2006年12月06日

少コミを読む(第14回・2007年第1号)

 おたよりをいただいている。
 「このあいだ初めて少コミを読もうとしたら、読めませんでした。まんがが読めない人の気持ちが初めてわかりました」(東京都・TきもりRうさん)。
 おそらく育ちの問題です。私は講談社系の少女まんがが読めません。
 では2007年第1号のレビューにいこう。

 
くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第9回
 あらすじ:作りすぎた発明品を売りさばくために主人公がアイドル活動。
 絵がごちゃごちゃしてわかりにくい、などと繰り返すのも飽きたが一応書いておく。
 彼氏役(はじめ)の場当たり的な攻撃性が、どうにも魅力的でない。連載第7回でも、彼氏役が後手後手に回ることのダメさを咎めたが、繰り返して出現するところをみると、あれは単純ミスではなかったらしい。
 場当たり的だからといって即ダメとはいえない。彼氏役が馬鹿なら別にそれでいい。が、この彼氏役は馬鹿としては描かれていない。
 そもそも、彼氏役の魅力として攻撃性を描くこと自体、ほとんど賛成できない。
 「馬鹿な子ほどかわいい」式の欠点として攻撃性が描かれるならいい。このパターンでは、彼氏役の攻撃性は空回りしたり逆効果になったりして、それを主人公がかわいいと思う、という展開になる。
 採点:★☆☆☆☆
 
しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第12回
 あらすじ:彼氏役(大輝)の家に同棲する二人。そこへ彼氏役の姉が襲来。
 保護者兼ライバル(和也)を、別の女にくっつけて片付けてしまった。つまり波乱展開の材料を捨てたということだ。結婚がどうのと言い始めたところをみると、さっさとこの連載を切り上げて次に行くつもりだろうか。
 採点:★★☆☆☆
 
青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第32回
 あらすじ:の事情を察する。が校内放送でへの愛をしゃべってしまう。
 逞が親族について調べようとしたときの本がレヴィ・ストロース(文化人類学)というところに、21世紀を感じる。これが30年前ならフロイト(精神分析)だった。30年後には社会学の本になるだろう。知の構造変化は文化の全領域に及んでいる。
 話は普通に進んでいる。毎回毎回うまく手をつなぐものだと感心させられる。
 採点:★★★☆☆
 
織田綺『LOVEY DOVEY』連載第11回
 あらすじ:主人公の誕生日。彼氏役()と祝いたいが、父親も誕生パーティーを楽しみにしている。
 敬士のポジションが乙女ゲーを思わせる。少コミ的な少女まんがではほとんど見かけないポジションだ。
 このポジションに美男をずらりと並べると、藤本ひとみのマリナ・シリーズになる。少コミでは長期連載が難しいので実現は難しいとは思うが。
 逆に、ギャルゲー等でこのポジションに美女をずらりと並べたケースは思い出せない。未来のギャルゲーか。
 採点:★★★☆☆
 
・天音佑湖『雪の輪舞曲』読み切り
 あらすじ:両親をなくして天涯孤独になったかと思われた主人公。しかし大金持ちの祖父がいて引き取られる。その祖父のほかの親族は、思わぬ相続人の出現を喜ばない。主人公を助ける執事が彼氏役。
 衣装まんがである。華やかなドレスがしっかりと描いてあって、目に気持ちいい。
 衣装といえば、少コミではいまウィングカラーのシャツが大人気らしい。いったい何号連続で見たかわからない。
 あと、どうでもいいが、保護対象を拳銃の射線上に置かないでほしい(2ページ目)。
 採点:★★★★☆
 
新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第20回
 あらすじ:馬鹿話。
 採点:★★☆☆☆
 
池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第9回
 あらすじ:彼氏役()をアピールする回想。司の学校のチームとの練習試合を開始。
 体の動きがサッカーになってない、と書くのも飽きたが書く。あと、23ページ目の主人公()のプレーは一発退場ものだ。
 採点:★☆☆☆☆
 
・悠妃りゅう『恋するふたりの蜜なやりかた』連載第4回
 あらすじ:彼氏役と初詣。
 少コミでは彼氏役はなんらかの権力者であることが多いが、この作品の彼氏役はかなりロースペックな部類に属する。なのに話の作り方はハイスペック権力者とあまり変わらないので、全体にギクシャクしている。
 採点:★☆☆☆☆
 
・美桜せりな『源氏ものがたり』読み切り
 あらすじ:宇治十帖の浮舟。大君も強姦も抜きで、身投げの前で終わり。
 強姦はともかく大君を抜きにしてしまうのは、さすがにどうか。60ページもあるのに、大君の件が入らないとは思えない。薫の重さが出るところを抜かしては、薫がただの退屈な男になってしまう。
 採点:★★☆☆☆
 
・車谷晴子『アイドル様の夜のお顔』最終回
 あらすじ:アイドルの彼氏役とデート、ファンに見つかりそうになる。
 これといった波乱もなく、いちゃついているまま終わった。
 『めちゃモテ・ハニィ』といい、最近の少コミは波乱の展開を嫌うのだろうか。それなら癒し系の彼氏役がもっと増えてもよさそうなものだが。
 採点:★☆☆☆☆

第15回に続く

Posted by hajime at 2006年12月06日 22:48
Comments
Post a comment






Remember personal info?