2008年第22号のレビュー。
・千葉コズエ『ひとりぼっちはさみしくて』新連載第1回
あらすじ:歌手に憧れ、ひっそりと作詞に励む主人公。彼氏役に歌詞と歌を褒められる。
ぎこちない。3回連載でないのなら、主人公の眼鏡の扱いが試金石になるだろう。眼鏡に否定性を割り振ったうえで眼鏡を否定する、というやりかたの無間地獄的な性格に気づかない作者ではない。
評価:★★☆☆☆
・咲坂芽亜『ギャル華道』連載第10回
あらすじ:主人公(つぼみ)は彼氏役(楓)の学校で、楓の知人(ライバル、唯子)に出くわし、劣等感に駆られる。
唯子の魅力が足りない(スペックが高いだけに見える)ので、登場人物がみな陰湿で愚かしく思える。
評価:★★☆☆☆
・車谷晴子『ぜんぶ ちょーだい』連載第8回
あらすじ:主人公(姫恋)と彼氏役(蓮)が学校の屋上に閉じ込められる。
平たく進んだ。
評価:★★★☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第27回
あらすじ:主人公(つばき)は妹にけしかけられ、性行為を意識するようになる。
14~15ページの意味がわからない。少コミの彼氏役は浮気しないものと決まっているが。
評価:★★★☆☆
・藍川さき『僕から君が消えない』連載第2回
あらすじ:主人公(ほたる)は彼氏役(康祐)に惹かれはじめる。その矢先、ほたるが二年前から康祐の兄(教師、駆)を追いかけていたことを康祐が知る。
画面がごちゃごちゃしている。少々つめこみすぎか。
評価:★★★☆☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第5回
あらすじ:主人公(爽歌)は彼氏役(輝)に励まされ、いい調子で劇の主役をつとめはじめる。
輝が普通に魅力的、つまり少コミ的にかなり優れた彼氏役だ。
スタニスラフスキー式(=なりきり式)の演技描写は、『ガラスの仮面』のように長々と描写する話にしか向かないと思う。
評価:★★★★☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第4回
あらすじ:学校で秘密の恋。その秘密を知った当て馬(栄人)が、彼氏役(篤哉)のいるところで主人公(遥香)に告白。
いまどき校内禁煙でない学校があるのだろうか。それを抜きにしても、小道具にタバコを使うと、人物にポーズをつけるのがラクになるのだが、画面でラクをしたぶん登場人物が下品になる。下品な敵役にはぴったりだが、ミステリアスな彼氏役にはミスマッチだ。
評価:★★★☆☆
・ミヤケ円『横暴キングに極秘ラブ』読み切り
あらすじ:主人公と彼氏役は運動部の部長同士で、体育館の利用をめぐって利害対立がある。主人公が自分の部を利するために接近したと彼氏役に誤解される。
単純な話なのに、構成がまずく、わかりづらい。少女まんがの文法への理解が浅いのか。
評価:★★☆☆☆
・市川ショウ『それでもやっぱり君が好き・』読み切り
あらすじ:主人公は好きなアニメキャラに似た彼氏役と出会い、つきあいはじめる。
アイディアがもう一押し足りない。
評価:★★★☆☆
・悠妃りゅう『花嫁さまは16歳 2nd Season』連載第9回、次回最終回
あらすじ:旅先でいちゃいちゃ。
最終回の結婚式の前にいちゃいちゃ、という展開。
評価:★★★☆☆
・織田綺『箱庭エンジェル』最終回
あらすじ:彼氏役(桃)がアメリカに行く前日、桃ひとりのための卒業式を開く。数年後、桃と主人公(羽里)の結婚式で終わり。
この作者の作品を読んでいると、「アク」について考えさせられる。少コミのように狭い範囲で描く場合、神のごとき腕がなければ、どこかしら無理だったり過剰だったりしないと、大ヒットには至らない。この作者にはそれが足りないような気がする。
アクを出すテクニックとしては、作者自身の怨念や後悔を使う、というのが一般的だ。少コミではあまり見ないテクニックだが、見直してほしい。
評価:★★★☆☆
・山中リコ『アン☆ラッキーガール』最終回
あらすじ:散漫。
オチらしいオチがない。勇気ある行為ではある。
評価:★★☆☆☆
