本誌の話をする前に、増刊の話をしよう。
10月増刊号を読んだ。オシャレ眼鏡が流行りつつある今日びに、眼鏡を外す話を3本(悠妃りゅう『キミニアツイキス。』、山中リコ『キミにまかせなさい!』、ナオダツボコ『いとし君への恋の花』)も載せているのに驚く。魅力に乏しい絵ともあいまって、これは実は商業誌ではなく妙なカルト(巣鴨こばと会残党?)の会報ではないかと思えてくる。
カルト的なドグマやイデオロギーにまみれているからといって、必ずしも商業的に劣るわけではない。たとえば『嬢王』は、非常にイデオロギー的でありつつ売れている。だが『嬢王』と同じことを、少コミの新人作家にできるかといえば、難しい。イデオロギー的な作品には独特のテクニックが必要で、それは少コミの新人作家がめったに知らない種類のテクニックだ。
では本誌20号のレビューにいこう。
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第4回
主人公が仇役(司)とくっつくことが事実上決定した。もしこの予想が外れたら、私は少コミレビューをやめる。
サッカー描写はやる気なし、恋の行方も先が見えた、というわけで、残るお楽しみは男子校潜入だけになってしまった。
単行本で『萌えカレ!!』1巻を読んだときにも思ったが、この作者は、連載の立ち上がりがぎこちない。「かわいいものしか描かない」という縛りのせいで、「これはこういう話ですよ」というサインを適切に出すことができないらしい。
採点:★☆☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第26回
3号続けて連載回数を1つ少なく表記しているので、現在の表記が正しいのだと思う。
あらすじ:それから4年が過ぎた。
意表を突いてきた。照のことは切り捨てるのか、また使ってくるのか。
採点:★★☆☆☆
・咲坂芽亜『ラブリー・レッスン』連作読み切り
あらすじ:カリスマ美容師にくせっ毛対策を学んで、彼氏役ともハッピーに。
話や人物はともかく、絵に魅力がある。ネームの勢いもわかりやすさも申し分なく、巻を置くあたわざる一本に仕上がっている。
採点:★★★★☆
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第5回、次回最終回
あらすじ:はつめいプリンスが登場、主人公をかっさらおうと企む。
彼氏役(はじめ)が相変わらず面白い。それにしても、はじめがなぜ総理大臣の息子なのか、最後までよくわからなかった。
採点:★★★☆☆
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第3回
あらすじ:主人公と彼氏役(蒼以)がさらに接近。それが面白くない乃亜。
ようやく設定の説明が終わり、本題に入りつつある。どんどん蒼以の味をアピールしていってほしい。
採点:★★★☆☆
・藍川さき『姫君革命』読み切り
あらすじ:たおやかな幼馴染の彼氏役(和希)がある日目覚めて主人公を守りはじめる。
あらすじを書くと普通に見えるが、実物は不条理だ。たおやかなはずの和希のバスケの腕が、なんの前置きもなく、運動部レベルだったりする。また、和希にはたおやかなりの魅力があるはずなのに(でないと彼氏役として成り立たない)、その点がアピールされていない。
前の3回連載でもそうだったが、思考の量と密度がまったく足りていないように思える。
採点:☆☆☆☆☆
・新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第16回
あらすじ:馬鹿話。
普通に面白いが、新條パワーの炸裂が見たい。
採点:★★★☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第6回
あらすじ:彼氏役(芯)がデレまくり。
1ページ目「ああ そうなんだー」→『違――う これ違う――!!』の流れが好きだ。
この連載は、一時はどうなることかと思ったが、幼馴染(敬士)が巻き返して面白くなってきた。
採点:★★☆☆☆
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第7回
あらすじ:主人公は彼氏役(大輝)と結ばれる。しかし保護者役(和也)は主人公をあきらめるどころか、さらに前進しようと試みる。
大輝は、現在の少コミで一番魅力的に描けている彼氏役だと思う。和也はどうなるだろうか。
次回、いよいよ権力問題との衝突である。近親ものが好きな作家なら、避けて通れない難関だ。
採点:★★★☆☆
・わたなべ志穂『ご指名です!!』読み切り
スーツが好きでホストクラブに行く? は? 行くなら平日昼間の霞ヶ関だろ! と本気で突っ込みたくなった。なお、ガキのスーツが好きな変態など知ったことではない。
この作者、前半は調子よく流れて、後半が苦しい、という癖があるような気がする。
採点:★☆☆☆☆
・真村ミオ『願いの降る夜』読み切り
構成がぎこちない。
採点:★☆☆☆☆
・あゆみ凛『Kissよりもいじわる』最終回
少コミお得意の不条理展開が炸裂した。
新人作家の皆様、3回連載を始めるときには、最終回まできちんと話を作ってからにしましょう。
採点:☆☆☆☆☆
第10回に続く