おたよりをいただいている。
「このあいだ初めて少コミを読もうとしたら、読めませんでした。まんがが読めない人の気持ちが初めてわかりました」(東京都・TきもりRうさん)。
おそらく育ちの問題です。私は講談社系の少女まんがが読めません。
では2007年第1号のレビューにいこう。
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第9回
あらすじ:作りすぎた発明品を売りさばくために主人公がアイドル活動。
絵がごちゃごちゃしてわかりにくい、などと繰り返すのも飽きたが一応書いておく。
彼氏役(はじめ)の場当たり的な攻撃性が、どうにも魅力的でない。連載第7回でも、彼氏役が後手後手に回ることのダメさを咎めたが、繰り返して出現するところをみると、あれは単純ミスではなかったらしい。
場当たり的だからといって即ダメとはいえない。彼氏役が馬鹿なら別にそれでいい。が、この彼氏役は馬鹿としては描かれていない。
そもそも、彼氏役の魅力として攻撃性を描くこと自体、ほとんど賛成できない。
「馬鹿な子ほどかわいい」式の欠点として攻撃性が描かれるならいい。このパターンでは、彼氏役の攻撃性は空回りしたり逆効果になったりして、それを主人公がかわいいと思う、という展開になる。
採点:★☆☆☆☆
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第12回
あらすじ:彼氏役(大輝)の家に同棲する二人。そこへ彼氏役の姉が襲来。
保護者兼ライバル(和也)を、別の女にくっつけて片付けてしまった。つまり波乱展開の材料を捨てたということだ。結婚がどうのと言い始めたところをみると、さっさとこの連載を切り上げて次に行くつもりだろうか。
採点:★★☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第32回
あらすじ:逞が頼の事情を察する。逞が校内放送で繭への愛をしゃべってしまう。
逞が親族について調べようとしたときの本がレヴィ・ストロース(文化人類学)というところに、21世紀を感じる。これが30年前ならフロイト(精神分析)だった。30年後には社会学の本になるだろう。知の構造変化は文化の全領域に及んでいる。
話は普通に進んでいる。毎回毎回うまく手をつなぐものだと感心させられる。
採点:★★★☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第11回
あらすじ:主人公の誕生日。彼氏役(芯)と祝いたいが、父親も誕生パーティーを楽しみにしている。
敬士のポジションが乙女ゲーを思わせる。少コミ的な少女まんがではほとんど見かけないポジションだ。
このポジションに美男をずらりと並べると、藤本ひとみのマリナ・シリーズになる。少コミでは長期連載が難しいので実現は難しいとは思うが。
逆に、ギャルゲー等でこのポジションに美女をずらりと並べたケースは思い出せない。未来のギャルゲーか。
採点:★★★☆☆
・天音佑湖『雪の輪舞曲』読み切り
あらすじ:両親をなくして天涯孤独になったかと思われた主人公。しかし大金持ちの祖父がいて引き取られる。その祖父のほかの親族は、思わぬ相続人の出現を喜ばない。主人公を助ける執事が彼氏役。
衣装まんがである。華やかなドレスがしっかりと描いてあって、目に気持ちいい。
衣装といえば、少コミではいまウィングカラーのシャツが大人気らしい。いったい何号連続で見たかわからない。
あと、どうでもいいが、保護対象を拳銃の射線上に置かないでほしい(2ページ目)。
採点:★★★★☆
・新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第20回
あらすじ:馬鹿話。
採点:★★☆☆☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第9回
あらすじ:彼氏役(司)をアピールする回想。司の学校のチームとの練習試合を開始。
体の動きがサッカーになってない、と書くのも飽きたが書く。あと、23ページ目の主人公(翠)のプレーは一発退場ものだ。
採点:★☆☆☆☆
・悠妃りゅう『恋するふたりの蜜なやりかた』連載第4回
あらすじ:彼氏役と初詣。
少コミでは彼氏役はなんらかの権力者であることが多いが、この作品の彼氏役はかなりロースペックな部類に属する。なのに話の作り方はハイスペック権力者とあまり変わらないので、全体にギクシャクしている。
採点:★☆☆☆☆
・美桜せりな『源氏ものがたり』読み切り
あらすじ:宇治十帖の浮舟。大君も強姦も抜きで、身投げの前で終わり。
強姦はともかく大君を抜きにしてしまうのは、さすがにどうか。60ページもあるのに、大君の件が入らないとは思えない。薫の重さが出るところを抜かしては、薫がただの退屈な男になってしまう。
採点:★★☆☆☆
・車谷晴子『アイドル様の夜のお顔』最終回
あらすじ:アイドルの彼氏役とデート、ファンに見つかりそうになる。
これといった波乱もなく、いちゃついているまま終わった。
『めちゃモテ・ハニィ』といい、最近の少コミは波乱の展開を嫌うのだろうか。それなら癒し系の彼氏役がもっと増えてもよさそうなものだが。
採点:★☆☆☆☆