第58回につづく
私の新刊『どろぼうの名人』が明日18日に発売になります。
というわけで、告知ページを更新しました。
この『少コミを読む』を読むたびに「こいつの偉そうな態度には我慢ならん」とお思いの少コミ作家・投稿者諸氏へ朗報である。私の書いた小説『どろぼうの名人』が、10月18日に小学館ガガガ文庫から発売される。「さんざん偉そうな口を叩いておいて、自分で書くものはこの程度か」と溜飲を下げるチャンスがめぐってきたわけだ。
とはいえ、溜飲を下げたあと、レビューを書いてご自分のブログに載せる度胸と度量があなたにはおありだろうか。
では、2008年第21号のレビュー。
・藍川さき『僕から君が消えない』新連載第1回
あらすじ:主人公(ほたる)は新入生。その学校の教師(駆)にあこがれて入学してきた。彼氏役(康祐)は駆の弟で、ほたるの思いを察知する。
基本的に丁寧で読ませるが、事あるごとにおかしなファンクラブを出してミソジニーをばらまくのはどうしたものか。
評価:★★☆☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第26回
あらすじ:主人公(つばき)は彼氏役(京汰)の家に行って二人きりになり、京汰はすっかりつばきを抱くつもりでいたが、つばきは結婚式まで処女のつもりでおり、京汰も同じ考えだと思い込んでいる。
どうやら作者は「昭和女」を描くにあたって、ちゃんと昭和の少女まんがを調べたらしい。このパターン(結婚式まで処女のつもり)は昭和には定番だったのに、いつのまにか消えてしまっていた。懐かしい。
評価:★★★★☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第4回
あらすじ:主人公(爽歌)とライバル(ちひろ)が親しくなる。ちひろは学園祭の劇の主役の予定だったが、当日に熱を出して倒れ、爽歌が急遽代役となる。
平たく進んだ。
評価:★★★☆☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第3回
あらすじ:主人公(遥香)と彼氏役(篤哉)がデート。それを同級生に知られる。
篤哉の人物造形が、少コミとしては意欲的で面白い。
評価:★★★☆☆
・山中リコ『アン☆ラッキーガール』連載第2回
あらすじ:主人公(空)の家が火事になり、焼け出された一家ごと彼氏役(日向)の家の世話になる。
絵が下手なうえに雑だ。この作者は上達するつもりがなさそうだ。
評価:★☆☆☆☆
・車谷晴子『ぜんぶ ちょーだい』連載第7回
あらすじ:主人公(姫恋)と彼氏役(蓮)がデート。姫恋はいつものペースを保てない。
平たく進んだ。
評価:★★★☆☆
・咲坂芽亜『ギャル華道』連載第9回
あらすじ:稽古の予定を理由不明でキャンセルされて、主人公(つぼみ)が彼氏役(楓)の学校に潜入する。
メールに分単位での返答を期待するという人間の本能がこんな事故の原因になるわけだが、せめてまんがの中では、本能を反省する態度を希望する。
評価:★★☆☆☆
・悠妃りゅう『花嫁さまは16歳 2nd Season』連載第8回
あらすじ:当て馬(天理)が振られて海外に戻る。主人公(珠姫)は天理との思い出の品を処分しようとするが、彼氏役(辰牙)に「過去を捨てることはない」と止められる。
後半が長ったらしい。メリハリのつけかたに疑問がある。
評価:★★★☆☆
・真村ミオ『極上王子様』読み切り
あらすじ:優男の彼氏役に顔で惚れた主人公。「顔で男を選ぶような女は嫌い」とつれなくされるが、主人公は地道に追いかける。
少女まんがでは彼氏役はイケメンで当然なので、「イケメン」というものに対して無反省になりがちだが、そこに目をつけたアイディアが面白い。
評価:★★★☆☆
・織田綺『箱庭エンジェル』連載第20回
あらすじ:主人公(羽里)は彼氏役(桃)のモデルとしての実力と期待度を痛感する。羽里はアメリカで桃の重荷にならないよう、自分に力がつくまで先に行って待っていて欲しいと桃に頼む。
次回最終回かと思える流れだが、まだ続くらしい。なにをやるつもりだろう。
