1年ほど前、ノベルス・文庫作家人気番付の全データ公開を予告した。予告には「年内を目指す」と書いてあるような気がするが、私はシャルル(マリナシリーズ)ではない。
この予告から今までのあいだに、いろいろなことが起きた。
・計算にバグがあり、負けが不当に重くカウントされていたことが発覚
たとえば北方謙三や中里融司がこれで割を食っていた。北方謙三は『水滸伝』のヒットもあり、現在トップ20に食い込んでいる。
・計算方法を変更、BL作家人気番付と同様のものに戻した
上記のバグを直したところ、人気変動に対する追従性が低すぎると感じた。たとえば予告でトップのあさぎり夕はここ数年かなり負けている。この変更により、近年連勝中の鎌池和馬や今野緒雪が浮上し、あさぎり夕や神坂一が沈んだ。
では、お楽しみいただきたい。
作家人気番付
『やさしいプログラミング入門』といったタイトルの本を見るたびに、『鈍才の数学』のことを思い出す。
これは中学か高校のとき教師から聞いた話だ。
かつて、『鈍才の数学』という学習参考書を書いた人がいた。著者がいうには、「天才にとって数学は簡単なので、鈍才が数学に苦しむ理由がわからない。しかし自分は鈍才なので、それがわかる。だから天才よりも私のほうが、鈍才の読者諸君をうまく教えることができる」。納得できる話だ。本の内容も大変優れていた。しかし『鈍才の数学』はまったく売れなかった。そこでタイトルを『英才の数学』に変えたところ、ただちにベストセラーになり、数学の学習参考書の定番になった。どうやら、学習参考書を選ぶときに、自分を鈍才と認めることのできる人は少ないらしい。
『やさしいプログラミング入門』には、『英才の数学』的なごまかしを感じる。数学もプログラミングも、ほとんどの人にとっては難しいものなのに、それを認めていない。『鈍才の数学』の精神でもって『難しいプログラミング入門』と銘打った本はないものか。もしあれば、それはどんなものになるだろう。
プログラミングのどこが難しいのか。逆にいえば、どこが易しいのか。独断で言ってみる。
易しい例:
・チューリングマシン(TM)は易しい。状態、メモリアドレス、実行順序などの概念は易しい。アセンブラは、理解するだけなら、一番易しいプログラミング言語である。
・参照透明な式は易しい。表計算は、関係や状態だけで実行順序がない、一種の純粋関数型言語といえる。同様のことはHTMLにもいえる。
難しい例:
・破壊的なTMの上で、参照透明な式が「評価」されることを理解するのは、難しい。
・実行順序が半順序になるケース(共有メモリと同期による並行プログラミング)は難しい。実行順序があるプログラミング言語のなかでは、半順序なるものを想定することさえ難しい(演算子の評価順序など)。
本質:
・原理的に異なる2つの領域が混じるときに難しさが発生する。実行順序のある領域とない領域は、片方だけなら易しいが、混ぜると爆発する(式の評価、副作用、半順序)。
『難しいプログラミング入門』では、2つの異なる領域をそれぞれ独立して教えたあとで、2つを混ぜることになるだろう。たとえばこんな具合だ。
第1章:チューリングマシンと入出力
Z80のアセンブラをいじりながら、TM、入出力、データ構造の概念を学ぶ。簡易的な電卓を作る。
第2章:表計算、HTML、SQL
表計算とHTMLとSQLをいじりながら、関係と状態の概念を学ぶ。
第3章:表計算の実装
Z80のアセンブラで簡易的な表計算ソフトを作る。
読者はほぼ全員、プログラミングがどれほど難しいものかを思い知らされつつ、第3章で爆死するだろう。「あたまじゃわかっているんだが」とはこのことだ。2つの領域をどちらも完璧に理解しているのに、その混合物を思い描くことができないという、悪夢のような体験である。
C言語のポインタの難しさも、同じ本質から生じている。C言語のポインタという概念は、状態やメモリアドレス(TM領域)と型(コンパイラ領域)を混ぜている。
再帰の難しさも同じだ。コールスタックは、実行順序と変数スコープを混ぜている。
「プログラミングができる」と「プログラミングの難しさを知っている」は、まったく違う。後者のほうがより重要で、面白い。
1. 平野 文:『うる星やつら』ラム役の声優
2. 幸田 文:幸田露伴の娘
3. 平野 綾:涼宮ハルヒ役の声優
