フィクションの倫理について。
まず、読み手と書き手の態度から。
説教くさいフィクションは、倫理的に問題がある。「ここから教訓を引き出せ」と要求する態度には、なにかしら邪悪なものがある。書き方だけでなく読み方にも同じ倫理が適用される。フィクションから教訓を引き出そうとする読み方も、やはり邪悪だ。「性描写」が「ソフト」だの「ハードコア」だのと云々する態度は、ポルノ業者の片棒担ぎとしか思えない。
フィクションとは、他の手段をもってする説教の継続ではない。なんの継続でもない。美と快がすべてだ。そのためにフィクションは嘘を描くのだ。
美と快による評価を逃れようとする態度は邪悪だ。そのような態度は、フィクションを成り立たせるための基本的なルールに反している。ニセ托鉢やインチキ募金のようなものだ。
もうひとつ、因果関係の倫理がある。
ありうべからざる奇跡として「強姦されてハッピーエンド」が起こるフィクションは、まさにそのありえなさのゆえに、美しく快い。だが、物理法則のように当然に「強姦されてハッピーエンド」が起こるフィクションは、なにかしら邪悪だ。
昔は、読み手と書き手の態度に問題があることが多かった。今では、因果関係に問題があることが多い。少コミも例外ではない。
では第6号のレビューにいこう。
・水波風南『狂想ヘヴン』連載第9回
あらすじ:彼氏役(蒼以)が乃亜の弱点を突く。水泳部の活動再開が成り、頭数あわせのため乃亜が水泳部員にさせられる。
罪について。
水泳部を潰した工作についての蒼以の反応をみるかぎり、乃亜の悪行三昧は、水泳部問題にとどまるものではなさそうだ。
この第9回で蒼以は、乃亜に反逆しながらも、乃亜の過去の悪行三昧を不問に付す態度を見せた。水泳部を潰した工作を公にしないままで、水泳部を活動再開させたのだ。
この時点で蒼以は、乃亜の過去の悪行三昧の共犯者になった。「脅されて従っていた」という言い分はもう通らない。もし水結が蒼以に同調して、乃亜の過去の悪行三昧を不問に付すなら、水結も共犯者だ。おそらく、そういう展開になるだろう。
そして、もっとも重要なこと――蒼以には、自分が共犯として罪を重ねているという意識がまるでない。演出上も、共犯の罪の存在など、まったく読み取れない。それどころか、乃亜の過去の悪行三昧までもが消え失せたかのように読める。
目を疑う、とはこのことだ。
水泳部問題に限っても、被害をこうむったのは、水結と夏壱だけではない。汚名を着せられたままの元水泳部員たちがいる。彼らを存在しないことにするつもりなのか。
作者には、いわゆる「罪の意識」というものがまるで欠けているのではないか、と思わざるをえない。目の前の仲間が許してくれればオールオッケー、目の前にいない被害者なんか幽霊以下、という意識でいるのではないか。
もし次回、水結と夏壱が共犯者になることを拒み、乃亜の弾劾へと話が進むなら、納得できる。この展開では、蒼以が乃亜をかばうことになるが、その過程を通じて、乃亜を強力なライバルとして位置づけ直すことができる。が、そうはならないだろう。
採点:☆☆☆☆☆
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第13回
あらすじ:寮で風邪が流行。サッカー部員たちのアピールタイム。
男子校潜入モノの醍醐味、バレる・バレないのスリルが足りない。
採点:★★☆☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』連載第15回
あらすじ:主人公(彩華)と彼氏役(芯)の仲を疑う当て馬(涼)。キスシーンを目撃されるが強引に乗り切る。そんな涼を彩華へとけしかける純。
涼の味がうまく押し出せていないのが惜しい。
採点:★★★☆☆
・麻見雅『大神さん家のオオカミくん』新連載第1回
あらすじ:血のつながらない兄二人と同居することになった主人公。
絵や話や演出をどうこう言う以前に、生理的に好きになれない。前世の縁が悪かったのだろう。
採点:☆☆☆☆☆
・車谷晴子『極上男子と暮らしてます。』連載第3回