評価:★★★☆☆
・大谷華代『この特権はアナタだけ』読み切り
あらすじ:主人公は生徒会長で、激務の一週間を迎えようとしている。そこへ生徒会長のための健康管理係(彼氏役)がやってきて、主人公の世話を焼く。
彼氏役の味が薄い。
評価:★★☆☆☆
・蜜樹みこ『恋想のアリア』最終回
あらすじ:婚約者(神宮寺)は彼氏役(カノン)に愛される主人公(アリア)に嫉妬して暗殺者を差し向けていた。神宮寺がカノンをあきらめて終わり。
この終わりかたは、アンケートが取れなかったか。形はよかったが、アクが一押し足りなかったような気がする。
評価:★★☆☆☆
第57回につづく
2008年第20号のレビュー。
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第3回
あらすじ:主人公(爽歌)と彼氏役(輝)のいちゃいちゃ。ライバル(ちひろ)の恋心を影からアピール。
主役級を4人も動かせるのかと心配していたが、一人を後ろにひっこめておくことにしたらしい。正解だろう。
評価:★★★☆☆
・水瀬藍『センセイと私。』連載第2回
あらすじ:臨海学校で主人公(遥香)と彼氏役(篤哉)が接近。
10ページ目の遥香の憶測はあまりにも不自然だ。
評価:★☆☆☆☆
・山中リコ『アン☆ラッキーガール』新連載第1回
あらすじ:運と要領の悪い主人公(空)と、運と要領のいい彼氏役(日向)。
話の要素がバラバラの方向を向いている、つまり話として成立していない。
評価:★☆☆☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第25回
あらすじ:友人(深歩)は改めて主人公(つばき)の友達になりたいと言う。彼氏役(京汰)の取り巻きが、強姦未遂事件の後始末を図ってつばきと交渉し、その結果つばきは取り巻きを味方につける。
ここ数回、彼氏役を置いてけぼりで話が進んでいる。少コミには珍しい。
評価:★★★☆☆
・蜜樹みこ『恋想のアリア』連載第4回
あらすじ:主人公(アリア)と彼氏役(カノン)の過去話。婚約者(神宮寺)が怪しい行動に出て、アリアの身に危険が迫る。
アイディアが足りない。
評価:★★★☆☆
・咲坂芽亜『ギャル華道』連載第8回
あらすじ:当て馬(涼介)が強引に婚約話を進めようとするが、彼氏役(楓)に阻まれる。
なにがなんだか、よくわからない。
評価:★☆☆☆☆
・悠妃りゅう『花嫁さまは16歳 2nd Season』連載第7回
あらすじ:当て馬(天理)が主人公(珠姫)に告白。彼氏役(辰牙)がそれを目撃、割って入る。
辰牙はおそらく珠姫たちをつけていたのだろうが、このストーカーな行動パターンがどうにも気持ち悪い。
評価:★☆☆☆☆
・車谷晴子『ぜんぶ ちょーだい』連載第6回
あらすじ:主人公(姫恋)は意地を張って告白しない。彼氏役(蓮)は是が非でも姫恋に告白させると決める。
旋回軸が提示された。
評価:★★★☆☆
・織田綺『箱庭エンジェル』連載第19回
あらすじ:当て馬(飛鳥)が自分の思いにケリをつけるために主人公(羽里)に告白して振られる。
最終回に向けて、いろいろ片付けに入ったか。
評価:★★★☆☆
・服部美紀『完璧な君、鈍感なあなた。』読み切り
あらすじ:よくわからない。
画面構成にメリハリがなく、絵としての説得力がない。それに耐えて話を追っても、よくわからない。
評価:☆☆☆☆☆
・白石ユキ『スキって言っちゃ××なんです!』読み切り
あらすじ:主人公が告白のために出したメールが、アドレス違いで別の同級生(彼氏役)に行ってしまう。彼氏役は実は主人公のことが好きだった。
あらすじのアイディアは面白いが、彼氏役の人物造形がつまらない。猛烈なナルシストあたりのほうがよかったか。
評価:★★★☆☆
・くまがい杏子『放課後オレンジ』最終回
あらすじ:彼氏役(翼)が優勝して終わり。
昔、「部活ものの少女まんがは危険」と聞いたことがある。こういうことか、と思い知った。
評価:★☆☆☆☆
第56回につづく
また忙しくしているうちに3号分たまってしまった。2008年第19号のレビュー。
・水瀬藍『センセイと私。』新連載第1回