1と2の組み合わせにより「ひらの あや」という音が1へと誘導され、3の字面がブロックされて出てこない。
笙野頼子『幽界森娘異聞』(講談社文庫)を読んだ。森茉莉を(かなり忠実に)モデルにした作家・森娘のありようを笙野頼子が探求する、という話である。
本筋とは無関係に気になったこと:
・森茉莉の父親:森鴎外
・笙野頼子の父親:富裕な実業家
・栗本薫の父親:高度成長期の大企業の重役
・佐藤亜紀の父親:富裕な実業家
(栗本薫は途中で長々と引きあいに出される。佐藤亜紀は解説を書いている)
気になっただけで意味はない――と格好つけたかったが実はある。私の側に。
たったこれだけの共通点でもって、「同類どもめ」と思ってしまう人間がこの世には存在する。少なくともここに一人いる。「父の娘」の父でも娘でもないことを、喜びも悲しみもしない私だが、どういうわけか、そういうアングルでものを見てしまう。あまりにも無自覚な「父の娘」をひとり、長く身近に見てきたせいかもしれない。「父の娘」同士で乳繰りあってなにがわかるものか、と思ってしまう。
まだ文学者がスターだった頃、まだ太宰が生きていた頃、「インテリ男性同士で乳繰りあってなにがわかるものか」と思っていた人はたくさんいただろう。それはもちろん持たざる者のひがみにすぎないのだが、ひがみは逆恨みになり、見当違いの時と場所で噴出する。著者がかねて問題にしている純文学不要論は、そういう逆恨みの噴出のように思える。
だとすれば、いずれ「父の娘」の番もくるのだろう。そのときの自分が、逆恨みをぶちまける間抜けを演じていないことを祈る。
次回予告、千葉コズエの新連載のアオリ、「麻衣の彼氏は スーパー受験生のゆーくん」というのが面白い。どうすると受験生がスーパーになるのか考えてみる。
・受けるのは東大理3後期だけ、ほかは一切受けない
スーパーだが受験生というよりチャレンジャーだ。とはいえ理論的にはありうることらしい。
・全国模試で連続トップ、3連覇を狙う
本番よりも模試のほうを優先していそうなところがまるで『とどろけ! 一番』でスーパーだ。
・『ドラゴン桜』なみの底辺からのアタック
これが一番シビアにスーパーで、女といちゃついている暇はなさそうだ。
では第20号のレビューにいこう。
・池山田剛『うわさの翠くん!!』連載第27回
あらすじ:彼氏役(司)と当て馬(カズマ)が会い、敵役に注意するよう促す。司は現在の学校でサッカーを続けることを決める。
何巻まで続くのか知らないが、話がさっぱり進まない。
採点:★☆☆☆☆
・車谷晴子『危険純愛D.N.A.』連載第3回
あらすじ:デートを中断させたのをきっかけに、彼氏役(千尋)が主人公(亜美)に接近、亜美も千尋に惹かれる。
3回目にしてようやく女装設定が少しだけ利用された。
これも例によって例のごとく、敵役(臣吾)をどう捌くかが難しい形だ。
採点:★★☆☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第2回
あらすじ:髪切り事件でクラスから孤立する主人公(つばき)。それをテコにして彼氏役(京汰)がデートを迫る。
つばきの心理が重苦しい。作者の意図はわかるが、読者がついてこられるのかどうか。私もこのレビューがなければ脱落していると思う。
採点:★★★☆☆
・悠妃りゅう『こい・すた』連載第2回
あらすじ:主人公(雫)が好きだった男の前でだけ、つきあっているふりをしてみせる彼氏役(空)。そこに別の男(護国寺)が現れて雫に告白する。それがきっかけで雫は空に告白する。
少コミレビューを始めてまだ2年も経たないのに、「つきあっているふり」という設定を何度見たかわからない。そして、「つきあっているふり」という状況から、印象的なものを引き出した例を見たことがない。つまり便宜的なものに終始している。
護国寺の扱いを軽くしたのはうまい。捌ける形になっている。
採点:★★☆☆☆
・青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』連載第50回
あらすじ:いちゃいちゃする逞と繭。逞は心臓移植の決意を宣言する。
7ページ目、喫煙する昂とその友人を見て、度肝を抜かれた。中高年向けならともかく小中学生向けのまんがで、格好いいとされている登場人物が、紙巻きタバコ? 昭和か!
