2006年10月05日

少コミを読む(第10回)

 「コンテンツ産業」「オタク」「萌え」。これらはみなスーツ野郎の語彙になってしまった。つまり、もう終わったということだ。スーツ野郎の目には、死んだ労働しか見えない。これから生きた労働をこの世界にもたらす生きた人間など、スーツ野郎にとっては幽霊同然だ。
 しかし嘆くことはない。何度でも始めよう。それが生きているということだ。
 少コミには30万人の読者がいる。そのほとんどは、若く、貧しく、無名だ――毛沢東のいう、成功する人間の条件に、ぴったりあてはまっている。
 「Googleが創立された時、いわゆるポータルについては、検索という部分は退屈でさして重要でないものだというのが一般的な認識だった。だがGoogleは検索は退屈なものだとは思わなかった。それが、彼らが検索を非常にうまくやってのけた理由だ」
 同じことを少コミでやろう。少コミを読んで批評することが、まるでGoogleのように、まるでiPodのように、面白いプロジェクトであるようにしよう。
 第21号のレビューにいこう。

 
・車谷晴子『アイドル様の夜のお顔』新連載第1回
 あらすじ:理想のアイドル(ワイルド系)に近づいてみたら言い寄られた。
 あらすじだけ見ると普通に見えるが、実際に読むと、全然わけがわからない。これのどこがどう話になっているのか、全然わからない。
 たとえば、TVの中のアイドルとそれを演じる実物のあいだにギャップがあれば、話になる。彼氏役に、「あれはオレの理想の男なんだよ」などと言わせたら面白い。しかしどうやらこの作品の彼氏役()には、そういうギャップがないらしい。主人公(杏耶)にそう見せかけているだけでなく、主人公の視点を離れた描写でも、そのように描かれている。
 採点:☆☆☆☆☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第17回
 あらすじ:彼氏役(秋羅)の兄たちが登場。
 普通に面白いが、新條パワーの炸裂が見たい――と前回と同じ感想ですませてみる。
 採点:★★★☆☆
 
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第8回
 あらすじ:彼氏役(大輝)と保護者役(和也)の対立が激化。翻弄される主人公。
 和也の味がなかなか出てこない。二枚目(大輝)のまわりを曲者(和也)がぐるぐる回る、という構造で話が進むかと思ったが、予想が外れたか。
 採点:★★☆☆☆
 
咲坂芽亜『ラブリー・レッスン』連作読み切り
 あらすじ:卑屈で後ろ向きな主人公に、カリスマ美容師がアドバイス。
 少コミには、「オシャレ眼鏡は禁止」という決まりでもあるのだろうか。眼鏡は小中学生には高い買い物だから禁止なのかもしれない。しかし金のことを言うならホストはどうなのか。経済的配慮でオシャレ眼鏡を禁止するなら、そもそも眼鏡など描くべきではない。
 彼氏役のいい男ぶりアピールが巧みで感心させられる。
 採点:★★★☆☆
 
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第5回
 あらすじ:振られ役(カズマ)と主人公が、練習でホットラインなプレーを披露。それを見ていた彼氏役()が嫉妬。
 思ったとおり、サッカーのプレーの絵が辛い。きわどいパスがつながる瞬間の感動を描けていれば、カズマもただの振られ役ではなくなるのだが。
 採点:★☆☆☆☆
 
・藤中千聖『ビンボー姫にぞっこん王子』読み切り
 あらすじ:節約マニアで庶民の主人公が、リッチな彼氏役に見初められる。
 絵はうまいし、話は手堅いし、ネームはよく伝わるしで、とりあえずダメな点はない。
 採点:★★★★☆
 
・紫海早希『Let's アクマテク教室』読み切り
 あらすじ:主人公は、狙った男を落とすために、別の男にコーチを受ける。
 登場人物の感情の流れが、素直につながっていないような気がする。
 採点:★★☆☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第27回
 あらすじ:の差し金でが再接近。
 話の旋回軸がまだ見えてこない。
 採点:★★☆☆☆
 
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第7回
 あらすじ:彼氏役()がデレまくり。
 2回続けて芯のアピールタイムだった。この話は、幼馴染(敬士)がどれだけ頑張るかがポイントだと思うので、敬士のアピールタイムをもっと取ってほしい。
 採点:★★☆☆☆
 
・山中リコ『蝶になりたい』読み切り
 あらすじ:よくわからない。
 出来事の因果関係はちゃんと理解できるし、話にも一応なっているような気がするが、結局どんな話なのかと考えると、うまく説明できない。
 思考の量と密度が足りていないような気がする。
 採点:★☆☆☆☆
 
・古賀よしき『ビューティフル・ノイズ』読み切り
 あらすじ:男を声で選ぶ主人公が、美声の彼氏役とくっつく。
 話の旋回軸がわからない。
 採点:★★☆☆☆
 
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』最終回
 あらすじ:はつめいプリンスの件で主人公と彼氏役(はじめ)が気まずくなり、そのあと仲直り。
 いろいろ詰め込みすぎてごちゃごちゃしている。最終回のせいだろうか。
 今回でいったん最終回だが、次々号から再開すると作中で予告されている。
 採点:★★★☆☆
 
第11回に続く

Posted by hajime at 2006年10月05日 21:20
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