あらすじ:主人公と彼氏役が両思いに。
麻見雅といい車谷晴子といい、「強引な彼氏役を描くのは無能な作家」という法則を唱えたくなってきた。
採点:☆☆☆☆☆
・しがの夷織『めちゃモテ・ハニィ』連載第16回
あらすじ:彼氏役はもうじき海外留学に行ってしまうと知った主人公。その事情を聞かされた当て馬(前回登場のパティシエ)が、主人公に迫る。
いよいよ連載を終わらせにかかったか。確かにこれは、とっとと次に行くのが正解だ。
採点:★☆☆☆☆
・藤原なお『JAPANラッキーガール』読み切り
あらすじ:悪運にとりつかれている(と信じている)主人公。幸運アイテム(と思い込んだ)のペンダントをもらうが、なくしてしまう。しかしペンダントなしでも彼氏役に告白して結ばれる。
そつなくまとめている。だが、彼氏役に味が足りない。
採点:★★★☆☆
・くまがい杏子『はつめいプリンセス』連載第13回
あらすじ:貧乏デート。
健康ランドといい、オチの傘といい、冴えている。
採点:★★★☆☆
・新條まゆ『愛を歌うより俺に溺れろ!』連載第24回
あらすじ:男海山高校の姫コンテストで秋羅がライバルと対決。
手筋手筋で手堅く進んでいる。
採点:★★☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第36回
あらすじ:繭が生きていた。昂に死亡フラグ。
わけがわからない。
・死体のそばで「愛してる」とぬかして気分を出す逞と繭
・なんの仕込みも説明もなく取り違えられている携帯電話
死について。
死が重々しく扱われている話のわりに、死体の扱いが驚くほど軽い。人ひとり死ぬ話をやっておいて、死亡フラグひとつ立てただけとは。
他人とはいえ死体に直面した逞が、自分の(そして照の)死を思って脅える、などといった手もあっただろう。それが、死体のそばで「愛してる」ときた。わけがわからない。
演出も無理がある。ありていにいって、知能の低いサルのような読者だけを残すような演出だ。もしかすると単行本で改稿するつもりで描いたのだろうか。
採点:☆☆☆☆☆ 本当は採点なしにしたい
・山中リコ『キミをいただき!』読み切り
あらすじ:テストで万年2位の主人公は、万年1位の彼氏役を意識している。それは彼氏役の思うつぼだった。
話が雑然としていて、まとまりや要点がない。
採点:★☆☆☆☆
・咲坂芽亜『姫系・ドール』最終回
あらすじ:主人公がモデルになってコンテストに出場したら、トラブルが発生。しかし彼氏役と二人で乗り切る。
前回に引き続き、絵のテンションがおかしい。
採点:★★☆☆☆
第19回につづく
Thank you so much~~~~~~~~~~~~~~~I check your page twice a month~hehee~get some informations~~~thanks for sharing~well,it semms that 狂想ヘヴン and 僕の初恋をキミに捧ぐ have nothing very new(nothing happenedtoo bad)i dont understand why he authors are trying to tell~lose the point~heehee~wanna see the next chps~thank you so much~vvvvvvvvvvvvvvv~
Posted by: 蕾 at 2007年02月21日 03:35こんにちは、少コミ早速よみました。
「僕の初恋~」なんですが、正直がっかりしました。「なんですかあれは?」状態です。中里さんの言う通り、演出に無理がありすぎます。事後で亡くなった子の扱いがひどいと思いました。
そして何故、あの状況で昴に複線を・・・?
山中リコの読みきりですが、背景の適当さに唖然としました。プロなんだからもっとちゃんと描いて欲しいものです。何故カラーをもらえるのか・・・
長々失礼いたしました。
Posted by: aya at 2007年02月21日 14:05