今回の引き伸ばしっぷりを見るかぎり、残すところ8~9回には見えないので、11巻突入だろう。
採点:★★★☆☆
・くまがい杏子『放課後オレンジ』連載第4回
あらすじ:陸上部のマネージャの市川先輩はいつも彼氏役(翼)の弁当を作ってきている。それを見た主人公(夏美)は自分も翼のための弁当を作ろうとするが、うまくいかない。その必死な様子を見た滉士が、自分も走り高跳びをやると宣言。
扉絵に話数が書いていない。編集のミスだろうか。
おむすびは揚げ物や煮物よりも難しい、と思うのは私だけだろうか。作り方が単純なもののほうが、「コツ」の差が如実に出てしまう。
感情の流れが自然で、共感できる。絵の説得力も素晴らしい。
採点:★★★★☆
・咲坂芽亜『姫系・ドール』連載第11回
あらすじ:彼氏役(蓮二)が父親とのトラブルを抱えているらしいことが示される。主人公(歩)は自分に足りないものを自覚し、それを手に入れるために日本に戻ると宣言する。
次回最終回の表記を探したが見当たらないので、どうやら3巻(18話弱)まで続くらしい。
話に軸がないので、なにが起きているのかよくわからない。
採点:★☆☆☆☆
・しがの夷織『はなしてなんてあげないよ』連載第7回
あらすじ:主人公(京華)を人とも思わない敵役(鳴海)。しかし京華が彼氏役(大輔)に惚れているのを見て、京華を欲する。
主人公の保護者の兄二人はどこへ行った、と首をかしげる。
採点:★★☆☆☆
・新島由子『この夜の1つの恋に…』読み切り
あらすじ:仲間6人でのキャンプで、彼氏役が主人公に告白。
ティーンズラブ誌に載っているような実話原作系の話作りをしている。こういう話を読むと、少コミはドラマチック指向なのだと改めて認識させられる。
ちまちました話なので当然といえば当然だが、細部の作り込みがしっかりしていて破綻がない。
採点:★★★☆☆
・真村ミオ『クラッシュ☆』読み切り
あらすじ:学校では王子様の彼氏役。あるとき彼氏役を尾行していた主人公は、彼氏役がすさんだ本性を現すのを目撃し、そのまま彼氏役の別荘へと連れていかれる。「お前には本当の俺を見ていてほしい」でハッピーエンド。
世話焼きの権力的な嫌らしさを作者は意識していないらしい。主人公が彼氏役を弟と同じように世話しようとする(そしてうまくいく)、彼氏役の秘密の「本当の俺」を知っているのは主人公だけ、などなど。
話も工夫が乏しい。
採点:★☆☆☆☆
・織田綺『LOVEY DOVEY』最終回
あらすじ:全員集合で楽しく終わり。
これといった逆転劇もなく、適当にまとめて終わった。
採点:★★★☆☆
・白石ユキ『お嬢様のヒミツ・』最終回
あらすじ:主人公(晴)が彼氏役を意識する。その直後、晴の父親の転勤が決まり、再び引っ越すことになる。しかし晴は彼氏役と離れ離れになるのが嫌で、工事現場で働いて自活しようとする。彼氏役はそれを見つけて、父親と一緒に行くように諭し、離れていても好きだと告白する。
バランス感覚がいいので、まんが的な誇張(工事現場でバイトする等)がよく効いている。
採点:★★★★☆
第33回につづく