『チャンピオンREDいちご』なる雑誌を読んだ。表紙を見るかぎりは、よくある萌え系まんが雑誌のように見える。また中身も半分くらいはそうなのだが、残りの半分のなかに、本物が潜んでいる。
板垣恵介の作品には、「実はガチンコで強いプロレスラー」というモチーフがしばしば登場する。私はプロレスを知らないので実感はないが、きっとプロレスファンにとっては切実な夢なのだろう。『チャンピオンREDいちご』は、ある意味で、この夢をかなえている。「実はガチンコで強い萌え系まんが家」だ。バーリ・トゥードというべきルールで作品を描き、「笑い」や「感動」などと表現すれば下劣であるような、崇高な何かを達成している作家がいる。
もしかすると一部の少コミ作家も、ガチンコで強いのだろうか。
では2009年第1号のレビュー。
・蜜樹みこ『恋、ひらり』新連載第1回
あらすじ:彼氏役(月彦)は日本舞踊(?)の家の息子。
表紙のアオリに「大型新連載」とあるので、4回以上続くか。
彼氏役の見せ場が舞踏とは、作者の画力が試される選択。
評価:★★★☆☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第8回
あらすじ:主人公(爽歌)が演劇部の稽古中の事故で、演劇部の先輩(当て馬?)とキス、それを彼氏役(輝)に見られた模様。
画面が全体に整理されておらず、盛り上がりに欠ける。
評価:★★★☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第30回
あらすじ:期末試験の成績問題で自信を失う主人公(つばき)。ほかの女に彼氏役(京汰)を奪われるという恐れにとらわれ、性行為を覚悟のうえで京汰の家を訪れようとする。
セックスしてもしなくても面白くなるサスペンス展開。
評価:★★★★☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第7回
あらすじ:彼氏役(篤哉)が風邪を引き、主人公(遥香)がお見舞いに行く。さらに遥香はそのまま篤哉の家に泊まろうとする。
平たく進んだ。
評価:★★★☆☆
・くまがい杏子『はじまりの、キス。』読み切り
あらすじ:意地悪な幼馴染(彼氏役)のことが好きな主人公。彼氏役に「デートの練習」と称して連れ出され、告白させられる。
彼氏役が魅力に欠ける。人物造詣があまりにもすっきりと一貫していて、葛藤や矛盾がない。そういえばこの問題は、しがの夷織にも見受けられた。
評価:★★☆☆☆
・市川ショウ『空色恋色』連載第2回
あらすじ:主人公(空)は学校のドッジボール大会(クラス対抗)へとクラスをひっぱる。
このドッジボール大会の話が、彼氏役との恋とどう関係あるのか、よくわからない。
評価:★★☆☆☆
・千葉コズエ『ひとりぼっちはさみしくて』連載第4回
あらすじ:彼氏役が、自分の親との複雑な関係を語る。主人公が告白して結ばれる。
「トラウマ語り→告白」という流れは、少女まんが全般でよくあるパターンのひとつだが、私にはこれが美しいとは思えないし、切実さも感じられない。トラウマは謎としてひっぱるほうがいい手ではないかと常々思う。
評価:★★★☆☆
・白石ユキ『プラスチック・ガール』連載第3回
あらすじ:主人公(マヤ)が彼氏役(ピエール)に告白。
主人公の行動が実に滑らかに狂っていて、『チャンピオンREDいちご』のフルパワーな作品を連想した。
評価:★★★☆☆
・藍川さき『僕から君が消えない』連載第5回
あらすじ:主人公(ほたる)が風邪を引き、彼氏役(康祐)がお見舞いに来る。そこへ、康祐を慕うクラスメイトが同じくお見舞いに来て、二人が一緒にいるところを見られる。
クラスメイトは別に主人公にとっての重要人物ではなく、なにが問題の焦点なのか、さっぱりわからない。
評価:★★☆☆☆
・悠妃りゅう『メガネの恋わずらい』読み切り
あらすじ:彼氏役と主人公は中学の同級生だったが、高校でやや疎遠になっていた。主人公が彼氏役に勉強を教えてもらうのをきっかけに再び接近、彼氏役が告白。
あらすじを見るとそれなりにまとまった話のようだが、実物はまとまりがない。
評価:★★☆☆☆
・咲坂芽亜『ギャル華道』連載第13回、次回最終回
あらすじ:彼氏役(楓)が打ち込んでいる仕事は、主人公(つぼみ)を喜ばせるものだった。ライバル役(唯子)は楓をあきらめる。
当て馬登場が第11回なのに、第14回が最終回というのは、いかにもバランスが悪い。打ち切られたか。
評価:★★☆☆☆
・車谷晴子『ぜんぶ ちょーだい』最終回
あらすじ:主人公(姫恋)がしばらく彼氏役(蓮)の家で暮らす。蓮が姫恋にプロポーズ。
きれいにまとまった。
評価:★★★☆☆
第61回につづく