにできているので、あとは味わいが勝負になりそうだ。
採点:★★☆☆☆
・天音佑湖『恋敵は子猫ちゃん・』最終回
前にも書いたが、やはり動物の絵がポイントだ。動物をしっかり描くと、それだけで画面が面白くなるはずだ。
思えば、少女まんがに動物の絵は使いやすい。老人の顔を描けてもあまり売りにならないが、動物をしっかり描ければ、できることが多くなる。
採点:★★☆☆☆
第9回に続く
> 3回連載のほかに6回連載というパターンもあるらしい。
少女漫画では6話分で単行本1冊になりますから、ちょうど単行本になるだけの話数、ということですね。
3回連載(短期集中連載)の場合、3回連載×2ではなく、大概読みきりを追加して単行本になることが多い気がします。
なるほど、勉強になりました。
Posted by: 中里一 at 2006年09月07日 22:37