「同時に、同法は、児童を性欲の対象としてとらえることのない健全な社会を維持するという社会的法益の保護をもその目的としているものと考えられる」と回答
子供の人権年表の進行は止まりそうもない。
願わくば、チャドルの着用を強制される40年後の子供たちに向かって、「私はできるかぎり抵抗した」と言い訳できるようになりたい。もし万が一、40年後の私が、「子供がチャドルをかぶるのは当たり前だ」などとぬかすような老人になっていたら、問答無用で殺してほしい。
加藤典洋『日本の無思想』(平凡社)を読んだ。254~255ページから:
僕もまた、あの社会的な考え方というのが、嫌いだったのです。いまも嫌いです。弱い人を助けましょう、という考え方が、「違う」と思うのです。
むろん僕は古代ギリシャ人ではありませんから、ただ弱い人間は強くなるべきだ、弱い人間に同情することは彼を侮蔑することになると、ただちには思いません。そうではなく、いま、「弱い人を助けましょう」というような言い方で語られることが、もう一度解体されて、そうではない言い方で語られ、聞かれるようにならない限り、ここにいわれようとする人間の願いは、普遍的なものにならないだろうと思うのです。
ではどうすれば普遍的になるか、という問いを提起し、ある程度まで答えたのが本書である。
著者の答えは、私情・私利私欲にもとづく公共性の再建である。
言論は、飲んだり食ったりセックスしたりと同じく、人間生活にとって根源的な生きる喜びであり、古代ギリシャのポリスでは自由市民はまさにそのように言論を堪能していた。しかし現在では、人間生活における「社会的なもの」があまりに大きくなり、言論が「社会的なもの」の物差しで計られる(=支配される)という事態が生じている。この支配を打ち破り、言論の根源的な喜びをこそ根底に据えた社会を築く必要がある。そのような言論は、根源的なものであるからには、私情・私利私欲にもとづくものになる。私情・私利私欲にもとづく言論が飛び交い、しかもそのような言論こそが社会を支えている状態、それが著者の目指す公共性である。
――と説明してみたら、「嫌儲」という言葉が頭に浮かんだ。
貨幣とその流れは、「社会的なもの」の最たるものだ。嫌儲という現象は、「社会的なもの」の支配に対する闘争なのではないか? 「社会的なもの」に植民地化されることを拒み、言論の根源的な喜びを根底に据えたコミュニティを維持するためのものなのではないか?
インターネットは言論の流通コストを極度に下げ、言論の流れと貨幣の流れを分離することを可能にした。この状況に対する反応として、嫌儲は当然の現象だろう。
しかし、嫌儲は革命には成長しない。いみじくも「嫌」の文字が示すとおり、「社会的なもの」への反発と逃避でしかない。
話を元に戻すと、著者は公共性のありかたを示すが、それを実現する革命へのロードマップは示さない。とはいえ、ロードマップを示しての革命はみな悲劇を生んできたので、適切な態度ではある。
著者の各論はともかく、公共性についての構想はまさに私の意見だ。ぜひこの革命を起こしたいのだが、とりあえず私に今できるのは、ヒャハハハハハと笑いながら愉快なことを書くことだけだ。というわけで、ヒャハハハハハと笑うたびに「また一歩革命に近づいた」と信じることにしよう。
付録に別冊が2冊。「天音佑湖とあゆみ凛も持ってこい!」と叫んで、藤中千聖だけ読んだ。
では2009年第3・4合併号のレビュー。
・くまがい杏子『苺時間』新連載第1回
あらすじ:主人公(市子)は高校に入学、寮に入るはずだったが手違いで入れず、彼氏役(蘭)の住む部屋に回される。
彼氏役に魅力がない。
評価:★★☆☆☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第9回