あらすじ:主人公(遥香)は春休みに彼氏役(篤哉)と出会う。新学期、篤哉は遥香のクラスの担任として赴任してくる。
長ったらしく感じる。画面構成のリズムの問題か。
評価:★★★☆☆
・くまがい杏子『放課後オレンジ』連載第26回、次回最終回
あらすじ:全国大会(全中)で、彼氏役(翼)と当て馬(滉士)が対決する。
恋愛の絡めかたが無理すぎる。
評価:★★☆☆☆
・池山田剛『好きです鈴木くん!!』連載第2回
あらすじ:主人公(爽歌)と彼氏役(輝)の紹介といちゃいちゃ。
少コミは、少女まんがというよりは、少女まんがのステロタイプなイメージ(ネット右翼の韓国人イメージと同レベルの代物)から逆算して作られた逆パロディだと思えることがある。眼鏡の扱いはその端的な例だ。眼鏡を否定的にしか扱わない、という方針を貫く少女まんが誌は、ほかに思いつかない。
評価:★★☆☆☆
・水波風南『今日、恋をはじめます』連載第24回
あらすじ:友人(深歩)が主人公(つばき)のピンチを救う。深歩は、自分がつばきと仲良くなった動機が不純なものであることを告白し、自分はつばきの友人ではないと言う。
奇手が飛び出した。ピンチ(強姦未遂)のさなかにつばきが突然眠ってしまう、という展開だ。強姦未遂の恐怖を引っ張らずに軽く流すための手だろう。これだけで終われば奇妙なだけだが、今後どこかに利いてくるなら妙手になる。
評価:★★★☆☆
・蜜樹みこ『恋想のアリア』連載第3回
あらすじ:婚約者(神宮寺)は主人公(アリア)に関心はなく、彼氏役(カノン)の裏切りへの罰として婚約したと述べる。カノンがアリアに告白。
話が軽い形で、含みが多く(急戦も持久戦もいける)、筋がいい。
評価:★★★★☆
・織田綺『箱庭エンジェル』連載第18回
あらすじ:彼氏役(桃)のアメリカ行きのスケジュールが確定する。主人公(羽里)は桃を追いかける決心を固め、桃と仲直りする。
最終回が見えてきた展開。形を作って終わりそうだ。
評価:★★★☆☆
・咲坂芽亜『ギャル華道』連載第7回
あらすじ:当て馬(涼介)の件で彼氏役(楓)と主人公(つぼみ)に一波乱。
彼氏役の行動パターンが前の連載と同じなので、そろそろ飽きてきた。
評価:★★☆☆☆
・車谷晴子『ぜんぶ ちょーだい』連載第5回
あらすじ:学園祭。彼氏役(蓮)が主人公(姫恋)に迫る。
これぞ少コミ、という展開。
評価:★★★☆☆
・悠妃りゅう『花嫁さまは16歳 2nd Season』連載第6回
あらすじ:主人公(珠姫)のピンチに彼氏役(辰牙)が駆けつけてくる。
作者は山で遭難する話が好きらしい。
評価:★★☆☆☆
・千葉コズエ『左手のラブレター』読み切り
あらすじ:地味な主人公が彼氏役と結ばれる。
完璧に自然に押し切った。すべてが自然なので、あらすじの書きようがない。感服だ。
評価:★★★★★
・華夜『キケンな教育実習』読み切り
あらすじ:主人公が教育実習生の彼氏役と結ばれる。
アイディアが圧倒的に足りない。
評価:★★☆☆☆
第55回につづく
私の新作『どろぼうの名人』が10月18日、小学館ガガガ文庫から発売されます。現在Amazonから予約可能です。
というわけで告知ページを作ってみました。
PCの世界ではいま、Netbookが一人勝ちの状態らしい。歴史の鉄の法則は誰にも止められない(参照:2003年7月31日)。
歴史の鉄の法則はかくのごとく働いている:
Microsoftの価格目標はこのタッチスクリーン式の小型タブレットPCを500ドル以下で提供するというものだったが、実際には、大半のOEMはそれよりも少なくとも300ドルは高い価格でOrigami端末を販売、その多くは1000ドル以上だった。
MSはタブレットPCとまったく同じ過ちを繰り返している。私にわかる理屈が、MSの首脳陣にわからないはずがない。よほど権力のある馬鹿がプロジェクトをやっているのだろう。
MSには現在、「反Vista」という形で、辺境化への圧力がかかっている。Netbook用に提供されているという噂の低価格XPは、WindowsというOSが現実に辺境へと押し出されつつあることを示す。