あらすじ:ライバル(アキラ)は彼氏役(篤哉)の昔の彼女で、今でも篤哉のことが好きだという。アキラは主人公(遥香)と篤哉の関係を知り、「バラされたくなければ私を恋人にしろ」と篤哉を脅す。
彼氏役のミステリアスな魅力が前面に出てきた。
評価:★★★☆☆
・蜜樹みこ『恋、ひらり』連載第3回
あらすじ:主人公(純恋)は彼氏役(佳月)の社会的地位を実感し、遠い人のように感じる。
展開が遅い。
評価:★★★☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第32回
あらすじ:成績問題のため、クリスマスイブを自宅で勉強して過ごす主人公(つばき)。彼氏役(京汰)にメールで呼ばれて出て行くと、つばきが行きたがっていたクリスマスイベントに連れていくという。
成績問題をかなり引っ張るつもりらしい。
1月5日発売の回にクリスマス話とは、計算間違いをやったのか。
評価:★★★☆☆
・ミヤケ円『ワタシの隣にキュートな君』新連載第1回
あらすじ:当て馬(優)は生徒会長の権力を笠に着て主人公(マリカ)に言い寄る。そこへ助け舟を出した彼氏役(湧士)は、実はひそかにファンシーなものに目がない性質だった。
構成上、第一印象の男が当て馬というのは疑問だ。
評価:★★☆☆☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第10回
あらすじ:主人公(爽歌)と彼氏役(輝)が恋人同士に。
主人公はどうやらずっと眼鏡のままらしい。進歩というものを久しぶりに目撃した。
評価:★★★☆☆
・千葉コズエ『ひとりぼっちはさみしくて』連載第6回
あらすじ:バンドに誘われて主人公(詞央)は迷うが、彼氏役(直)が強引に引き離す。その夜、詞央は直に隠れて抜け出し、バンドのところへ向かう。しかし実は直が後をつけていて、詞央との決別の意を表す。
やはり前回の私の予想は外れた。彼氏役が万能でない話は、少コミでは許されないらしい。
展開を速くしようとしてか、話が強引すぎる。第6回ということは2巻以上になるわけで、ここで無理をする理由はあまりないはずだが。
評価:★★☆☆☆
・真村ミオ『セツナユキ』連載第2回、次回最終回
あらすじ:主人公は彼氏役から真面目にスノボを教わって仲良くなり、キスする。しかし主人公が家に帰ってから彼氏役に電話すると、回線の契約を切られていた。
スノボと恋愛の結びつきが弱い、というのは言いっこなしか。
評価:★★★☆☆
・藍川さき『僕から君が消えない』連載第7回
あらすじ:主人公(ほたる)は彼氏役(康祐)とデートの約束をするが、友人(ユカコ)の策略により、ほたるは待ちぼうけを食う。待ち続けて体調を崩したほたるの前に、当て馬(駆)が通りがかる。
ユカコの味が薄いせいか、盛り上がりに欠ける。
評価:★★☆☆☆
・杉しっぽ『冷え性男子攻略法』読み切り
あらすじ:主人公は平熱が高い体質。それを知った彼氏役は、主人公にべったりくっついて人間カイロとして使う。
彼氏役が、いわゆる俺様タイプの劣化コピーで、味が薄い。
評価:★★☆☆☆
・さくら芽依『やくそく指輪』読み切り
あらすじ:恋人(男)からビーズの指輪をもらってつけるのが流行している学校。彼氏役はその指輪を作る名人で、人に頼まれて指輪を作っている。主人公は彼氏役から指輪をもらいたい(=告白されたい)と思っている。
彼氏役の動機の因果関係がさっぱりわからない。
評価:★☆☆☆☆
・白石ユキ『プラスチック・ガール』最終回
あらすじ:主人公(マヤ)は妨害にめげず、彼氏役(ピエール)に助けられて、オーディションに優勝する。ピエールは日本でマヤとともにモデル業を再開する。
アイディアが足りない。
評価:★★☆☆☆
第63回につづく
グレゴリオ暦で新年を祝う皆様におかれては、あけましておめでとうございます。
冬コミにて香織派のスペースにお越しくださった皆様に厚く御礼申し上げます。